希美と茜の試験勉強
今日から試験一週間前。
一緒に帰ろうか、と茜ちゃんを探した。
いつもの教室。茜ちゃんがひとり、勉強していた。
「試験勉強?」
「ああ……希美も勉強するのか?」
「うん、さすがに今回はしないとヤバいし」
「あー、仮評定出るもんな……指定校狙いは大変だな」
「そうでもないよ」
少なくとも、一般入試の茜ちゃんよりは楽。
だって選ばれれば100%通るから……
その、「選ばれるまで」が大変なんだけどね。
評定平均が3.5以上、欠席日数30日以内。
……正直いって今のわたしじゃ厳しい。
通れば残りの期間好きにできるけどね。卒業できる範囲で。
「茜ちゃん、やっぱあの大学行くの?」
「ああ、あたしはそこで夢追っかけてみるよ」
茜ちゃんの夢……小説家。
厳しい業界だし、決して楽じゃない。
でも、茜ちゃんは諦めてない。
だからわたしも、頑張らなきゃ。
「あたしらも受験か……もうあれから一年半経つんだな……」
「そうだね……」
“災禍”事件。
この学校の生徒たちを巻き込み、死なせた事件。
あの事件から、もうそれだけ経っていたんだ……
あの時のことは、忘れられない……
「あー、すまん、悪かった。泣くなって」
「泣いてない……」
災厄体質なわたしでも、先にも後にもあんな事件はなかった。
「それでもさ、あんな事件の中であたしと希美だけでも生き残ったんだ。あたしはそれだけで満足だぜ」
「わたしは……」
生き残ったことは、幸せだったの?
茜ちゃんはあの事件の真実を知らない。知られるわけにいかない。
わたしは……茜ちゃんと同じ、“笑顔の嘘つき”だ。
ばたん、と茜ちゃんが机に突っ伏した。
「……試験勉強、全然進まねえ……」
「うん……つい喋っちゃう……」
「しゃーねえ、今日はもう帰るか。デートは試験明けまでお預けな」
「試験明けたら茜ちゃん写真部にこもるじゃん」
「あたしだって好き好んで暗室こもってんじゃねえんだよ」
「じゃあ何でよ」
「あのな、夏休みに合宿があるだろ?申し込みしなきゃいけねーんだよ」
「……」
そう言われると黙るしかない。
茜ちゃんが写真大好きなのも知ってるから。
「つか、つきあわして悪かったな。今日は一緒に帰るか?」
珍しい、茜ちゃんからのお誘いだ。
「うん!」
《二週間後》
「はあ、なんとかギリギリだよ……」
返ってきた試験。見たら真っ青になるような成績だった。
「お前授業中寝てるからだろ」
「んなこと言ってる茜ちゃんだって絵描いてるくせにー」
まあ、茜ちゃんはノー勉(本人談)で学年20位に入るくらい頭いいし。
「茜ちゃんはどうなの?」
「見るか?ほい」
茜ちゃんが出したリーディングのテスト用紙。
73点。って、ええ!?
「前、茜ちゃん英語苦手って言ってたよね!?」
「苦手だぜ?」
いやいやいや!苦手なんて言えないよ!
「なんで茜ちゃんそんなに頭いいのー!?」
「試験前に単語のプリント見るだけで違うってこった」
正論。正論なんだけど……
「希美、成績本当に大丈夫か?」
ぐたっと机に倒れこんだ。
「全然だいじょばないかもー……」
ああ、評定怖い……どうか受験できますように……
来ましたね受験生!ああ三年前の悪夢再び!
…実は今年、雪野も文群さんも共に受験です。
ちなみに雪野もノー勉派です。いや今回はちょろっと勉強したけど!
ともあれ、こんなあほな話におつきあいいただき、ありがとうございました。




