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Te Amo  作者: きりゆたんぽ
4/5

番外編 クリスマス 前編

1

冬休み。日曜日。クリスマスイブ。完全に休め、って言っているような日だ。実際俺はゲームのクリスマスイベントを周回する気満々だったわけだし。だがそう上手くいかないのがやはり人生ってやつであって。

「さみぃ...」

今日も俺は朝早くからコートに立っていた。うん、まぁポジティブに考えればクリスマスイブに美少女と二人きりということではある。今日は薄野来ないらしいし。こたつから出たくないから行かないと言った時は殴り飛ばしてやろうかとも思ったが家を知らないからそういうわけには行かない。殴り飛ばすのは次に奴が俺の前に姿を見せた時に持ち越すことにした。

「今日の練習メニューだけれど...」

そううだうだと俺が色々考えている間にも西野は喋り続ける。正直聞きたくもない。もういっそガン無視して帰ってやろうかな...。

「そして日が落ちてきたらボールが見えなくなるまでサーブね」

「おい待て今何て言った」

こいつ今日丸一日日が暮れるまでやるつもりかよ。

2

ボールを打って声を出す度に白い息が出る。中学の帰宅部だった頃の俺はコート、手袋、マフラーという完全防備で白い息を吐いては(こういうのもたまにはいいかな)とカッコつけたことを思っていたが今はそんなことは思わないし思っている余裕もない。よそ見をすればすぐに俺の顔面に西野のボールが吸い込まれて行くだろう。マネージャーが厳しすぎる、っていうのが俺の生活の数少ないお決まり展開じゃない部分かもしれない。

「なぁ西野よ」

「なに?柏木くん?」

「休憩はまだですか?」

「2時間前にとったばかりでしょう」

ほら。こいつもう時間の感覚狂ってやがる。あぁマジきつい。俺なんでこの部活続けてられてるんだろうなマジで。まぁ多分ここで逃げたら西野に負けた気がするからだろうな。西野が可愛いからとかいう理由でここまでの練習を積めるやつはそうそういないと思う。少なくとも俺は無理。

「集中力切れてきてるわね。そろそろ休憩入れる?」

「いや、もうちょっと」

「あなた休憩したいのかしたくないのかわからないわね」

やっぱり俺負けたくないんだろうな。負けず嫌いだから。

3

「はぁー!終わったー!やっとおうちに帰れるー!」

「はいはい、お疲れ様」

長い練習が終わり、あたりはもう真っ暗だ。ほんとに疲れた。今日はご褒美にターキーでも買って帰るか。やっぱ金銭的に無理だ。鶏肉だけ買って家で軽く調理しよう。

「ねぇ柏木くん。ちょっとだけお願いがあるのだけれど」

「ん?パシリ以外なら聞くぞ?」

「私を家まで送ってくれないかしら?」

「あぁそれくらいなら構わんが。あ、お前あれか?『ほら、私可愛いじゃない?クリスマスイブに一人でいたりしたらナンパされちゃうから。仕方ないからあなたを横に置いておいてあげるわ』とかか?なんか腹立ってきたぞ」

「勝手に想像しておいて勝手に腹立たないでくれるかしら。流石にそんな考えはしないわよ。ちょっと今日は寄りたいところがあるのよ」

「ふーん。まぁ送るくらいなら全然いいけどな。で、どこに行くんだ?」

「うーん、お楽しみ、かしら?」

西野は俺は試すように少し微笑む。それに少しドキッとしてしまう部分があるのがまた悔しい。

「そ、そうか。じゃあすぐ行くぞ。俺だって暇じゃないんだ」

「クリスマスイベントの周回をしないといけないものね」

「そうそう...なぜ知っている」

やはりこやつは侮れん。

4

「ついたわよ」

「ここは...ショッピングモールか?」

クリスマスにこんなところに連れてくるなんてなんの当てつけなんだこいつは。泣きたくなる。

「クリスマスにこんなところに連れてくるなんてなんの当てつけなんだ、って言いたそうな顔ね?」

「おい、地の文を言い当てる展開は確かによく見るがここまで長い文章正確に当てるやつはお前くらいだぞ」

正直もうこいつ勘が鋭いとか頭がいいとかの範疇軽く超えてないか?異能力じゃないか?この俺の物語異能力バトルものに変わる?まりだな、それもな。最近じゃ無能力な主人公も結構いるし、あ、でもでも......。

「考えてるところ悪いけどいいかしら?」

「はい何なりとお嬢様」

こいつこんな怖い顔も出来るのか。すげー怖い。怖い笑顔ってこれのこと言うんだな。美少女の笑顔とか怖いなんて感情絶対わかねぇだろとか正直今まで思ってたわ。

「まぁこんなカップルだらけだとあなたのテンションがだだ落ちなのはわかるわ。けどね?」

「けど、なんだよ?」

「側から見たらわたし達もそう見えるのよ?」

そう言って彼女はクスリと笑う。あーもうなんだこれ。マジでなんだこれ。これは、あれだ。語彙力が低下するやつだ。脳が溶ける。

「さ、行きましょ」

「へいへい」

テンプレ通りならここからこいつの荷物持ちなんだろうけどまぁこいつの荷物なら持ってやってもいいかもな、ってちょっと思った。

5

それから少し経って彼女が言った言葉は割と衝撃的だった。そもそもいきなり俺に「あなた今持ち合わせある?」って聞いてくるあたりがおかしかったんだ。

「今からゲームをしましょう」

彼女はそう言った。

「お互いにクリスマスプレゼントを買ってどちらの方がセンスのあるプレゼントが出来るか。制限時間はえーと1時間半ほどでいいかしら?上限は5000円まで。よろしくて?」

「よろしくて?ってなんだ。それは強制参加?」

「とーぜん」

ちょっと楽しそうだなこいつ。案外ふつうに女子高生したいんだろうなこいつも。正直クリスマスプレゼントは別に買ってあるんだけどな。まぁそれはまた別で渡せばいいか。

「おっけーわかった。じゃあ1時間半後にまたここで」

「えぇ。わたしへのプレゼントなのだからしっかり選んでちょうだい?」

「わかってまーす」

ほんとに今日は楽しそうだな、西野。

今回は本編はちょっとお休みでクリスマスの番外編となっています!正直僕自身に浮ついたクリスマスを過ごした経験が当然のごとく無いのでおかしかったかもしれません(笑)今回は前編となっていますので明日更新(予定)の後編も是非お読み下さい!

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