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治癒

どんどんアクセス数が増えて驚いています。

つたない話ではありますが、どうぞよろしくお願いします。

 そういえば、昨夜は警報をかけ忘れて寝たな。

 気持ちよく寝てたのに、誰かにたたき起こされて。起きて最初に思ったのはそんなことだった。

 現在、首に剣を突きつけられた上で脅されてる。見知らぬ覆面の2人組に。

「おい、ぼけっとしてないで答えろ! 二目と見られない顔になりたいのか!?」

 小声で怒鳴るというなかなか器用な芸を見せてくれる。

 お金は細かいのが多くなり意外と重かったので収納袋に入れておいたのだが、そのせいで発見できないようだ。

 収納袋はどうみても何も入ってないもんなー。開けても使い方も分らないだろうし。取り出したいものを思いながら手を突っ込むだけなんだけど。

「おまえを殺してから家捜ししてもいいんだぞ!」

 寝起きでぼーっとしてた頭が覚醒してきた。もしかしなくてもやばいな、これ。

 今更ながらに恐怖が襲ってくる。強盗にはいられたのか。しかも俺の反応があまりに鈍いからだろう、かなりキレてる。

 魔法で迎撃するにもやり過ぎたら人殺しだ。かといって多少の傷だと逆上して俺がやられるだろう。

 モンスター相手では感じなかった死の恐怖。

 そして、人を傷つけることへの抵抗。

 仕方ない、か。相手がいらいらしてるのが分る。そろそろ限界だろう。

「スタンガン」

 電流を流すイメージで魔法を使う。スタンガンなんてみたこともないが気絶するレベルを思い浮かべて二人いっぺんに撃つ。

「ぎゃあああ!」

 あれ? スタンガンって撃つものだったっけ?

 銃の弾丸が気絶させる電流の固まりってイメージで使ってしまったが、よく考えたらスタンガンって人に押しつけて使うものだった気がしてきた。

 さすが魔法、イメージさえあれば間違ってても発動するのな。助かった。


 うまく気絶してくれたようだが、いつ起き出すか分らないので縛っておくべきだろう。

 でもさすがに縄もないし、そもそも縛るとかいう特殊技能っぽい技は持っていない。ぐるぐる巻きくらいは出来るだろうけど。

 縄跳びの紐で縛ったり縛られた経験もあるが、縛ってもすぐ外せるんだよなー。外しにくく縛れるやつがいつもケイドロの警察役で、そいつに捕まると大変だったっけ。あいつならうまく縛ってくれるかも知れないが、俺は下手だったのでやるだけ無駄だろう。

 悩んだが魔法で水を出し、それで両足両手をひとまとめに固めておく。凍傷になったら可哀想なので、氷漬けではなくコンクリートをイメージして固めてやったけど。強度もコンクリ並みのはずなので壊せまい。

「ハヤト、大丈夫か!?」

 ドアを蹴破るようにしてレバタさんとルイが駆け込んでくる。

 さっきの強盗の叫び声で気付いてくれたのか?

「ああ、俺は大丈夫。騒がしてごめん」

 夜中に、近所迷惑だったな。

「無事ならいいが、賊か?」

 転がってる二人の処遇に悩んでたのでちょうどいいところに来てくれた。

「ああ。これ、どうすればいい? どっかに突き出すのか?」

「衛視の詰め所に連れて行くのが普通ですが、ハヤトの国では違ったんですか?」

 それが普通か。こっちの警察みたいなもん?

「あー、小さい村だったからさ。強盗とかはじめて見た」

「なるほど」

 こういう犯罪って大都市特有だよな。田舎のよそ者の少なさとよそ者に対する警戒は半端じゃない。

 そもそも襲っても実入りがないから襲わないってのも大きいだろうけど。

「それにしても、どんな魔法ですか、これ」

 ルイがコンクリを眺めてる。いきなりこんなもんが出てきてたらびっくりだよな。

 うーん、説明に困る。正直に説明してもいいか?

