第ニ話 神ひかりあれと B-1(4)
B-1(4)
名前を呼ばれたような気がして貌を上げた。
壁に貼られた写真は、ひそりと息をひそめ。
誰の声も聴こえてこない。部屋の外も静謐だった。
(気のせいか)
視線を巡らした先に、ハンガーに吊るした学生服。
その下に、梱包されたパネルを置いてある。
カメラを手にして立ち上がった。片手で収まるサイズ。
金属部分が指に触れ、ひやりとした冷たさを感じる。不思議と室温と同じにならない。
指先に触れる幾つもの傷。使い込まれた跡と――
「おやすみ」
小さく呟いて、キャリーバックの奥に入れた。
《ジン――サカシマ。行動の理由を求めます》
「おれへの命令は許可しない」
《これは要請です》
「言葉を変えても同じだ。監視体。おれへの干渉は認めないと言ったはずだ」
《ワタシではありません。室長の意思です》
「なおさらだ」
左手に漆黒の銃が現出した。
「失せろ」
蜂に似たドローンが空中に静止している。
頭部は各種センサーを備えた360度カメラ。
透明な頭部に、黒塗りの眼が映っている。
《……》
す、とドローンが退いた。
二枚の主翼と同数の補助翼。四枚の翅が翻り、空中に飛翔する。
音はしない。そのまま遠ざかっていく。
腕を下ろした。左の手首にブラックチタンの腕時計。鎖のように重い。
眼を細め、貌を上げた。
背後に5階建て鉄筋コンクリートの集合住宅が存在していた。
幾つもの部屋にライトが灯っている。
「コウ。おまえ。友達を殺せるか」