メルト
ピピピ……目覚まし時計が鳴っている、もう、起きないといけない。
「んあ〜」
私は、朝が来たことを知らせる、目覚まし時計を止めて、起きようと、寝返りをうつと、ふと、あの人の事を思い出した。
なんだか、とても、幸せな気持ちになって、私は微笑んだ。
今日は、日曜なので、学校は休み、でも、もうすぐ高校受験なので、テキストを買いに行こうと思い、ベッドから起き上がり、私は真っ先に、鏡の前に立って映る自分を見つめた。
昨日、美容室で切ってもらっていていた。
あの人が、学校で、あった時私を見て驚いて欲しくて。
朝食を食べてから、歯を磨き、顔を洗って着替えている時、テレビの向こうの、天気予報士のお姉さんが、
『今日の天気は晴れでしょう。雨が降ることは無いですね。』
そう、言っている事を耳の片隅で聞いていた。
今日は、ピンクのスカートに、花のモチーフの髪飾り!
「今日の私は可愛い!」
毎日言っている、私の魔法の呪文、今日も、元気が出る言葉を呟き、今起きてきたお母さんに、挨拶をして、家を出た。
私は、駅へ行こうと信号を待っていて、気がつくと、今朝、顔を思い浮かんだ人物が、隣に立っていて、驚いた私は、思わず見つめていると、彼も気付いたのか、こっちを振り向いた。
暫くして、
「おぉ!美紀!偶然だな!」
緊張のあまり、顔を反らしながら、私は、
「う、うん……」
(どうしよう!目も合わせられない!緊張するよー!)
私の頭の中が、グルグルと回っていたが、
(な、何か話さないと!)
と、思うも、考えがから回る私を見て、彼が、
「美紀って、今からどこ行く途中?」
そう、話しかけてきて、
「え、えっと……か、買い物!」
と、やっと答えを返せて少しホッとする私。
「そうなんだ!」
と、返事をして、さらに、
「あ、髪切ったんだ!似合ってんじゃん!」
と、私の頭をクシャクシャと、なでてくれた。
「う、うん……ありがと……」
とだけ答えて、私は赤面していた。
そんな顔を彼は、覗くと、私はさらに、赤面しながら反らした。
(わ、私の好きな気持ち、バレたかな?)
心の中ではドキドキと、心臓が暴れていた。
その後、信号が青になり、渡って暫く歩いているた。
すると突然、頭上から、雨粒が落ちてきて、その一滴の後、土砂降りの雨が降ってきて、二人は慌てて近くのコンビニの下に逃げ込んだ。
(雨、降らないって、言ってたのに……)
そう、考えているとふと、折り畳み傘の事を思い出し、取り出して、
(もう少し、一緒にいたかったなぁ……)
と思うと、ため息がこぼれた。
すると彼が、
「折り畳み傘、持ってたんだ!しょうがないから、一緒に入ってやるよ!貸して」
微笑みながらそう言って彼は、私の傘を受け取り、傘を開いて少し前へ出ると、私に中に入るように促した。
私は、彼の右側の裾を持ち、彼と肩を並べて歩いていた。
(どうしよう!緊張する!何を話そう……)
そう、考えるも、何も思い浮かばず、二人は黙ったまま、歩いていた。
暫く歩くと、駅が見えてきて、私はなぜか、寂しい気持ちがして、
(もう、着いちゃった……)
と、思ってしまって、泣きそうな顔を伏せて、彼に顔が見えないようにしていた。
(手、繋ぎたいな……)
そう思うも、言葉に出来なかった。
何気なく、彼の手を見つめていると、彼が突然、手を繋いでくれて、驚く私、自然と顔が赤くなってしまう、
(ど、どうしよう!)
また、頭の中がグルグルと回ってしまうが、私は彼の手を、握り返した。
その時私は、心の中で、
(私の思い、届け!)
と、叫んでいた。
もう、別れなければいけない、切なさが強まり、また、ため息をこぼす私、
(今すぐ、抱きしめてほしい!)
そう、心の中で言ったつもりが、声に出していたのか、彼が、
「えっ」
と、声に出して驚いていた。
私も、自分が言ったことに気づき、驚きと、恥ずかしさで、自分でもわかるくらい顔を赤くして、熱くなり、慌てて、
「な、なんてね!」
そう、舌を出して誤魔化した。
私はふと、彼の顔を覗くと、彼も顔が真っ赤になっていた。
気まずげに黙り込む二人、だがその時、彼が突然私を抱きしめてくれた。
(え、えぇぇぇぇぇぇ!)
驚き過ぎて、頭の中が真っ白になってしまった私だが、私も、抱きしめ返した。
すると、彼がまた突然、
「好きなんだ。」
と、呟いた。
私は一瞬、聞き逃しそうになったが、その言葉を心の中で繰り返し、じんわりと、驚きが広まり、そして、
「わ、私も、好きなの!ずっと、前から……!」
と、口ごもりながら、答えた。
すると突然、私の頬を涙がこぼれた。
嬉しさと、驚きの涙で、私の顔は濡れていた。
それから、私達は付き合い初めて、高校も、大学も一緒に行った。
大学を卒業して、さらに就職して、4年後、私達は結婚した。
初恋は叶わない、とよく聞くが、私の初恋は実った。
1番、大好きな彼と。