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第27話 襲撃

 

 窓から入り込む朝日で眼を覚ます。

 この世界に来てからはそれが普通になってきた。

 朝日とともに起き、沈むと寝る。魔法具による明かりはコストがかさむのだ。

 自然とそういう習慣がついてくる。

 

「こんな時間に起きちゃうなんてな……」

 

 次元収納(ストレージ)から取り出した装備に身を包み部屋を出る。

 食堂に降りていくと、すでにルミーナが食事をしていた。

 

「おはようございます、ルミーナさん。早いですねぇ」

「おう、トーヤか。今日は食事をしたら、商会に向かわないといけないからな。私の装備は少し時間がかかる。だから早く食べて着替えるようにするんだ」


 確かにルミーナさんはこの街に来てからは普段着を着ていた。

 やはり普段からあの――ビキニアーマーを着ているということはなかった。

 少しだけ残念ではあるが、あとでまた目の保養をさせてもらおう。

 俺は隣の席に座り、朝食をとる。

 食べている最中で、ダイ達四人も起きてきた。

 各自に挨拶をし、食事を済ませた後、宿の前で一度集合し、フェンディーの街へと戻るために商会へと向かう。

 商会の前では馬車四台に荷物が次々と詰め込まれている最中であった。

 ルミーナが代表して商会に入っていき、残ったメンバーは荷物の積み込みを手伝う事にした。

 

「ありがとうよー。馬車四台分の荷物はそれなりにあるからなぁ。それにしても魔法職だろ? 随分力持ちだな?」


 商会の荷物の積み込みをしている中年の男性から声が掛かる。

 例え魔法職とはいえ、普通の冒険者とはレベルが違う。説明することはないが、笑顔で返事し、次々と荷物を運んでいく。

 人数が増えたことで、荷物の積み込みはすぐに終わった。

 そして、商隊の責任者が出てきた。

 

「帰りもよろしくお願いします。それでは出発しましょう」

 

 ルミーナと俺が先頭を進み、ダンブラーの街を後にする。

 帰り道も順調に進み、一泊目のキャンプ地へと到着した。

 テントを張り、夕食の準備を始めると、何故か俺への視線が集まってくる。

 そしてルミーナが俺の隣に座った。

 

「トーヤ、――勿論あるんだろう?」

 

 期待をする目だ。周りを見渡すと、ダイ達四人も期待を込めた視線を送ってくる。

 大きくため息をついたあと、スープの入った寸胴を一つだす。

 

「仕方ないですね……。器は自分のを用意してくださいよ」

「さすがトーヤ!! 分かっているねぇ〜」

 

 ルミーナに頭を掴むように寄せられて、胸に埋められる。

 ビキニアーマーの感触は……正直痛い! 痛いよ! 一枚挟んだ奥にはきっと柔らかいだろうが、ガードしている装備は硬い物だった。

 各自に配りながら護衛達で火を囲みながら食事をする。

 帰り道ではダイの態度も軟化していたのは助かった。

 そして、食事を済ませた後は、行きと同じように野営の監視の順番を決めていく。

 行きと同じように二番目で、ルミーナとの監視となる。

 順番となり、火を囲むようにルミーナと雑談をしていると、コクヨウが寄ってくる。

 ブルルルルゥ……

 一鳴きし……俺の頭を甘咬みする。

 

「ちょ、ちょっと待って。コクヨウ何だよぉ……」

「はっはっは。黒曜馬(バトルホース)にも愛されておるな」

 

 ルミーナが笑う中、俺が頭についた涎を袖で拭き取ると、コクヨウは首を森の方へと向けた。

 

「コクヨウ……何か来てるの……か?」

 

 俺の探査(サーチ)にはまだ反応はない。

 未だ探査範囲の200メートル以内には何も映っていない。

 

「しかし、何かに気づいたということだろう……」

 

 ルミーナは横に立て掛けてある剣を持ち立ち上がる。

 俺も立ち上がり、探査(サーチ)を森の方向に向ける。

 

「なっ!!」

 

 一方向に向けた事で、距離は少し伸びる。

 そして――数十にも渡る反応が見える。しかもこちらに一直線に向かっている。

 

「魔物の反応がある! 数は数十! こっちに向かってきてる!!」

「なんだとっ!? みんな起きろ!! 魔物の襲撃だっ!!」

 

 俺とルミーナの言葉に、ダイ達も飛び起き、各自装備を整えて出てきた。

 商人達も恐々としながら馬車から降りてきて、ルミーナの指示に従っている。

 慣れであろうか、その動きは緊張しながらも見事なものだった。

 一ヶ所に馬車を集め、その中に隠れていく。

 

「私が先頭に立つ。お前たちはパーティーだろう、商人達を守るように組め! トーヤ、お前は回復術師(プリースト)だろう。後方で支援だ!」

 

 ルミーナの言葉に首を横に振り、ルミーナの隣に立つ。

 そして次元収納(ストレージ)から――両手剣を取り出す。

 自分の身長ほどもある大きな剣に、ルミーナは目を大きく開いた。

 

「トーヤ! お前はそんなもん使うのか!?」

「えぇ、これが一番慣れているのでね」

「……分かった。回復できるのはお前だけだ。無理はするなよっ」

 

 ルミーナの言葉に頷き、魔物との距離を確認する。森との距離は後100メートルほど、そろそろ見えてくるはずだ。

 そして、先頭の魔物が現れた。

 

 豚の様な顔で太った身体をし、手には棍棒を持つ。体長は2メートル程であろうか、俺が悠々に見上げる大きさだ。

 雑食性で動物や魔物も襲って食す。勿論、人間も除外されない。

 しかも、オークは人間の女性は攫い、苗床にする習性もある。

 人間にとっては天敵であった。

 

「オークの群れだ!」

 

 ルミーナの言葉に俺は剣を構える。

 ダイ達も各自がフォーメーションを取り、襲撃に備える。

 そして、俺たちの事を見つけたオーク達は仲間を呼ぶような奇声をあげた。

 その声に反応してか、奥からはゾロゾロとオークの群れが出てくる。

 

「こんな数……ありえない……」

「この数相手にしたことないぞ……」


 余りの数に恐怖で震えるダイ達の目の前には、30体を越えるオーク達が獲物を見つけたかのようにニヤリと笑った。

 

 そして集団の中の一体のオークが声をあげると、こちらに一斉に駆け出した。

 

「気合い入れろ!! 絶対に死ぬんじゃないぞ!!」


 ルミーナの声が響き渡り、6人対30体の戦いが始まった。

 

いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 案の定、タカられてる主人公に(笑) [一言] オークといえば宿の食事で出てくる位の食材モンスターでしたね。
[気になる点] >「トーヤ、――勿論あるんだろう?」  期待をする目だ。周りを見渡すと、ダイ達四人も期待を込めた視線を送ってくる。  大きくため息をついたあと、スープの入った寸胴を一つだす。 食材費…
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