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第4話 報奨金


 事情聴取のような説明となったが、受付嬢のミリアが俺のことを説明してくれたお陰で早々に開放された。

 屋台の店主に串焼きを二本もらい、一本食べるとタレがしみ込んで肉の味がジュワーっと口の中に広がっていき、思わず笑顔になる。


「おじさん、これは美味いよ!」


「そうだろう! ここらでいつも屋台開いているからよろしくな! 次からは料金はもらうからな」


 夢中で串焼きを頬ばっている俺を横目に、屋台の店主は笑いながら答えた。

 そして持っている串焼きをいきなりコクヨウが噛り付いた。


「ちょっと! いきなり!」


 いくつか刺してある肉の半分はすでにコクヨウの口の中だった。

 仕方なく持っていた残りをコクヨウの口に近づけると、モグモグと満足そうに咀嚼している。


「馬って……草食じゃなかったっけ……」


 残りの一本をコクヨウと並んでのんびりと食べた。

 そしてギルド職員から、従魔の証がついていないから、このような事になったのだと説明をうけ、早々に従魔の証であるネックレスをコクヨウにかけることにした。


「コクヨウ、これが俺と契約の証みたいだから付けてくれるか?」


 俺の言葉がわかるように、コクヨウは首を下げてネックレスがかけやすいようにしてくれた。

 首元に持っていくと自動で長さが調整されて、首元に光るペンダントトップに自分の左手につけたバングルを近づけると、少し光り登録が完了した。


「よし、これで大丈夫だな。もう夕方だし、早く紹介してもらった宿に行ってみよう」


 俺はコクヨウの首を軽く撫でて、歩くとその後ろをパカパカとついてくる。

 ミリアから紹介された宿は、ギルドと門側のほうにあった。

 紹介された宿は『狐の尻尾亭』といい、狐の尻尾が描かれた看板が掲げられていた。

 扉を開けて中に入ると、食堂と受付があり年配の狐の獣人がいた。

(獣人までいるのか……。これは、この世界も捨てたもんじゃないかもな)


「いらっしゃい。食事かい? それとも泊まり?」


「泊まりで頼む。あと……従魔がいるんだが」


「従魔かい? 珍しいね。裏に獣舎があるから――あ、ラミィ、獣舎に案内してあげて」


 受付の女性の声で、ホールでウエイトレスをしているまだ十代の同じような獣人の女性が顔を上げた。


「はーい、お母さん。あ、お客さん、案内しますね」


 十代半ばのラミィと一緒に外に出ると、コクヨウに驚いていた。


「おぉ! 黒曜馬(バトルホース)なんて連れているなんて、高ランクの冒険者ですかぁ?」


「いや……さっき冒険者登録してきたところ……」


 俺は苦笑しながらも答える。その言葉にラミィは笑顔を向けながらも、コクヨウを撫でている。コクヨウは気分を害することなく、ラミィに気持ちよさそうに撫でられていた。


「こっちに寝る場所があるからね、あとで美味しいご飯もだしてあげるから」


 ラミィはコクヨウを案内すると、やはり言葉がわかっているのか、その後を付いていった。

 俺も一緒に裏にいると、4頭くらいが入れる獣舎があり、他には誰も入っている様子はなかった。


「今日は他の従魔はいないから安心していいよ? 最初、他の従魔がいると安心できない従魔もいるからね」


 笑顔で説明するラミィに俺は肯定するように頷いた。正直わかっていないが……。

 二人で宿へ戻り受付にラミィが母親に声を掛ける。


「じゃぁ、受付をしてね。従魔付きだと一泊銀貨1枚と銅貨50枚だよ」


「……とりあえず10日間頼む」


 俺が次元収納(ストレージ)から、わからないように取り出した銀貨15枚をカウンターに置くと、引換で鍵と記帳を差し出してきた。


「毎度、じゃぁ記帳してもらっていいかい? 部屋は2階の一番奥だよ。もうすぐ夕食の時間だ。荷物を置いたら降りてきな」


 記帳にトーヤと記入し、鍵を受け取ると軽く返事をしてから階段を上って鍵に描かれている部屋に向かった。

 部屋はそこまで広くはないが、ベッドには清潔なシーツが掛けられており、クローゼットが備え付けられていた。早々に部屋に戻ったが荷物は全て次元収納(ストレージ)に収めた俺は食堂へと降りていく。