「暴れないように固定しようと思っただけ」

「どういう発想でこうなかったのか詳しく聞きたいですが、聞くだけ無駄っぽいですね」

 根本的な発想が違うもんなー。なんか俺の評価が電波で奇想天外な変人になってそうで怖い。

 呆れてはいるみたいけど、化け物扱いじゃないからいっか。

 ところでガルドさんはどうしてるんだろう? あれだけ飲んでたから起きられなかったのかな。


 その後気絶したままの2人を衛視のところに運ぶのに無駄に苦労した。

 変な固定の仕方だったんで引きずるに引きずれないから台車借りて乗せてったんだが、途中で固定方法変えればいいことに気付いてさらに疲れた。

 衛視にもいろいろ聞かれるしで、散々だった。レバタさんがいてくれた分簡単な聞き取りですんだみたいだからマシなんだろうけど。

 ポーションの件で稼いでるのに普通の宿にいるから狙われたらしい。もっと警備のしっかりした宿に移れって紹介までされたよ。

 そういう店って高いんだろうなー。ここに長居するならいっそ家借りた方が安いかも知れない。ちょっと考えてみよう。

「レバタさん、夜中につきあってくれてありがとう」

「気にするな」

 いや、普通気にしますって。今度晩飯くらい奢ろう。あ、でも。

「宿変えたら顔合わせなくなりそうだよな。どうしたもんか」

 まぁ、レバタさん達が仕事にでたらどっちみち会わなくなりそうだけど。

「仕方あるまい。なに、ギルドに伝言を入れておけばどこにいても分る」

 パーティ向けのサービスなのか。拠点借りるならギルドを通せば多少割引してもらえるってことだし、借りようかなー。

 荷物も増えるだろうし……でもいつまで滞在するか決まってないからな。すぐ出て行く気はないけど。

 考えには入れておこうか。値段次第って気もするし。




 結局その後ほとんど寝られないまま、夜が明けてしまった。

 朝食にパンとスープを軽く食べてギルドにポーションを納め、昨日買いそびれた服と靴を買いに行く。

 露店では今の服より良さそうな物がなかったので、服屋を探す。

 総合店なんてないから欲しい物を扱ってる店を探すのが大変だ。

 今までで一番品揃えが良かったのが雑貨店って時点でその大変さが分ると思う。

 専門で売るほどでもない小物は雑貨店で何とか見つかるんだが、それ以外になるといちいち専門の店がある。

 靴屋に服屋。この辺はまだ分るけど下着屋も別で手袋の専門店まであった。果物屋と八百屋まで別で、肉屋に干物メインだったけど魚屋、乾物屋と言うべきなのかも知れないけどドライフルーツ専門店まで発見したよ……。

 さらに武器屋があるのに包丁屋があった。研ぎ直しもやってたけど。刃渡り30センチ以上はありそうな包丁とか、武器屋で扱ってもいいんじゃないかと問い詰めたかった。聞かなかったけど。

 そんなわけでやっと服を扱ってる店を見つけたころにはだいぶ時間が迫ってた。

 大体、服屋自体も本当は布を買って仕立てて貰うものらしい。

 服の形で売ってるのは古着だからぼろくなってる物が多い。

 今着てる麻っぽい素材の服は丈夫そうだし、厚みの割りに涼しくて気に入ってたんだがやっぱり着古してる感があるし、こっちでは安物の服としてみられるのが残念だ。実際、服の中では格段に安いんだけどな。

 一般家庭では綿、それ以上なら絹というのが一般で冒険者なら皮素材、それもモンスターの皮素材を使うのが当然らしい。革ジャンとかか?

 そういえばガルドさんやレバタさんも革ジャンだったなー。力人が革好きなのかと思ってたよ。ルイは綿メインだったし。

 そんなわけで、魔術師っぽさを追求して綿の上下と絹のローブっぽいものを羽織ってみた。仕立ててもらうのはまた今度にするとして、今はまた古着だけどイメージにある物があって良かった。

