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佐藤さん

分量すくなめですが、そのぶん何回も読み返さないとわからないと思います。読み返してもわからないと思います。

わかったひとは天才かもしれません。

なので本当に暇なひとようです。


 佐藤さんはいい人だ。

 どこがいい人なんだと言われたら、総じていい人だと僕は答える。

 東に困っているお年寄りがいればお年寄りを抱えて走り、西にカツアゲされた友だちがいれば犯人全員をぼこぼこにしてお金を回収。

 どんなことにも首を突っ込んで、どんなことでもさらっと解決する。

 佐藤さんはいい人でありすごい人だ。

 おまけにすごくイケメンだ。

 僕は佐藤さん以上に完璧な人を見たことがない。

 当然佐藤さんは男女問わず人気があったし、誰とでも友だちになった。よくラブレターを貰ったという話を耳にしたものだ。

 僕も佐藤さんとは仲がいいほうだった。

 助けてもらったし感謝している。

 そんな佐藤さんと僕の話だ。



 ある日、僕は久しぶりに佐藤さんに電話した。

 僕は春先に引っ越したが、そこが佐藤さんの年賀状に書いてあった住所に近いからというのもあった。

「あ! もしもし、僕だけどさー!」

「お! 久しぶり! 元気だった!?」

 電話口の佐藤さんは僕の知っている通り、声が明るかった。

 僕らは懐かしい思い出を語り合う。

 一通り終わったときに僕は言った。

「佐藤さん、今度遊園地いかない?」

「うーん……いいよ!」

 佐藤さんは快く了承してくれたみたいだ。

 僕たちは次の日曜日に遊園地に行くことになった。



「はー、楽しかったー」

 遊園地からでて伸びをしながら僕は言った。

「こんなところ来たことなかったなー」

 佐藤さんは感心したように言う。

「え? 来たことなかったの!?」

「うん、遊園地は苦手でね。特にジェットコースターが」

「ふーん、意外だねー。てっきり佐藤さんは色んな人と遊園地に行ってたと思ったよ」

「まあ誘われるんだけどねー」

「でも佐藤さんに苦手なものがあるなんてね。学生時代は勉強もスポーツもできたし、社会人になってからも出世のニュースしか聞かなかったから、完璧超人ってイメージが強かったよ」

「ははは、そんなことないよ。苦手なものはたくさんあるよ。例えば━━━」

 それから僕らは色々なことを話した。

 別れ道がやってきた。

 僕と佐藤さんはここでお別れだ。

「今日は楽しかったよ、またねー!」

 と僕がいった。

 佐藤さんも少し笑って手を振った。

「こちらこそ、またね」

 そして僕たちは別れた。



 それから僕たちはよく会うようになった。

 約束して会うことがあれば町中でばったり会うことや、駅の中で鉢合わせしたりなど。とにかくさまざまなところでだ。

 今日も佐藤さんと僕は町中で会った。

 僕は佐藤さんに近づいて声をかけにいく。

「あ! 佐藤さん!」

「あ、おはよー」

 佐藤さんは僕に手を振った。

 佐藤さんは最近疲れ気味のようだ。

 可哀想に。

「佐藤さん、最近元気ないけど大丈夫?」

「え、ああ。大丈夫だよ」

「本当に?」

 僕は佐藤さんの顔を覗きこんだ。

「辛いことがあったら話してくれてもいいんだよ?」

 僕は佐藤さんを見つめながら言った。

 佐藤さんは少し考えたあと、口を開いた。

「実は最近僕の上司が変わって、その人が厳しい人でね。書類を持っていったら全部床に投げ捨てたりしてね。ちょっと疲れ気味なんだ」

「えー、ひどいねー」

「ははは、そんなことないよ。実際会社はあの人のおかげで動いてるとも言われてるし、すごい人なんだよ」

「ふーん」

 それから僕らは少し喋ってから別れた。



「ふーふふーふふふふふふーん」

 僕はある日、鼻歌を歌いながら街を歩いていた。

「あれ?」

 少し遠いところに佐藤さんの姿があった。

 僕は佐藤さんに近づく。

「佐藤さん、また会ったね」

 僕は佐藤さんに声をかけた。

「あ、僕らよく会うねー」

 佐藤さんはこっちを振り向いて言った。

 佐藤さんはさらに疲れ気味のようだった。

「ん? また何かあったの?」

 僕は佐藤さんに尋ねた。

「あー、うん。この前話した上司が亡くなってしまってね、僕が働いてた会社倒産することになっちゃった」

「ええー!」

「ここで再就職先を探すのは無理あるし、地元に帰ることにするよ」

「そんな……、佐藤さんならどこだって雇ってくれるよ!」

「うーん、それに実家のほうから見合いの話が来てるし、やっぱり帰ろうかなって思うよ」

「え!? 佐藤さん結婚するの?」

「うん、もういい年だしね」

「そっかー……、寂しくなるね」

 佐藤さんは寂しそうに笑って、「またね」と言って去ってしまった。



 ピンポーン。

 あれから数日たったある日の晴れた昼、僕は佐藤さんの家に行った。

「はーい」

 ガチャッ。

 佐藤さんが出てきた。

 佐藤さんはマンションに住んでいる。オートロックではないけれど、それなりにいいところだ。

「あれっ、どうしたの?」

 佐藤さんは驚いたようだった。

「いや、佐藤さんがもう少ししたら引っ越すみたいだから……。挨拶しに来」

「あ、あー。暑いから中に入りなよ」

「いつ引っ越すの?」

 僕は尋ねつつ、玄関の中に入る。

「今日の夕方には引越屋さんが来るみたいだよ」

「そうなんだ」

 そう言って僕は佐藤さんの胸を右手に隠し持っていたナイフで刺した。


「これで僕たちはずっと一緒だね」


 佐藤さんはそのまま倒れた。

いきなりだったでしょう?

わかったひとはこっそりメッセージをください。

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