第一話 あかつきのひかりに B-1 (2)
B-1 (2)
《……》
無表情のまま、LEMUが沈黙する。
「おれに記憶違いと言いながら、おまえはその新メンバーを連想したわけだ」
《自分に想像力は存在しません》
「類推でも。推量でも。分析結果でも。何でもいいさ。結びつけた理由があるはずだ。誰だ。そいつ?」
《不明です》
「は?」
《名前。年齢。経歴。全ての情報がロックされています。アクセスできません》
「男か女かもわからねえのか」
《画像データがありますが――》
「なんだ。じゃあ見せてくれ」
《当該者(推定)と同行する室長の画像だけが残っています。当該者は映っていません》
「――」
「幽霊みたいね」
ミツルギが率直な感想を述べる。
だが、幽霊のはずがない。
デジタルに記録されないというだけだ。
「おれの記憶にしか存在しない、謎の『ロゴス』みてえだな」
LEMUに眼を向けて、に、と笑う。
LEMUの眼の奥で、レンズを絞る音が響いた。
《認めましょう。コウ。自分はあなたの話から、新メンバーを類推しました》
「おう。そいつ。今どこにいる?」
《不明です》
「位置情報もブロックかよ」
「徹底してるわね」
《ですが――》
ちり、とLEMUの中で針の先が触れ合うような音がした。
《画像が記録されないことを前提に検索。23 min前に休憩室のドアだけが開く映像が監視カメラに残っています》
「さっすが」
ひゅう、と口笛を鳴らし、足を振り上げてベッドから立ち上がる。
「あ。と。ミツルギ」
「なに?」
「わりぃ――じゃねえな。ついててくれて、さんきゅーなっ」
「――っ」
ミツルギが声にならない声をあげたが。
その時には部屋を飛び出していた。