 魔術師っぽさといっても冒険者と一般人の違い自体が革素材多めってのと武装くらいだから、魔法使いとの違いはほとんどないとは思う。

 でも、俺は魔術師って名乗ろうかと思うんだよ。使う魔法が普通の魔法使いとは違う理由に出来そうだから。

 魔法はまれに触媒を必要とすることもあるが、基本は明確なイメージとそれを作るための長い呪文、精神統一で発動する。あ、魔力も消費するけど。

 だから素になる品が必要な俺が作るポーションとかの物は魔法で作り出すのではなく、全部魔術ですと言っておけば新しい術として認識してもらえるだろう。

 そうすれば新しい魔法として認識されて、今までの常識を壊すと思われるより多少はマシなはず。

 魔法じゃなく、別の触媒を多用する別の術。そういっておけば今までの魔法使いのプライドも刺激しないと思うし。

 詭弁っぽいけど「規格外の魔法使い」よりはレアスキル「魔術師」のほうが納得されやすいだろう。

 何もなくても巨大な魔法が使えます、って言うより巨大な魔法っぽい物が使えますが、触媒がいります。の方がまだ怖がられにくいと思う。

 どっちにしろ名乗るのが俺だけだとかなり寒いことになるが……ポーション作りとか普及していけば既存の魔法使いと物作りの魔術師とでやっていけるんじゃないかな? 同じ部で違うことをやってれば争いごとが多くなるけど別々ならそんなに気にならない。そういうもんだし。

 そんなわけで今日から「魔術師・ハヤト」……あう。自分で名乗るはかなり恥ずかしいな。

 使ってる魔法について聞かれたりしたら魔法じゃなく、魔術って訂正するくらいにしておこう……。

 

 

 着替えて待ち合わせのところに行くと、すでに馬車が待っていた。

 待たせるつもりはなかったのだが時間区分が2時間おきに鳴る鐘くらいしかないからなぁ。細かい時間が分らないから早めに来てくれてたのだろう。昼の鐘がなってないから遅刻ではない、うん。

 相変わらず豪華な馬車で騎士っぽい人もいてVIP待遇っぽさが醸し出されている。

 歩くのは辛そうな距離だからいいんだけど、馬車の中で騎士っぽい人に囲まれてると結構気詰まりだ。

 無駄話の一切もないとか、見上げた真面目さだけど俺的にはフレンドリーに接して欲しい。

 話しかけるきっかけもないので黙ってるヘタレですけどね。

 いっそ人間以外の種族なら鱗とか翼が観察できて良かったのに。毛皮も一度触ってみたい。

 翼が抜けないかとか鱗は生え替わるのだろうかとかとかどうでもいい疑問を考えてるうちに城館に着いた。

 帰り道はいっそポーションでも作ってようか。時間がもったいない。




 昨日の病室には今日も女の子2人がいた。

 執事さんはいなかったが、迎えに来てくれた騎士がそのまま部屋の隅に立っている。

 微妙に信用されてないらしい。まぁ、いいけど。

「取りあえず、顔の傷跡から消そうと思って用意したんだけど」

 昨日作ったパック入りの瓶と鏡を傷のある女の子、セレスだったっけ? その子に渡す。

「これは…? ……っ」

 鏡を見て辛そうに俯かれてしまた。傷跡を直視してしまってショックなのだろう。

 アナスタシアが慌てて慰めてる。傷が消えてから渡すべきだったか?

「大丈夫よ、治すための薬を作ってくれたんだから! 元通りになるわ」

「でも、こんな酷い傷なのに……」

「昨日試してみたけど、大丈夫だと思う。な、試してみてくれないか?」

 傷が消えれば悲しむ必要もないんだし、さっさと治してしまおう。泣いてるわけではないが、悲しそうな顔をされる方がよほど心に痛い。

 セレスを慰めてるアナスタシアが美人なだけに対比で余計に傷が酷く思えるし。

「そっちの瓶のクリームを塗って、乾いたら剥がせばいいだけだから」

 ほっとくといつまでも進まない気がしたので瓶を取り、塗っていく。勝手に女の子の顔に触るのはちょっと躊躇ったが、医者に触られるような物だと思って我慢してもらおう。

「乾くまでちょっと時間がかかるけど」

 どれくらいの厚みで塗ればいいのか分らなかったのでちょっと厚めに塗ったしな。

「でもこんなにはっきり映る鏡なんてはじめて見たわ。どこで手に入るの?」

 乾くまでの時間をもてあましたのか、アナスタシアが鏡に興味を持ったらしい。

 美的センスがないなりに装飾もしてあるし、どこかの特産品だと思ってるのか?

