第7話 追い出される?
お待たせしてすみません。ある程度書いてましたが風邪ひいてました。
「ふぅ~そろそろ戻るか……コクヨウも待っていることだし……」
倒した三メートルほどある豚顔の魔物であるオークを次元収納に仕舞いながら一息つく。
二時間ほど森の中を彷徨いながら、出てきた魔物をひたすら倒す事を繰り返していた。
木々にマークを付けてきた道を戻りながら森の出口へと向かっていくと、半刻もしないうちに森の出口が見えてきた。
薄暗い森の中から、解放された俺は背筋を伸ばし、太陽の光を浴びるとコクヨウへと視線を送った。
コクヨウは俺の事を見つけると、少しうれしそうな顔をする。
しかしコクヨウの足元には――――かなりの数の魔物の死骸が散乱していた。
「……コクヨウ……こんなに魔物がきたのか……」
コクヨウは「どうだ?」と言わんばかりの自慢げな表情をして、水を入れていた空の桶を俺に向かって蹴り上げた。
俺は苦笑しながら、生活魔法を使い、桶に水を足すとコクヨウの近くに置く。
コクヨウは満足した表情をしながら水を飲み始めた。
「よしよし、それにしても入り口まで魔物が出てくるんだな」
水を飲むコクヨウの首を撫でながら辺りを見渡す。しかし魔物の気配などはすでになかった。
「こいつらの処理もしちまうか……」
ダンプカーに弾かれたように潰れた魔物たちから、証明部位を切り取っていく。ゴブリンが多く切り取った数は三十を超えていた。
処理を終えると、一か所にまとめて生活魔法で火をつけて燃やす。
燃えている魔物の死骸を眺めながら次元収納からパンを一つ取り出し噛り付く。
すでに十分な魔物を倒して帰るつもりだったので、ステータスを確認する。
『ステータス』
◇――――――――――――――――――――◇
【名前】トウヤ・キサラギ
【種族】人間族
【性別】男
【年齢】16歳
【職業】回復術師
【称号】召喚されし者
【レベル】35
【特殊スキル】神眼 全属性魔法使用可 全スキル取得可
【スキル】剣術
◇――――――――――――――――――――◇
「おぉ!!!」
思わず想像以上のレベルの上がり方に驚きの声を上げた。
レベルが30台ともなれば、冒険者ギルドではBランクと同等である。廃人プレイしていた時のように思わず笑みを浮かべた。
「これなら頑張ればすぐに100までいきそうだな……」
経験値倍増の指輪を眺めながら今後の生活について考えていく。
「とりあえず金は持っているし、コクヨウと一緒に泊まれる宿もあるし問題ないかな……。冒険者のランクを少し上げておくくらいか。あとは、周辺国の情報だな。地図を手に入れて……」
頭の中で今後やることを整理していく。
満足したコクヨウが考えている俺の頭を甘噛みするので、街へと戻ることにした。
コクヨウの背中は鞍もついてない。普通の馬とは思えないスピードに必死に捕まりながら、鞍をつくってもらおうと思いながら街へと駆けていく。
街の入り口でコクヨウから降りると、一緒に歩きながらギルドカードを掲示して中へと入った。
市民証やギルドカードを持っていれば街に入るのは基本無料だ。最初の時は何も持ってなかったなぁーって思いながらも冒険者ギルドへと向かう。
扉を開けてギルドに入ると、一瞬視線が集中するが、それもすぐになくなった。受付には数人の受付嬢がいたが、ミリアがいたのでその裂へと並んだ。
数分で順番が来て、ミリアの前に立つと顔を上げて俺に気づいて笑みを浮かべた。
「トーヤさん、お疲れ様です。依頼の受注ですか? それとも納品……?」
「納品を頼む。また……いっぱいあるんだが……」
俺は少し苦笑いをしながら言うと、察したように個室へと案内された。
ミリアと向かいあって座ると、ミリアが先に口を開いた。
「前回の事もありますし、目立ってしまいますからね。それで……今回はどれくらいの……?」
「ゴブリンの耳は……二〇〇位かな……あと、オークも一〇体ほど。それと狼の――」
「ちょっと待ってください!!」
説明している途中でミリアに手で制された。
「昨日の今日でどんだけ倒しているんですか!? 無茶にも程がありますよっ!? しかも……トーヤさん一人でですよね??」
興奮して口走るミリアに俺はただ頷くだけを繰り返していく。
