筆頭審査官聖勇者《ブレイド》
俺はこの度10日の長期出張から帰ってきました。帰って惰眠を貪っていると
ピピピピーーーーーー
というアラーム音で目を覚まし、一つ大あくびをしてふとスマホを見ると通知音が鳴っていた。
着信は俺の同期の清水さんだった、
「はい、おはようございます清水さん。どうかしましたか?」
「はいはいおはよう、って、今座何時だと思っているの?勇くん」
「何時って13時ですが?夜勤明けで眠いんですが、あれならご飯を食べて二度寝したいんですが。仕事の話ですか?」
「それはお疲れ様。今回は仕事の話は話なんだけど、召喚魔法の魔素を感知したの」
と話し出すと寝起きの脳が覚めていく。
「どこですか?いつですか?規模は?状況を詳しく!早く」
「お、おう、急に元気になったね。まあまあ、どうどう、落ち着いて、これから説明するから。えっとね、まずいつかは三日後の15時ごろ○○高校の近くの住宅街ね、魔素の感じから規模は多くて6人ほど、それと、M4K1ね、準備しておいて」
「えっと、その付近には月姫さんがいるのでは?俺の家からだと少し遠いんですが・・・
それに、俺昨日M5の世界から帰ってたばっかりなんで、少し休みたいのですが。装備の整備をしたいので、休みを増やしてほしいんですが……具体的には1,2週間くらいは」
「月姫ちゃんは修学旅行だから駄目よ、それにあなた優秀なんだから、大丈夫よ。この仕事が終わったらご褒美に休みを三週間と有効期限向こう十年いつでも何回でも使える異世界旅行券をあげれるように言っておくから。」
「マジですか!やったー。じゃあ頑張りますが一度本社のほうに行って道具を交換しますね」
「わかったわ、必要なものを言ってくれるかしら、用意しておくから」
「えっと、行く時間は明日のお昼ごろ、必要なものは魔力電池単1が7本魔力ペンが10本、あとは執行機、あと、通信機が少し調子が悪そうなので、そのくらいですかね。あ、あれも忘れてた、保存食ですかね」
「はいはい。今回は急だし前回の世界の正式な報告書かはこちらでやっておくから、本社に来た時にでも走り書きでいいから持ってきてくれるかな」
「わかりました。じゃあ、俺は準備がしたいので、これで」
「はいはいわかったわ。ごめんね忙しくて」
やっと電話が終わった。と俺《聖勇者》は思った。
はじめまして、自己紹介を。俺の名前は聖勇者、純日本人です。年は25歳で、表向きは在宅で翻訳をしています。ですが、本業は株式会社エデンからの依頼で異世界召還を正式に審査し、報告する、審査官兼執行者をしています。十年前に巻き込まれ召喚されてしまい、勇者とは別の道を歩み自力で生還し、このエデンにスカウトされました。翻訳の仕事は召喚された世界で自力で習得した、全言語理解と全言語発音が戻ってきてからも使えるので役立っています。自炊は、一人暮らしだったため、普通にできます。まあ、最近小説とかにある一から調味料をーとかは無理ですが。とりあえず俺の紹介はこの辺で、またおいおい。
おっと一つ忘れていました。さっき電話でM5とかM4K1とか言ってましたが、これは異世界指数といいまして、その世界にどの要素があるかを示しています。例えばM5だと、魔法がめちゃくちゃ発展していて、科学や、物理法則というものが通用しない世界ですね。乾いた木をすり合わせても火はつきませんし、真水に電気を流しても普通に通るそんな世界です。まあ少ないほうですが。で、Kとは科学の割合のことです。指数による世界の変化は以下の通りです。
〈0〉その世界にそれぞれを扱うための:法則:が存在しない
〈1〉法則は存在するが、知られていない
〈2〉それぞれの要素が研究されていた時代があり、骨とう品として残っている
〈3〉それぞれの要素が生活に使われている
〈4〉その世界で指数1のほうの要素が認知されていない。
〈5〉完全に片方の要素しかない
一応ここ地球は、K5となってはいるのですが、あまりにも召喚者や、帰還者が多すぎるため、限定的ではありますが、魔法や、スキルが使えます。
それと株式会社エデンのことでしたね。あの会社は、表向きは全感覚共有型VRゲーム「ツーライフオンライン」を運営している会社です。ここには、世界を管理するための研修を行う神見習いや、神様の重役がいます。この会社は、違法に異世界に召喚された人たちの救助と、その異世界の召喚理由が正当なものか、召喚者の扱いを調査する。というのが一応主な仕事内容です。
一応ツーライフオンラインのことも説明しておきましょうか。このゲームは先程も説明した通り視覚や聴覚だけでなく、触覚や、味覚、嗅覚などの感覚器官をリアルに感じることができるVRゲームです。コンセプトは、「あなたは、異世界に迷い込んだ迷い人です。この世界を好きに過ごしましょう、王になるのも、研究者になるのも、商会を開き、店をするのも何をするのも自由です。ただし、人殺しは禁止です。NPCは、その世界で生きています。《・・・》」というものです。これは、異世界に転移させる人のシュミレーションという裏事情があります。
先ほどの電話相手の清水さんは本社勤めの帰還者です。彼女は魔力感知に長けていて召喚魔法の魔力や、迷い込んだ魔物の探知を担当している部署の一人です。彼女と俺は同期で、自然と一緒に行動しています。
と説明はこれくらいにして、とりあえずおなかがすきましたね。何か食べましょうか。えっと何かあったかな、ってあれ?卵が腐ってるパンもよく見たらカビが生えている。まずいな、買いに行きますか。
さすがに部屋着ではまずいので、簡単にTシャツにジーパンで、近所のスーパーに買い物に行きます。その道中「まぁーあの人引きこもりじゃなかったの?めったに外出しているところを見たことがないけれど」みたいなセリフが聞こえてきます。確かに、俺は高校は、いじめにあって引きこもりでそのまま自主退学という扱い《・・》にはなっているが、高卒認定は受けているし、今では立派に働いています。後ろめたさを感じることなくスーパーで卵のSサイズとパンなどを買い、ついでに少しお高い牛肉を買いました。長い間異世界にいたから日本の牛肉が食べたくなったのだ。今日はすき焼きにでもしようかな。
買い物を終え、家に帰る途中で、きれいなブロンドのスペイン人が地図を片手に道に迷っていました。
聞いてみると日本語があまりわからないようで苦労しているようだったので、スペイン語で
「どうしましたか?」
と聞くと、地図を見せてきて、スペイン語で
「コのバショにイキタインデスガ」
と言っていたので案内しました。辺りを見回すと先ほどの井戸端会議をしていたおばちゃんが、呆けた顔をしていました。
少しどやぁと思いながら帰り、カビの生えたパンや卵の処理を終わらせ、軽くご飯を食べ終え、掃除洗濯を終えて、デスクのパソコンを開くと、翻訳の依頼が10件もありました。内容は簡単な絵本や手紙などいろいろです。中には英語と日本語のルビを入れてほしいなど少しめんどくさいものなどありました。うち3件の簡単な依頼を消化していると。あっという間に18時を過ぎていました。そろそろお腹が空いてきたため一人すき焼きの準備をし、食べ終えて、残りの仕事を確認しながら明日の準備を済ませます。その後は風呂に入って寝ました。とりあえず明日は本社に行かないと。
報告書は、出張中に書き終わっていましたので、ざっくり纏めて終わらしました。