「傷跡がなくなったのを確認しやすいようにと思って作ってみたんだよ。セレスにプレゼント」

 2人とも目を丸くしてる。なんか変なことをいったか?

「作ったって、ご自分でですか? でも……こんな高価な物を頂くわけにはいきません……」

 安いわけではないけど、そこまで高いわけでもない。自作だからな。

「気にしなくていい」

「でも……」

 困ったように俯かれてしまた。俯いてるとか悲しんでる顔しか見てないなー。悪いことをしてるみたいだ。

「綺麗ね、私も欲しいな」

 女の子2人のところにひとつだけってのはまずかったか? 今度から気をつけよう。

「ああ、すまない。明日にでも同じのをプレゼントするよ」

「ありがとう!」

 嬉しそうな笑顔が綺麗で、まぶしい。本当に可愛いし、セレスは大人しいのでアナスタシアがいないと間が持たなかっただろう。いてくれて良かった。

 病室の雰囲気的にも華やかなピンクのドレスっぽいワンピースのアナスタシアがいるとだいぶ明るく感じるしな。

「あ、そろそろ剥がせるんじゃないか?」

 さすがに剥がすのは任せよう。さすがにこれ以上女の子に顔に無断で触れたくない。

 怯えたようなセレスをなだめ、アナスタシアがパックを剥がしていく。

 今度は乾いたら色が変わるようにしようかな、いつまで待ったらいいのか分りにくい。

 幸い乾いてたようで、パックは抵抗なくするすると剥がれていく。

 セレスは見られたくないみたいだが、ここは諦めてもらおう、じっくりと見つめてみるが、傷跡はどこにあったのか全く分らないくらい綺麗に消えていた。

「成功だな」

 女の子2人もびっくりしたように何度も確認しているが、すぐに傷が消えたと納得してくれた。

「ありがとう……ありがとうございます……」

 セレスの方はとうとう泣き出してしまい、アナスタシアが肩を抱いて慰めてる。なぜか後ろの方では騎士が1人走っていった。今まで気配さえ感じさせなかったのに何かあったのだろうか。

「ハヤト、セレスを治してくれてありがとう」

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

 やっと泣き止んだセレスは目元が少し赤くなってたが、傷跡はどこにもなくなっていた。

 傷の酷さで解らなかったが、セレスもそれなりに可愛らしい子だった。領主さんの遠いとはいえ血縁なだけある。アナスタシアの美貌とは比べようがないが、大人しそうな雰囲気とすぐに俯くところが深窓の令嬢っぽい感じだ。か弱そうで守ってあげたい感じってのか? 笑ってくれるならなんでもしてあげたくなる、そんな子だ。

 治療のためとはいえこんな子の側にいられるのはかなりの役得だな!

 義肢がどれくらいかかるかは分らないが、この子のためと思えばがんばれそうだ。いや、がんばる。

 正直レバタさんに頼まれたとき遥かにやる気になってるあたり、我ながら現金なものだが仕方ない。きっと世の中の男性の8割くらいは納得してくれるだろう。あとの2割は特殊な性癖の可能性が高い。

 と言うか、足の義肢だから足に触るとこになるのか?

 かなり役得…いや違う。触っていいのか? 年頃の娘さんだし、嫌がられそうだよな。顔の時は我慢してもらったがさすがに足を見せてもらったり触るのは、どうなんだ?

 治るなら多少のことは我慢してくれるだろうが、泣きそうな顔をされると辛い。

 かといって他の人に実験につきあってもらうのも、会う回数が減ることになるから言いたくない。

 どうするべきなのか……。

 意外と足くらい見られてもどうと言うことはないって可能性もあるが、服の裾の長さとか的に足を見せるのは嫌がる文化の可能性が高いよなー。

 見た感じの長さでは膝あたりで切断されてるっぽいし。

 本当にどうしよう?

貨幣の話で金貨の話が半金貨がないとなっていたり(正しくは小金貨がないのですが)半銀貨がでてたりと間違っていたので訂正しました。

正しくは小銅貨→銅貨→小銀貨→銀貨→金貨→大金貨です。

申し訳ありません。

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