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ちんばの総長  作者: クスクリ
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第40話 ちんばのチムール

大物気取って初めは寝た振りのつもりだった康太だがいつの間にか本当に眠っていた。教室でもそうだが康太の特技はいつでも何処でもどんな体勢でも眠れることだ。眠りにさえ落ちれば嫌なことは見えないし聞こえない。先程まで公園内で起こっていた事件の最中も夢の世界。何ヵ所か蚊に刺されて無意識に掻き毟る。


「康太」

「おい康太」

「康ちゃん!」

 う〜んと眼を覚ました康太に、「本当に寝とったようやで」と呆れる坪口。

 浩紀も、「この肝っ玉の太さは俺らには真似出来んでよ」と笑う。

「あれっ浩、顔どげんしたん?」

「腫れて血ぃ滲んどんやん」

 美代子がムッとして、「康ちゃん、今ここで起きてた大事件、もしかして何も知らないの?」

 康太はポカンとして、「何かあったんか?」

「もう良いよ」と美代子。

 坪口が、「康太待たせたな」

「出番やで」と浩紀。


 康太はわざとらしい大きな欠伸で、「いやぁあんまりお呼びが掛からんもんでよ、別に俺が顔出さんでも坪口と浩で何とか回るんやないかち思いよったわ。出来るもんなら今まで通り影の存在でもええんやねぇかなっち」

 坪口が慌てて、「康太馬鹿言うなっちゃ。康太っち総長の存在が無かったらTBRは空中分解ちゃ」とつい熱くなる。

 浩紀も、「真知姉のことが心配やったら絶体バレんようにするっちゃ」

「もし総長のこつ探ろうちする奴が居ったら俺が絶体そん口塞いだる」と意気込む。

「浩紀、坪口冗談ちゃ。もう心は決まっとるわ。こいで今更止めるとか言うたら言い出しっぺの三浦に絶交されるけんな」

「康ちゃんありがと」とウフッと微笑む美代子。

「私夢だったんだ」

「赤いタンクのDT400の後ろに乗って子分たちに号令するんだよ」

「総長の康ちゃんだぞぉ。皆の者頭が高いってね」

 康太はわざとらしく耳の穴かっぽじって、「そん話は耳にタコが出来るくらい聞いとるぜよ」


 坪口が冗談っぽく口を尖らせて、「その子分たちの中に俺も入るんかよ」

「当然じゃん、文句あんの?」

「無ぇよ」

「私の好意で坪口は親衛隊長になれたんだからね」

「けっ!」

 坪口の不貞腐れた顔を見て3人、笑い転げる。


 康太は急に真顔になって、「坪口、浩、三浦」

「何か康太、マジになってよぉ」

「俺、目一杯足引き摺るぞ」

「どしたん康ちゃん、普通に歩いたら足悪いの判らないのに」

 浩も坪口も、「三浦ん言う通りじゃ。何でわざわざビッコ引かなならんのや」

「あぁ、総長引き受けるに当たってずっと考えよったんよね。義足っち判らんごと行動しよっても俺らは族や。いつかは察に追われて単車乗り捨てて走って逃げないかんこともあるかもしれん。そんときゃ絶体バレるんよね。なら、初めから足引き摺ってよぉ、強さとのギャップば見せ付けた方が面白ぇやん」

「思い出したよ。いつか康ちゃんが話してたよね。確かちんばのチ…チ…」

「チムール」

 坪口と浩紀が、「チムール?」

 三浦が偉そうに蘊蓄を披露する。

「あのねぇ…チムールって昔の中央アジアの王様なの。戦いで足を負傷してビッコひくようになったけど生涯1度も戦いに負けたことが無いんだよ」

 美代子はペロッと舌を出して、「だったよね」

「俺もチムールにあやかろうち思うてよ」

「おぅ良いやん。ビッコ引いとって生涯負けなしてろよ」と坪口。

 浩紀も、「格好良いぜ康太!」

「康太は俺らの頭脳やけ。康太の思うようにやってくれや。俺らは総長ば力一杯支えるだけや」

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