14 孤児院
ローとの顔合わせが終わった俺は、金を受け取るために受付に来ていた。対応してくれるのはさっきと同じお姉さんのようだった。
「まずは、レッドグリズリーの報酬からですね。片目と心臓以外のすべての部位がきれいに残っていて、小さいながらも魔石があったので、少し割り増しして金貨30枚、あとギルドマスターから特別報酬で銀貨5枚。合計で金貨30枚と銀貨5枚です。ご確認ください。」
受付のお姉さんはそういって、金貨と銀貨の入った袋を渡してくれた。あの熊ってそんなにかっこいい名前だったのか。頭の中でバカ熊って呼んでたわ。
ジュディ達と合流してギルドを出た頃にはもう日が暮れかけていた。
「あ、そういえば師匠どこに宿とったんだ?報酬入ったんなら飯おごってくれよ。」
ジュディがそんなことを言い出した。まったくしょうがねぇな~。と思ってふと気づいた。あれ、俺宿とってたっけ?
『とってないね。それはもう見事に忘れてたね。』
シェリアがニヤニヤしたような声でいってくる。
「師匠、もしかして…」
ジュディ達が呆れたような目で見てくる。
ああ、今日の夕日もきれいだな~。
◆◇◆◇◆◇◆◇
結局俺はジュディ達の孤児院にお邪魔することになった。孤児院は古い協会のような見た目で、はっきりいってボロかった。だが、せっかく泊めてくれるのだから文句は言えない。
「ただいまー。シスターいる?」
「あら、みんなお帰りなさい。そちらの方は…」
孤児院に入ると30代後半くらいのメガネをかけた女性が出迎えてくれた。この人がシスターだろう。
「この人はヘルト。俺たちの師匠なんだ。なんか宿をとるのを忘れてたみたいで、泊めてあげてもいい?ほら、夕御飯とかも買ってきたから。」
「あら、ありがとう。私はサーナトリアといいます。ヘルトさんもゆっくりしていってくださいね。」
そういってシスターさんはにこやかに台所に歩いていった。
「あ、みんなぁー、お兄ちゃんたちがかえってきてるよー」
ふと気づくと、遠くから子供達が走ってきていた。
「お兄ちゃんたちおかえりなさい。この人だれ?」
「えっとね。この人はヘルト兄ちゃんといって、俺たちの師匠なんだ。こう見えてすげぇ強いんだぜ。」
「こう見えては余計だろ。」
確かに俺はパッと見では強いかわからないが、ちゃんと強いんだからな。
『強そうに見えないのはその格好のせいじゃないかな?』
シェリアが呆れたようにいってくる。そういえば、俺はまだジャージのままだったな。明日は、装備でも買うとしよう。
さて、今日の晩飯は俺が作ることになった。泊めて貰う代わりに料理を振る舞うのだ。そのために急いで食材を買ってきたのだが、この世界の野菜は、地球の素材と同じ味と名前なのだが(名前はそう翻訳されてるだけかも知れないが…)、色が違うのだ。例えば、このデザートにしようと買ったリンゴのように赤い果実は本当は梨で、大根は黒かったり、トマトは白かったり、いろいろと戸惑ってしまった。まぁ、シスターさんに手伝ってもらって、料理が終わる頃にはもうなれていたが。
そんなこんなで完成したのは、塩と野菜でだしをとった野菜スープと、オーク肉という肉をトマトスープ(白い)で煮込んだ、煮込みステーキだ。
「「「ゴクリ」」」
子供たちが唾を飲んでいる。そんな顔しなくても全員ぶんあるから。ちなみに、子供たちは全部で5人いて、12才が2人、10才か1人、7才と5才が1人づつといった感じだった。そこに、ジュディ達3人とシスター、俺を加えて10人。
よし、足りるな。長い机に並べて、みんなでいただく。
「「「いただきます!!」」」
いただきますした瞬間、みんなががっつき始めた。
「うめーー!」
「すごい美味しいです!」
「ガツガツ!!」
ジュディ達や子供達にも好評みたいだ。さて、シスターさんはどうかな?
「美味しいですね。あとで、レシピを教えてもらってもいいですか?」
よし。大人のシスターさんもこの味を気に入ったみたいだ。実はこの料理、地球で家族によく振る舞っていた料理なのだ。母さんが忙しいときにはよく振る舞ったものだ。…やはり、思い出すと悲しいもんだな。あいつらは今頃なにしてるんだろうな…。
俺はジュディ達、男の子部屋で一緒に寝ることになった。そこそこの部屋に毛布を強いて、みんなで固まって寝ている。俺は子供たちが寝静まったあと、寝転びながら考える。
あの時の熊の魔物、普段は森の奥から出てこないはずなのにあんなに浅いところに出てきていた。間違いなく異常事態だろう。いったい、あの森でなにが起きているのだろうか。気になる。
『確かにあの森のことは気になるね。でも、明日からいろいろと頑張るんだろ?今日のところはもう休みなよ。』
確かに、明日からジュディにいろいろと教えたり、武器や防具も買わないといけない。それもそうだなと思ったので俺はシェリアのいう通り瞼を閉じて眠りについた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「計画は順調か?」
「ああ、冒険者組合もおそらく勘づいてはいるが確信に至っていないはずだ。」
「ならいい。ほら、お前も仕事だぞ。」
「はーい。ねぇねぇ、今度はたくさん殺してもいいの?」
「あぁ、冒険者たちを血祭りにしろ。」
「やったぁ♡」




