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ちんばの総長  作者: クスクリ
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第19話 鳥巣工業

 生徒会は一年坊にして鳥巣工業を締めてしまった坪口の傀儡機関と化した。調子に乗る坪口は校庭左隅の部室群の二室を奪い取って、壁を打ち抜きグループの根城にしてしまったが、学校側は不本意ではあるものの黙認だ。坪口兄貴という後ろ盾を失った二年・三年の不良どもは早々と坪口グループの足下に屈してしまった。肩で風切って校内を練り歩いていたツッパリルックもすっかり鳴りを潜め、学校規定の制服に戻した上級生の不良どもは授業も真面目に受けざるを得ない。

 扱い辛い年上は無用が康太の意向だ。ちょっとでも目立とうものなら追い込み掛けられて半殺しの憂き目に遭う。結果として学校側も坪口を放任しておいた方が平穏が保たれると判断するに至る。


 坪口たち四人は堂々と私服のまま部室前にバイクを横付けする。触らぬ神に祟りなし、一般生徒は眼を合わさぬようにそそくさと退散する。部室の中から聞こえてくるのは雀牌の擦れる音。

 坪口と浩紀が顔を現すなり、一同目を丸くして、「その顔どげんしたん?」と唖然とする。

 二人はニヤケながら、「ちと、誠心会と揉めてしまってよう」

 せ、誠心会!?

 まさか…


「どうでも良いけど汚い!臭い!」と入った途端、鼻を抓む淳子。

 床はシケモクでいっぱいになった灰皿代わり、辺りには雑多な物が散らばり、どこからか拾ってきた応接セットのテーブルの上は、食い散らかしたスナック菓子のカスに空き袋・空き箱・空き缶の山、異臭を放つ嵩張った衣類がソファーの座蒲団代わり。

 真理子も手でタバコの煙を払う仕草で、「ちょっとは換気したら。とても女子が入れるもんじゃないよ」

「すまん、男所帯なもんで勘弁してくれや」と殊勝な坪口。

「坪、俺を見習いな」と調子に乗る浩紀に、「こら浩、いつも片付けてんのはあたいらだかんね」と淳子。

「すまん、つい見栄張ってみとうなったもんで」と浩紀が頭を掻く。

 真理子と淳子はもろ不機嫌に、「今日は仕方ないけど、今度来たときも汚かったら帰っちゃうかんね」


 お前らのせいで俺の面目丸潰れや、と八つ当たり気味の坪口がテーブルの上の物を腕で床に打ちまけ、ソファーの衣類を足で蹴る。

「おら早う何とかせぇや」

 授業をサボって部室にシケ込んで麻雀に興じていた四人、坪も人んこと言えねぇやん、とブツブツ文句言いながらも、即行で片付け終える。

 ヤンキー私服姿の女子二人は生足を組み、煙草を取り出して中指と人差し指に挟んで火を点ける。

「でも二人とも凄い顔になったもんだよね。でもありがとう」と淳子。

 誠心会と揉めた理由が知りたくて仕方ない仲間四人は、幹部用応接セットに落ち着いた坪口・浩紀・淳子・真理子を取り囲んで、「坪、教えてくれよぅ。何があったん?」

「あぁ康太がよう、今度単車の免許取るけ祝っちゃろち四人で決めたんじゃ。カツアゲの金じゃかわいそうやけ、実の居るラッキーに荒稼ぎに行ってこの様や」

 秋吉が、「坪、実に何かさせたん?」

「あぁ、せっかく実が居るんじゃ。使わない手はねぇぜ」

「呼び鈴押して天穴に玉入れさせ捲って四人で5万以上稼いだんやが、世の中そう上手く行くもんやねぇな。景品交換所で御用や」と坪口は腫らした顔で他人事のようにケラケラ笑う。

「坪、よう笑って話せるな。俺らやったら誠心会組員前にしただけでビビって小便チビっちまうよ」と秋吉はブルブル震えてみせる。

「俺もチビっちまうよ」と別の一人。

「お前らと一緒にすなや。人間の出来が違うんじゃ」と浩紀。


「稼いだ金取り上げられんやったん?」と秋吉が訝る。

 坪口が、「ボケか秋吉、俺らがそげな下手打つかちゃ」とペッと唾を吐く。

「もう坪口汚い」と女子二人が眉を顰める。

 坪口は堂々と、「この金はフクロになった俺らの慰謝料じゃ」

 仲間四人、尊敬の眼差しで、「あの泣く子も黙る誠心会相手に坪と浩は本当に凄いよ」

 淳子と真理子にも、「あたいらも友達として坪と浩には鼻高々だよ」とニコッと微笑み掛けられて、満更でもない顔付きで、「そうか」と照れくさそうに頭を掻く。


2019年6月5日修正

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