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領主



 領主さんのところにいるのは執事っぽい人だけだった。

 内密の話だとは思わないのだが、毎回人払いするのは何でだろうな?

 まぁ、俺的には助かるからいいのだが。

 

「よくきてくれた。四肢の再生薬も順調なようでなによりだ」

「はい、ありがとうございます」

 

 えーっと。話さなきゃならないのは再生薬のその後とキュアデイジーズポーションの件か。あとはポーション樽も。

 どっちも完成したらでいいといえばいいが、準備というか計画を考えてもらっておく方がいいだろう。

 完成品の配置なんかは計画的に行う方がいいだろうしな。ヒールポーションの時のように場当たり的な対応は混乱になるだけだし。

 作るのに失敗する可能性もあるから今すぐって話じゃなく、将来的に出来るようにしたいって話だが。


「セレス嬢には話しましたが、再生薬の方は協力者のマードックさんで一応の効果の確認は出来ましたが、対象の魔力によって効果に差が出そうなのでもう少し安全確認をしたいと思ってます」


 鷹揚に頷くあたりすでに経過は知ってそうだな。

 

「この短期間で成果を出すとはたいしたものだ。納得いく仕上がりになるまでどれくらいかかる?」


 ちょっと急ぎすぎてる自覚はあるんだが、悠長にしてると取り返しのつかなくなる人もいるだろうし仕方ない。

 目立ちすぎて捕まったり、利用されそうなら姿を変えて逃げるしかないか……。

 出来ればやりたくはないか、それも選択に入れておく方がいいだろうな。


「一ヶ月もあれば後遺症の有無も分ると思います。もちろん数十年後にならないと分らない問題はあると思いますが」


「そうか。あまりに先のことまで心配しても始まるまい。問題がなければ、その頃には販売も可能か?」

 

 販売もか。繭の方は俺以外が作る方法を考えてなかったな。うっかりしてた。

 一回で作れる量はそれなりにあるし、しばらくは一カ所で提供して追々他の人でも作れる方法を考えよう。それこそ魔法陣を流用できるかもしれないし。


「可能ではありますが、量産は難しいかも知れません。努力はしてみますが」


「期待している。研究資金や、人手が必要な時はクリストファーに言えば可能な限り用意させよう」


 思いっきり繋がりがあるし隠す気すらないようだ。逆に言えば俺に知られて困るようなことはないってことだろうか。

 監視と言うより単純な連絡調整員って感じだな。そう思わせたいのかもしれないけど。


「それにしても、本当に早いな」


「ずっと研究していましたから」


 何気なく、と言うふうに言われたので一応用意してある言い訳をいう。

 たくさん作ってるから研究してたってのもどんだけ研究だけして形にしてなかったんだって感じだが。

 実験に伴う資金がなかったってことで納得してくれるといいんだが。実際謝礼とかでかなり金が掛かるし。


「病床で研究してたのか? レンフォード・グルテルグ殿」


 え?


 その名前に思いっきり反応してしまった。

 うん、誤魔化しようもなくはっきりと。

 ここまであからさまに驚いておいて他人ですって言うのも空々しいよな、どうしよう。

 というか、なんでその名前が出てくるんだ?

 俺が不審で調べたとしても王都まで往復出来る時間はないはずだし、調査なんかを含めればもっと時間が掛かるはず。


「以前あったときとはずいぶん雰囲気が違うが、やはりか」


 会ってたのかよ!

 夢で見た記憶はないし、初対面の時そんな様子はおくびにも出さなかったよな、この人。


「前にその名の方に間違えられたことがありますが、他人のそら似ですよ」


 こんな陳腐な言い訳で通用するとは思えないが……うう、他に思いつかない。

 マジで逃げるしかないか?


「似てるとは言っていないが」


 ……そうですね。

 間違いなく詰んだな、これは。

 逃げ道を求めて窓を見る。ガラスのはまった大きな窓だ。いっそ飛んで逃げるってのもありかも知れない。

 問題はまだ飛んでみたことがないので飛べなかったり落ちたらどうしようってことか?

 セレスの足のことなんかもあるし、いきなり捕らえられるってことはないだろうし焦って逃げ出す必要はないのかもしれないが、あの女には関わりたくないし、関わりがある人間として扱われたくもない。

 あの女―コンスタンシアに悪評がいくならいい。だが、有用な薬を作る人間の母親として、評価されたりするのは耐え難い。

 あいつは俺の仇であり、レンの仇なのだから。

 とはいえ、この状況を誤魔化すのはかなり難しいよな。

 全部はとても言えないが、ある程度事実を話してでもあの女と二度と関わらないようにしたい。

 

 ため息をひとつ。

 覚悟を決めよう。


「俺は、レンフォードではありません。別人です。……彼は、死にました」


 これは本当のことだが、どこまで信じるだろう?

 この身体はレンのものだ。領主が前にあったことがあるというのだから間違えようがないだろう。


「確かに病死されたという噂は聞いた。だが、王都中に私兵を放ち探索した末の報としてはおかしくないかね?」


 あの女、俺が逃げ出したのを捕まえて利用するのは無理だと諦めたのか?

