あの夜に逝きたいふたり
明るいことは、いいことだ。
でも、明るいことに苦痛を感じることもある。
人は飽きる生き物である。
同じものが続くと、人は崩壊に向かう。
昼間が延々と続く、この状況になって五日目。
脳から足先に至るまで、ガビガビに錆びていた。
ずっと昼間が続く世界から、早く抜け出したい。
原因はよく分からない。
でも、ここから抜け出す方法は、ひとつくらいあるはずだ。
「ねえ、見て見て!」
「どうした?」
「ずっと夜の世界もあるんだって」
テレビでは、どこかに存在しているずっと暗闇が続く世界が、紹介されていた。
「行きたいね」
「でも、ずっと夜の方が大変かも知れないよ」
「そうかな」
「だって、今は陽の光が浴びられているけど、夜は黒一色だよ」
「確かに」
「植物も陽が当たらないと、枯れていくでしょ? だから、ずっと夜の世界に行くということは、さらに弱りに行くってことだよ」
「そ、そうだね」
今の苦しみが一生続くよりも、夜に行って少しの気持ちの余裕を持たせてから、ドン底に落ちたい。
その方がいいと考えた。
方法は分からないけれど、これからふたりで、あの夜に逝く。