「――ですから、常識の範囲内でお願いします。それにしても本当に回復術師なんですか!? 狂戦士かと思いましたよ。まったく……」
「ミリア……、狂戦士って職業ってあるのか??」
自分の本アカウントだったキャラクターを思い出しながらミリアに聞く。
「伝説には言い伝えられていますね。戦士を極めてさらにその先があると……レベル100が限界なのに、その先があるのですかね……?」
首を傾げるミリアに俺の口は思わず緩む。
(この指輪があれば出来るかも……。まずはレベル100でジョブチェンジだな)
「わかった。ありがとう、参考になったよ。それで魔物の素材はどこに置けば……?」
「あ、そうでしたね。解体場所へ案内しますね。それにしても、トーヤさん今日は手ぶらですよね? 外に置いてあるんですか?」
これから世話になるギルド嬢だし、こうして気を使ってくれるから俺は次元収納からゴブリンの耳が入った袋を取り出す。
「?!……トーヤさん、次元収納持ちでしたか。それなら納得です。でも……あんまり人前で見せないほうがいいですよ? やはり珍しいスキルだし、冒険者としては喉から手が出るほどに欲しいですから。パーティーに欲しいと思っている人は多くいます。知られたら……」
「それは困る! 少しの間は一人でいたいし。それに調べたいこともあるから毎日狩りに出かけるわけでもないしな」
さすがに俺の廃人プレイを人目につけるわけにもいかない。しかも回復術師としての役目もできるとは思えない。
そんなことを考えながら、ミリアに案内されるがままに解体場所へとついていく。
案内された場所は体育館ほどの大きさで、数人が解体作業をしているところだった。
ミリアが責任者と思える人に声をかける。
「ダロックさん、素材の持ち込みなんですが、どこに置けばいいですか?」
ダロックは三十代後半の人族で、少し太めでがっしりとしており、エプロンを身に着けている。
「おう、ミリアか。素材置くならそっちのテーブルでいいぞ? 持ち込みはそこの坊主か?」
置く場所を支持された俺は、言われた通りに次元収納から魔物の素材を次々と出していく。
オークが十体、狼も三十体を超えただろうか。その時点でストップがかかった。
「待ってくれ! そんなに一気に処理できん! また後日にしてくれ。次元収納持ちなら素材が痛むこともないだろう」
止められた時にはすでに小山ができており、他で解体作業をしていた職員たちも手を止めて見入っていた。
「とりあえずこれくらいで……また時期を見て持ってくるようにするよ。当分狩りはするつもりないし」
「毎回こんなに持って来れられたら、他の仕事ができん。それにしても小僧、見た目と違って高ランクだったのか……」
関心するダロックに横からミリアが「実はまだEランクなんです」と伝えると、その目は大きく見開かれた。
「いい新人が現れたな?」
にやりと笑うとダロックは俺の背中を勢いよく叩いた。
そして査定は明日になると伝えられた俺はミリアとともにまた応接室に戻った。
「トーヤさん、明日の午後にまた来てくださいね。その頃には査定も終わっていると思います。それと……多分ランクアップもすると思います。トーヤさんがEランクでいたらそれこそバランスがおかしくなりますから」
「うん、わかった……そこら辺は任せるよ。また明日顔を出すようにするね」
個室から出た俺は、コクヨウと共に宿へと向かう。途中で串焼きを購入してつまみながら宿まで十分程度の距離を歩いた。
「ただいまぁ」
「あ、トーヤさんお帰りなさい……」
しかしその言葉の割に表情は暗い。何かあったのかと尋ねたら予想外の答えが返ってきた。
「あのですね……実は……他のお客さんの馬がコクヨウに怯えてしまってクレームが来ているのです。それで……申し訳ないですが、宿泊は明日までにさせてもらえますか……」
狩りから疲れて帰ってきた俺に突きつけられたのは、明日から宿無しになることだった。
いつもありがとうございます。
やっと更新できました。転生貴族のほうも先日、無事にサイン本の完成していよいよ来週から発売になります。
かなりの改稿が入ってますのでよろしければ手にとっていただけると幸いです。