 長期にわたって死亡を隠してたからそれが限界に来たのかも知れないが、家出とか誘拐として探索は続けるかと思ってた。


「あの女……いえ。コンスタンシアは召喚魔法が使えました。レンフォードの死によって自らの権勢が衰えるのを忌避し、彼の遺体に俺を呼び入れたのです」


「……ほう?」


 ちょっと興味を持ってくれたようだ。俺が別人だと言い張るのを聞いてかなり剣呑な視線になってたのがちょっと落ち着いた。

 執事さんの無表情っぷりが逆に怖いが。

 このまま俺があの女に関わる気がないことを主張して。薬屋兼道具屋をやっていきたい。


「俺はこの国より遙かに遠い国で生まれ育ちましたからポーションなんかも国では普及していました。こちらにはないものを知っている、それは俺がレンフォードではないことの証明になりませんか? 本来の俺の身体がどうなったかは、分りませんがおそらくは生きてはいないでしょう。だから、俺はコンスタンシアに関わりたくないのです。恨んでないと言えば、嘘になりますが子爵家と正面切って事を構える気にはなれませんでしたから」


 一気に言い切る。嘘はほとんど言ってない。言ってないことはあるけど。

 ポーションは普及してないが、ゲームなんかでよく見るから概念として普及してると言えば普及してると言えるだろう。ちょっと苦しいが。


「国に帰ることも考えましたが、流通してるものの違いなどを見てもとうてい交流があるようには思えません。帰路を探索するつもりですが帰ることが叶わないなら、こちらで薬などを売って生きようかと思っています」

 

 これであの女に引き渡すとか、捕らえて国のことやらこっちにない品の情報を引き出そうとされたらどうしようもないのだが。

 でもこの領主さんなら無理矢理より穏便に協力関係を作る方を選んでくれるような気がする。今までのやり方もそうだったしな。

 ここで俺を捕らえたらセレスの足を治す人間がいなくなるというのも考慮してくれるんじゃないかと思うし。もちろん敵対しそうなら容赦はしないだろうが。


 どきどきしながら見ていると少し考えた末に、ゆっくり頷いて。


「確かに作る薬や食物は全く知られてないものだ。遠い国の産物と言われれば納得もいくな。君はグルテルグ家とはなんら関わりのない者として扱おう。これからもよろしく頼む」


 何とかこれまで通り生活出来るようだ。

 単純に身元確認で聞いてきたってわけじゃないだろうし、これで信用されるとは露ほども思えないが。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


「ところで、薬などで他には何が作れる? 遠い国の有り様にも興味があるのだが」


 素直に全部いうわけにもいかないよな。科学なんて理解出来ないだろうし。


「いろいろなものがありますが、領主様はその窓ガラスを作る方法をご存じでしょうか? 私は知りません。そのように、身近にあったものでもすべてを作ることは困難で再現するにも時間が掛かります」


 民主主義とか侯爵のこの人に語る勇気もないし、そもそも語れるほど詳しくない。

 経済学とかは初歩の初歩すら無理だ。農業その他も全滅。高校生に期待しないでくれ。


「そうか、それは残念だ。だが、有用なもので再現できるものは是非再現してほしい。そのための援助は惜しまない」


「ありがとうございます。次は病を癒すための薬を考えていますので、再生薬の実験の合間にも試していこうかと思います」


 魔法陣は取りあえず時間を見て試そう。今ここで交渉する気力はない。マリィさんを待たせてるからそっちは取りかからなきゃいけないが。


「病を癒すか。それが完成すれば大勢が救えるな」


 言葉では歓迎してるようだが、少し思案げだ。やっぱり医者の件とかいろいろあるんだろう。


「試して見ないと分りませんが、ヒールポーションとは違い、数回で使い捨てのアイテムを使って作ることになりますので、その流通方法などはお任せします」

 

 失業率とかを考えて流通量を制限するとかは素人には無理だ。

 任せてしまえば俺は厄介ごとを丸投げできるし、領主さんは薬の販売利益と名声が手に入って文句はないだろう。


「善処しよう、任せたまえ」


 取りあえずこれで一段落、かな?

 何とか無事に家に帰れることになった。

 この短時間でどっと疲れてしまったよ。

 帰ったら何か甘いものでも食べよう。

 領主さんの無言のプレッシャーに比べたら騎士数名の沈黙の重さなんて羽毛のようだね!

 可愛いくらいだ。出来ればこんな事態は二度とないようにしたい。



 でも本当になんでこんな短期間で王都の話が伝わるんだ?

 病死の噂事態は届いてもおかしくない。俺が歩いて来て、この街に滞在した時間があったんだから。

 だが、領主さんが王都に連絡を取って状況を調べる時間はなかったはずだ。

 俺がこの街に来てからではたとえ馬を使って全力で往復しても間に合わないはず。

 今のところ致命的なことにはならなかったとはいえ、この情報の早さは怖い。

 他に知られて困る情報はないから考えても仕方ないが……。

 


 なんか、この街は実は鬼門だったんじゃないか?

 もっとダメダメな領主の治める小さい街の方がよかったかも知れない。

 でもそこで目立ったらもっとまずいことになってたか?


 後から悔やむから後悔とはよくいったもんだ。

 可能な限りいろいろ考えて努力してるつもりだが、振り返ると穴が多すぎる。

 どうすればいいのやら。




かなり短いですが領主様無双の回です。

情報の早さには一応ちゃんとした理由があります。

とても単純というか、よくある手段なのですが、主人公が気付かないのでかけませんでした。

いつかばらせるといいのですが。


次回の更新もぎりぎり週一を守れるかどうかになりそうです。

お待たせしてる上にクオリティが低くて申し訳ありません。

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