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ばあちゃん、まいご

作者: 田中せいや
掲載日:2014/06/21

「さとるー、おばあちゃんのこと、さがしてきてくれない?」

「またかよぉ」

 ランドセルを机に置いて、さあこれから友だちと外であそぶぞぉってときなのに。ママはいっつもぼくに、用事をいいつけるんだ。それも、きょうはよりによって、ばあちゃんさがしかよ。かんべんしてくれよ。

「おねえちゃんにたのんでよ。ぼく、いそがしいんだ」

「おねえちゃん、きょうは塾なのよ」

 へへ~んってんだ。おねえちゃんは、ぜ~んぜん上達しない、ピアノのおけいこですかあ~。それじゃあ、しょうがないですねえ~~だ。


 ばあちゃん、どこにいっちゃったのかなあ。こまっちゃうなあ。

 きのうは、大雨のなか、ハスの葉を傘代わりにして帰ってきたよな。そのまえは、工場の中をてくてくあるいているところを、守衛さんにみつけられて、知り合いの工場長さんの自動車に乗っけられて帰ってきたよな。そのまえは、お墓のおまんじゅうをたべているところを、おしょうさんにみつけられて、電話されて、パパがむかえにいったよな。それから、吉岡商店でおかねを払わずに酢イカをたべちゃったり、線路ぞいの枯れ草でたき火をして電車を止めちゃったり、ぜんぜん関係ない小学校の母親参観に出席したり……。まいるよなあ。

 パパにいわせれば、「ほんとー、せわがやける」ばあちゃんだよ。

 でも、ばあちゃんは、ボケるまえ、ぼくにいろいろなことをおしえてくれた。戦争中に防空壕に入ってお手玉したこと。うちのまえの道を、りくぐんしょうこうさんが馬に乗って行進したこと。たけやりで、B29をつっつこうとしたこと。パパを背負って、戦火のまちを逃げまわったこと。ほかにも、笑っちゃうこと、泣けちゃうこと、くびをかしげること……、いっぱい、いーっぱい。

 でも、ぼくがいちばん知りたかったことは、じいちゃんとの出会い──なれそめっていうのかな──だったんだけど、おしえてくれるまえに、ボケちゃったんだよな。


「ばあちゃ~ん、ばあちゃ~ん」

 このあき地かな。

「ばあちゃ~ん、ばあちゃ~ん」

 あっ、いた! あんなところに、しゃがんじゃって、なにやってんのかな。

「ばあちゃん、ばあちゃん」

「ああ、ゲンちゃん、みつかっちゃったね」

「ぼくだよ、さとるだよ」

「こんどは、わたしがオニだよ」

「ばあちゃん、ぼくだよ、ぼく。さーとーる。だれだい、ゲンちゃんって?」

「ゲンちゃん、かくれないのかい?」

「ほら、かえるよ」

「かえるのかい? じゃあ、おんぶしておくれよ」

「いいよ。ほら。よいっしょっと」

 あ、けっこう重いんだな、ばあちゃんって。

「ゲンちゃん」

 だーかーらー。だれだよ、ゲンちゃんって?

 あっ、ゲンちゃんって、去年死んだゲンゾウじいちゃんのことだね。

「ゲンちゃん、あしたもあそびましょ」

 ばあちゃん。

 幼なじみのじいちゃんと、いっしょになれたんだね。

 よかったね、ばあちゃん。

「ああ、ゲンちゃんの背中、あったかいよ」

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