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王都

歩き続けて、十数日。

森を出てひたすら草原を進み、いい加減魔改造生物……モンスターか。モンスターも見慣れた頃。

ようやく遥か遠くに人工建築物が見えてきた。

王都は堅牢な城壁で囲まれてるはずなので、それだろうな。

このまま惹かれる方向に歩いていればいいはずだが、先に王都を出てから向かう先を確認する方がいいかもしれない。

うっかり何もない方向に行ったら今回のように人里に巡り会えないとか、素でありそうだ。

無駄に広い上に未開拓地域が多すぎる。しかも未開の地はイコール、モンスター天国。

現在の半幽霊状態なら襲われないが、肉体があれば彼らのご飯になってしまいそうだ。

一応街道を進めば迷いはしないだろうが、情報を集める時間もなく逃げることになるだろうから次の町までの距離を確認しておかないと行き倒れとかも普通にあり得そうだしな。

なによりあと何日かかるか分らない中、歩き続けるのは精神的にかなりキツイ。実は挫けそうだった……。

行けども行けども森の中。森から出たときは歓喜のあまり叫んだよ! 

そしてその分その後の草原続きが堪えた。

やっと森を出たら今度は草原。見渡す限りの原っぱ。動くものは凶暴そうなモンスターばかり。

一回開放されたと思っただけに、これはきつかった。

恥も外聞もなくひたすら知ってる曲を歌ったりして自分を励ましてた。

途中なんで歩いてるんだろうとか考えはじめたあたり、かなりイってたと思う。

だが、そんな日々も終わりだ!

……あと何日歩けばいいのかな、がんばろう……。

蜃気楼とかじゃないよな……。

思考も沈みがちになる。俺は案外孤独に弱かったのか?

こんなのでこれからやっていけるのだろうか。




やっと、やっと。

たどり着いた王都の城壁はかなり高く、立派なものだった。

しかも王都のはずなので広い。

塀で囲むというのから何となく東京ドームくらいのサイズを想像してしまっていたが、街が入っているんだ。

そんなちゃちなものではなかった。

元々あった丘か何かを利用しているのだとは思うが、かなり広い。

外周を回ったら何日かかるのだろう。

城門は東西南北で4つあるというが、どこから出ても農村へは繋がるらしい。

いくつもの村を経由して、そこからさらに街道がいくつか出て広がっていく。そしてそれらが交わるところに比較的大きな街がある。

国と街の成り立ちからすれば分かりやすいが、道を間違うと延々農村を彷徨いかねない。

それはそれでありかもしれないが。

王都で地図だけは入手したい。

道に迷うのは嫌だ。

あの焦燥感と孤独は半端じゃない。

城壁が見えて道に迷う心配がなくなったときからはかなり気分的に楽になったからなぁ……。

半幽霊状態では魔法が使えないのでどんなことが出来るかが分らないのが辛い。

速度を上げて走り抜けるとか空を飛ぶとか出来れば旅が楽になるだろう。

あるいは髪や目の色を変えられれば、王都で旅の支度がやりやすくなる。

保存食と地図、簡単な旅装も整えたい。

だがレンが夢の中でやってた魔法は火を灯すとか明かりをつけるとかくらいだったからなぁ。

むしろそれくらいが一般的らしいが。

俺はレンのおかげでいろいろ出来る可能性があるのだが、可能性だけでは心許ない。

行き当たりばったりにもほどがある。

それしかないのも確かなのだが。



いっそのことしばらくレンの実家に居座り魔法で何が出来るかを見極めてから逃げ出すというのも手ではあるのだが……。

レンを苦しめた女の顔見たら殴りたくなるだろうしなー。

それは我慢するとしても、長い間居座ってしがらみが出来るのも遠慮したい。

あの女以外は、メイドさんとか家庭教師の人とかいい人ぽかったしな。レンの夢の中では、だが。

監視なんかは召喚直後(と向こうが判断する時)が一番緩いだろうしな。

居座ったときのメリットは魔法の確認が出来る。逃走準備が整えられる。くらいか?

