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9 まさかのピンチ

  大樹を後にした俺たちは、まず南に向かって進むことにした。なぜ南なのかというと、シェリアいわく、南には食料が豊富な土地があり、食料には困りにくいそうだ。数百年前の知識なので、信用はできないが。


  半日ほど進んだだろうか。ついに森を抜けた。

 そこは一面緑色の草原だった。草原の向こうには町のようなものも見える。


「ほらね。私のいった通りだったろう?」


  シェリアがどや顔でこっちを見てくる。うざい。役に立たないことの方が多いくせにと思う。


「とりあえず。街道にそって進もう。その方が安全に町までたどり着けるだろう。」

「オーケー」


  俺たちは街道にそって歩き出す。そこで俺は気になっていたことを聞く。


「そういえば、お前ら人が来たらどうするんだ。フーリンはともかく、お前は見られたらまずいんじゃないか。」


  シェリアがこの世界でどれほどの存在なのかはわからないが、ヒト型の精霊がそこら辺に普通にいるものではないだろう。見つかったら面倒なことになるのではないか?と思っていったのだが…


「ああ、そのことか。それなら心配は知らない。こうすればいいからね。」


  そういうとシェリアは目を閉じて集中しだす。すると、シェリアの体が光りだし、数秒もするとフーリンのような淡い光になって、俺の体の中に入ってしまった。


『この状態なら問題ないだろう?』

「その状態でもしゃべれるのかよ…」


  この状態だと人と会った時、独り言をしゃべる変人になってしまう。それはいやだな~。


『ふふふ、そんな風に見られる君を見るのも面白いかも知れないけど、その心配はないよ。私は浅いところにある思考はある程度読み取れるから、意志疎通は可能だ。』

(お、マジ?これ聞こえてる?)

『ああ、聞こえているよ。』


  おお、これならシェリアと話していても、変人とよばれなくてすむ。よかった。

  そんなことを話しているうちに、町の門が近付いてくる。見た感じそれほど大きいわけではないが、なんともいえない圧力がある。きっと何年もこのまちを危険から守ってきたのだろう。門の前には数人の旅人が手荷物検査を受けていた。


「よし、次は身分証を見せろ。」


 

 ……え?ミブンショウ?なにそれ美味しいの?いやそんなボケてる場合じゃない。前の人も普通に出してる。これ出さなかったら、「不審者か!捕まえろ!」ってなる可能性がある。

 どうしよう。こういうときは…


(オッケイシェリア!身分証どうしよう!)

『魔物に襲われて落とした、と言えばいいんじゃないかい?』


 それだ!!


「よし。次の奴、来い!」


  俺の番が来る。平常心だ。平常心。まずは手荷物検査なので俺は持ち物…手作りロープと手作り石器、そして干した肉を出す。


「いやー。ここに来る途中に魔物に襲われてしまって、荷物を落としてしまったんですよ。当然そこには身分証も入ってまして…。どうにかなりませんかね?」


  俺は祈るような気持ちで聞く。声色も、前にテレビでみた営業マンを意識する。


「そうか。それは災難だったな。組合に行けば再発行して貰えるだろう。門を出てすぐの通りをまっすぐ行くと組合が固まってるから。後で行くといい。」


  といって、道まで教えてくれた。門番さんがいい人でたすかった。よし。これで町に入れ…。


「よし。あとは通行料の銀貨1枚を納めて貰おうか。」


 思考が停止する。ツウコウリョウ?なにそれ美味しいの?


「その様子じゃ金も落としたみたいだな。」


  門番さんが俺の顔を見て察したような顔をする。すんません。


「まあ、通行料が払えないと町に入れる訳には…?これは…」


  俺がどうしようかシェリアと相談していると、門番さんが俺の作ったロープを手にとって強度を試している。


「これはどこで手に入れたんだ?」

「自分で作りました。あそこの森の蔦でチョチョいと」


 俺はいま来た森を指差す。


「なに!これ程のものを…」


 門番さんが考え込む。おっと、これはもしかしていけるか?


「ちなみに、森のどこら辺か聞いてもいいか?」

「え?あ、はい」


 場所を聞かれたので答えた。ついでにロープの簡単な作り方も。


「よし。じゃあ、このロープとその情報を銀貨1枚で買い取ろう。それで通行料はなしでいい。」

「まじすか!?」

「ああ、最近質の良いロープが品薄でな。これなら代用品として十分だ。よし、通っていいぞ。」


  なんという偶然!日頃の行いが良かったからかな。

 俺は門番さんから仮滞在のカードを貰い1週間後に更新しに来いという話を聞いてから、何度も頭を下げて門を後にする。

 さあ、次は組合とやらだ。

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