 すでに数人が食堂で食事をしながら一杯やっていた。

 俺は席に座ると、ウエイトレスをやっているラミィがお盆をもってやってきた。


「トーヤさん、今日のメニューはオークのシチューだよ。朝と夜は基本的に食事はついているから。でもドリンクは別料金ね! お酒も頼む?」


 ラミィからメニュー表を受け取ったが、よくわからないメニューだったから一番上に書かれていたエールと合う摘みを頼んだ。


 すぐにエールと小皿が置かれ、俺はとりあえず一口エールを飲んだ。


「ぬるい……。この世界はこんなもんなのか……。それにしてもこれからどうするかな……」


 宛も知り合いもいないこの世界で、一人で生きていくのはやはり不安だった。

 明日からの生活は次元収納(ストレージ)に入っていた金がそのまま使えるから問題はない。冒険者ギルドで依頼と言っていたが……何か食い扶持を稼がないといつかは資産も尽きていく。

 一人でエールを少しずつ飲みながら考えていると、目の前に料理の入った皿とパンが置かれた。


「うちのシチューは最高に美味しいよ! なんせお父さんが作っているから!」


 笑顔のラミィが胸を張って答えるのに俺は頷いて、スプーンですくって口に運んだ。

 肉の旨味が凝縮されていて。臭みもなく本当に美味かった。


「うん、美味い! 美味しいよ」


「そうでしょ~。うちの自慢の料理なんだ。もう従魔にも食事は出しておいたからね」


 料理を褒められて笑顔のラミィはスキップしながら厨房へと向かっていく。俺はそのまま料理に噛り付き、いつの間にか皿は空になっていた。

 最後に残ったエールを飲み尽くし、飲み物代を払った俺は早々に部屋に戻った。

 部屋に戻った俺は、早々に靴を脱ぎベッドへとダイブし、これからの事を思い浮かべる。


「風呂は貴族くらいしか入れないっていうし……。少し金の相場も調べないとな。持ち金がどれくらいの価値があるのかわからんし……。あとはこの次元収納(ストレージ)に入っている荷物をどうするかだよな。最悪売れば少しは金になるだろう……。あんまり目立つのは嫌だが生活のためには仕方ないか……」


 次元収納(ストレージ)の中身を眺めながら、今までのゲームで集めた素材の事を考えていたら、いつの間にか意識を手放していた。



 翌朝、食事を済ませた俺は早々にギルドへと向かった。コクヨウには留守番をしてもらって一人で向かうことにした。店を見て回って相場を調べるのに普通の馬より何回りもでかい黒曜馬(バトルホース)を連れていたら目立って仕方ないからだ。

 冒険者ギルドに行って、早々に俺が受けられるE,Fランクの掲示板に貼られている依頼書を眺めていくと、いきなり後ろから声を掛けられた。

 振り向くとそこにいたのは、街まで一緒にきた、クラーダ達だった。


「おう! トーヤじゃねーか。無事に冒険者登録もできたみたいだな。もう早々に依頼か? あのゴブリンの耳はもう出したのか?」


 クラーダの言葉でまだ出していないことに気づき、俺は首を横に振る。


「なんだ? まだ出してないのか。ゴブリンは常時依頼になっているはずだから、そのままカウンターに持っていけばいいぞ。ほら、今空いているし、行ってこい」


 クラーダに連れられてカウンターに行くと、昨日相手してくれたミリアとはまた別の受付嬢が座っていた。


「こいつが倒したゴブリンを換金頼むぜ」


 クラーダは受付嬢にそういうと、さっさと掲示板に戻って行ってしまった。一人残された俺はゴブリンの耳が入った袋をカウンターに置いた。


「あと、ギルドカードもご提示お願いします」


 言われるがまま、ギルドカードを出すと、読み取り機に通して、その間に素材の数量を確認していく。


「トーヤ様ですね、たしかにゴブリンの耳30確認できました。依頼これでトーヤ様はEランクになります。常時依頼で出ているのは、ゴブリン5体で銅貨50枚ですから、全部で銀貨3枚になります」


 ……え? そんなんでいいの?

 疑問に思っている俺に、受付嬢は説明をしてくれた。


「トーヤ様はFランクでしたから、Eランクの依頼であるゴブリンの討伐は、ポイントが2倍になるんです。初めての討伐にしてはすごい成果ですね! でもお一人ですから無茶はしないでくださいね。あとこれからはDランクの依頼も受けることができます」


 俺に向けられる笑顔の受付嬢に申し訳なくなる。俺が倒したわけでもなく、コクヨウが全部弾き飛ばしただけなんだが……。

 銀貨3枚とカードを受け取った俺は、カードの文字を浮かべると、確かにEランクに変わっていた。しかし、コクヨウが全て魔物を蹴散らしたお陰でレベルはまだ1のままだった。


 

 そして、新しい依頼を見ようと掲示板に俺は向かった……。











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