デメリットは俺の心境以外には周囲の人間に俺という存在の情報が渡る。魔法の練習を見られた場合はその情報も渡るか。利用するために女を宛がうとか、逃走しないように毒を盛るとか普通にやりそうな女だし。

デメリットを考え出すときりがない。被害妄想かもしれないが、疑心暗鬼になってろくでもない失敗をしそうだ。

さっさと逃げ出して自由を謳歌しよう。

最低限飢えないように食べ物だけは確保して、いざとなったら美味だというモンスターの肉でも食べる覚悟を持とう。

一番かさばる水は魔法で作れるのでその分食料に回せばいいだろう。



北の城門まで回って街道を進む。街道とはいうが、整備してあるわけではなく踏みならされ土が露出しただけのものだ。

それでも草原の只中よりはモンスターが寄りつきにくいのか、安全らしい。

襲われるときは襲われるが、モンスターも返り討ちになることがあるのを学んでいるせいで、よほど飢えていなければ襲ってこないらしい。

次の村までは3日程度らしい。

情報の提供者は見知らぬ行商人のおっさん。息子っぽい少年にいろいろ話して聞かせてたので便乗して聞かせてもらった。

いい人に巡り会えた。

今は何もお礼出来ないが、いつかもし会うことがあったら勝手に何かお礼をしよう。

名前はおっさんがヤージュ、少年がジャックか。

レンもそうだったが、西洋風の名前だなぁ。

もしかして俺の名前は目立つか?

最初は偽名を名乗って、逃げたあとは普通に本名を名乗るつもりだったのだが……どうするべきか。

最初に偽名を名乗るのは当然として、その後も別の偽名で過ごすべきか?

まぁ、最初に普通っぽい名前を名乗っておけば変な名前の人間を気にする理由はないか。

あの女に名乗る偽名は……トーマスとかでいっか。ありがちだよな。

よし、決まれば、そろそろ行くとするか。

空腹は感じないが、気持ち的に何か食べたい。

ジャックが肉を挟んだパンを食べてたんだが、うまそうでなー。




行商人親子と離れ、来た道を戻り城門を越える。

城門は筋骨隆々とした大男達が守っていた。


さすが異世界というべきか、この世界にはいろいろな種族があるらしい。

大男は力人と呼ばれる力に特化した種族で魔力がほとんどない。火を灯すとかも無理だ。その代わりに恵まれた身体能力をもち、なんと四肢を失っても再生するという。時間はかかるらしいが。

あとは魔人と呼ばれる魔力特化型とか寒い地方に行くと毛皮装備の獣人、山岳部の翼人、水辺の魚人などなど。

この世界の人間は環境に適応する能力が著しいらしいな。住むところによって違う進化を遂げたらしい。

だが、混血はどの種族間でも可能で生まれる子供が親と違う種族というのもよくある話らしい。

さすがに翼人夫妻の間に魚人の子供とか、生活区域があまりに違う種族は生まれにくいらしいが。

それでも近くに水源はあるわけだから、生まれないわけではないらしい。


どの種族にも一長一短があり、人間は平均的だが特出した能力がないということで釣り合いがとれている。

その上どんな種族でもどこにでも生まれる可能性があるとなると人種差別的なものはほとんどない。

そりゃそうか、獣人を迫害してたら自分の子供が獣人でしたとか。笑えないことになるからな。

誰だって自分の子供、親類縁者は可愛いというわけだ。

世界からして縁者を優遇するんだ、本能なのかも知れない。




王都から出るときのために道をしっかり覚え、雑貨屋や古着屋。武器屋や防具屋まで必要そうな店を覚えていく。

雑貨屋で食料と地図を売ってたので逃走準備は素早く整えられそうだ。

そろそろ敵の元へ行かなければならないと思うと気が重いが、さっさと済ませてしまおうか。




王都到着。

次回でやっと半幽霊状態から脱却です。

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