番外編 クリスマス 後編
1
〜柏木のターン〜
「プレゼントねぇ...」
ラノベならまぁなんだ?マフラーとかか?こういうなんていうかリア充っぽいことの経験が俺は少なすぎるからな。まぁ色々見ながら調べるか。1時間半はあるんだ。
とことこ一人で歩いているとやっぱりカップルがよく目につく。なんで俺はこんなところを一人で歩いているんだろう。すごく寂しくなってくる。とりあえず誰かと一緒にいたくなった俺は店員にプレゼント選びを手伝ってもらうことにした。
「すいません」
「May I help you?」
「あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ」
ダメだ。間違えた。完全なる選択ミスだ。やっぱり他の人に頼るのはダメなんだな。
「冗談!冗談ですって!お客さんすげぇ弄りがいがありそうな顔してたからつい、ね?」
「なんだお前」
初対面の人にしていい口の聞き方でないのはわかっているが口に出てしまった。なんだこいつ。
「まぁまぁお客さん大方プレゼント選び慣れてないから選ぶの困ってるんでしょ?」
この世界の人間エスパーだらけだな。ん?これあれか?俺がすごい態度に出るとかか?
「ま、一緒に考えましょ?」
金髪に染めているであろう長髪の店員はそう言って俺を手伝ってくれるらしいがなんだろう。
「チャラい」
「やっぱそう見えます?」
いや、完全にパリピ。俺と正反対の人間だわこりゃ。まぁ逆に俺に考えられないものとか考えられるからいいかもしれない。
「じゃあ女性にあげるなら何がいいんですかね?俺経験なくて全然分からなくて」
「え!?お客さん彼女持ちすか!?うわぁ、負けたぁ...」
「か、彼女ではないです!」
「あーなるほどねー」
そう言い店員は興味深そうにこちらを見てくる。な、なんだよ。
「距離を詰めたい感じならこれですかねー。ペアのブレスレットとかですかね?」
おぉ。いかにもおシャンティな感じはある。ただ、ただだ。
「別に距離を詰めたいわけじゃないっすよ!」
「へーふーんほー」
あ、信じてないなこれ。ん?なんだあれ?
「これは何です?」
「お、お客さんこれがいいんですか?ある意味ではペアブレスレットより難易度高いっすよ?」
「うーん、一目惚れですかね?」
「まぁ、彼女さんすごい喜んでくれるとは思いますよ」
喜んでくれればいいな。結局こんなくさい感じのプレゼント選んじゃうあたり俺はオリジナリティ的なものがないんだろうけどあいつは何だかんだこういうの好きそうだからな。まぁただこれは言える。
「彼女ではない」
2
〜西野のターン〜
柏木くんがどんなものを買うか検討がつかないのだけれど大丈夫かしら。シュールストレミングとか買って来なければいいのだけれど。私はあれよ。やっぱりロマンチックなものを買って私と柏木くんとの天と地ほどのセンスの差を見せつけてあげないといけないわよね。
「お、おねーちゃん一人?俺たちと遊ばない?」
「黙りなさい粗大ゴミ。今私は考え事をしているのよ」
「あ、はい。すいませんした」
クリスマスにもこういう輩はいるものなのね。つくづく呆れるわ。とりあえず雑貨屋に向かいましょうか。
「お客さん彼氏さんへのプレゼント選びですか?」
「彼氏ではないのですけれど、男性へのプレゼント選びということに間違いはないです」
清楚な感じの女性店員が声をかけてきた。相談に乗ってもらうのはいいことではあると思うけれど人へのプレゼントって自分で決めた方がいい気がするのよね。まぁ柏木くんはきっと店員に聞いたりしているのだろうけれど。
ふと目にとまるのはブレスレット、リング、ウォッチ。全てペアのものだ。流石に買う気にはならない。けして、けっして彼氏ではないのだから。プレゼント選びで大切なのはやっぱり喜んでもらえるかだと思う。どれだけ洒落たものを買ったところで喜ばれなければ意味がないのだから。そういう意味では柏木くんにはこれがいいかも知れないわね。
「これ下さい」
「はい!かしこまりました!」
柏木くん、喜んでくれるといいのだけれど。
3
〜柏木のターン〜
「さぁ準備はいいかしら?」
お互いが案外早く選び終わったので連絡を取り合って1時間半が経過することなくクリスマスツリーの下で落ち合うこととなった。
「おう」
俺は背中の後ろに少し大きめのプレゼントを隠し、返事をした。
「じゃあ私から。私のプレゼントはこれよ」
そう言うと彼女は少し小振りの包みを俺に手渡した。
「開けてみていいか?」
「開けないとわからないでしょう?」
こいつのこういう時の少し笑ったような、からかっているような表情にはほんとにドキッとさせられる。
「これは......スマホケースか?」
中から出てきたのは黒に白でワンポイントの入ったスマホケース。
「あなたが今使っている白色のスマホケースだいぶ汚れてきているでしょう?それなら喜ばれるかな、と思って」
西野はこういうところをしっかりと見ているな、と思う。しっかり自分のことを見てくれている気がする。
「すごい嬉しいよ。大事に使わせてもらう」
「ええ。私からのプレゼントを雑に扱ったらバチが当たるわよ?」
「そういうことを自分で言うなよなー」
今の西野の顔が少し赤くなかったらいつも通り可愛くないやつだな、って思ってたのかもしれないな。
「じゃあ次は俺だな。俺のプレゼントはこれだ」
俺は背中の後ろに隠していたプレゼントを西野に差し出す。
「あら、随分と大きいのね。早速開けさせてもらうわ」
あ、これ割と緊張するな。さっきの西野もこんな気持ちだったのかな。いや、あいつに限って緊張とかはないか。
「......かわいい」
西野の手に抱かれているのは花束を持った白い熊のぬいぐるみ。俺がつい一目惚れして買ってしまったものだ。
「あなた、もしかして私の趣味知ってたりする?」
「ん?あぁそういえば携帯電話にも学校のカバンにも小さなかわいいぬいぐるみのキーホルダー付いてたよな。やっぱり好きなのか?」
「うぅ、やっぱりバレてたのね......。私には似合わないわよね、こういうの」
「いや、何言ってんだよ。可愛いだろ」
「......」
あ、顔真っ赤だ。俺何かおかしなこと言ったかな?怒らせちゃったかな?
「か、帰りましょう!」
「お、おう、そうだな」
やっぱり何か怒らせちゃったかね?
4
〜西野のターン〜
「さぁ準備はいいかしら?」
「おう」
先程からずっと柏木くんが後ろで手を組んでるのは少し気になるけれどまぁプレゼントの交換を始めましょうか。
「じゃあ私から。私のプレゼントはこれよ」
そう言って私は彼に小包を手渡す。
「開けてみていいか?」
どうしよう。すごく緊張する。大丈夫、私の選んだプレゼントだもの。悪いもののはずがないわ。
「開けないとわからないでしょう?」
緊張を誤魔化すように私は言う。
「これは......スマホケースか?」
「あなたが今使っている白色のスマホケースだいぶ汚れてきているでしょう?それなら喜ばれるかな、と思って」
「すごい嬉しいよ。大事に使わせてもらう」
そう言うと彼ははにかむ。彼の笑顔には何か安心感を感じる。安らぎを与えてくれるような、そんな安心感。だから彼の笑顔が私は好きだった。
「ええ。私からのプレゼントを雑に扱ったらバチが当たるわよ?」
「そういうことを自分で言うなよなー」
何はともあれ喜んでもらえたようで良かった。あとは彼からのプレゼントを受け取るだけね。
「じゃあ次は俺だな。俺のプレゼントはこれだ」
そう言うと彼は一度足元に置いたプレゼントをわざわざ背中の後ろに隠してから私に手渡した。
「あら、随分と大きいのね。早速開けさせてもらうわ」
大きな箱の中から出てきたのは花束を持った可愛らしいぬいぐるみだった。
「......かわいい」
思わず口に出てしまってハッとする。彼はニヤニヤとこちらを見てくる。
「あなた、もしかして私の趣味知ってたりする?」
「ん?あぁそういえば携帯電話にも学校のカバンにも小さなかわいいぬいぐるみのキーホルダー付いてたよな。やっぱり好きなのか?」
「うぅ、やっぱりバレてたのね......。私には似合わないわよね、こういうの」
自分でも自覚はある。クールぶったこの性格にはこんなものは似合わないのだろう。ただその思いを彼の言葉が打ち壊した。
「いや、何言ってんだよ。可愛いだろ」
「......」
自分でも顔が真っ赤になっているのがわかる。気づかれたくないからマフラーで口元を隠すと照れ隠しに私はもう帰ることにした。
「か、帰りましょう!」
「お、おう、そうだな」
今の私感じ悪かったかしら?
5
〜柏木のターン〜
ショッピングモールからの帰り道に俺たちはあまり話すこともなくすぐに西野の家に着いた。
「じゃあ私はここでいいわ」
「おう」
「じゃあまた明日」
西野を送り届けることはした。だが俺にはまだやるべきことがある。
「ちょっと待って」
「ん?なにかしら?」
「これ、やるよ」
俺は彼女に予め用意しておいたプレゼントを手渡す。
「お前いつも俺の球拾いしてくれてる時寒そうにしてたから。本当にいつもありがとうな」
「うん...ありがとう。大事に使うわ」
彼女は今まで見たことのないような優しい笑顔を見せて家に帰って行った。
6
〜西野のターン〜
「感謝したいのはこちらの方よ」
ベッドに寝転びながら呟く。自然と顔がにやけてしまっている自分を少し恥ずかしいとは思いつつも今日はいいか、と少し思う。
「いつもありがとう。私のヒーロー」
そう言いながら私はついさっき柏木くんにもらったピンクの手袋を机の上に置いた。
クリスマス番外編後編でした。いかがでしたでしょうか?今回はちょっと慣れない書き方をしてみたのですがやっぱり難しいですね。当然僕の今年のクリスマスは何もありませんでしたね、はい。