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仲間

なぜかいきなり読んでくださる方が増えて

嬉しいやら恐れ多いやらでわたわたしています。

足を運んでくださった皆様、ありがとうございます。

 もう一度買い物をする必要が出来たので日が暮れるまえに帰らなければ。明日の昼頃に試作品を作って持ってくると約束し、城館をでる。

 アナスタシアがそんな短時間で出来るのかと訝しんでいたが、実物を見れば納得するだろう。

 セレスの方は俯いたまま何も言わなかったが、顔の傷が癒えれば話くらいは出来るかな?

 帰りも馬車で送ってくれたし、明日も迎えに来てくれるようだ。

 もっとも、馬車で露店の多い広場は抜けにくいので今日馬車が止まっていた場所での待ち合わせになったが。


 広場の露店の品揃えは多彩で安いのが特徴だ。いろんなところから来る行商人が一時的に店を出すらしい。日用品の類は広場への道に連なる商店を利用することになる。食べ物の屋台も多いが、軽食がメインだ。座る席がほとんどないから本格的な食事には向いてない。

 そして、ここで問題だ。

 化粧品ってどこで売ってるんだ?

 当たり前だが化粧なんてしたことがない。日本ならコンビニかデパートにでも行けば売ってるだろうと分るが、こちらでは思いつかない。

 当然ではあるがレンの夢でも見た覚えがないしそこまで細かい話になると世界の記憶を探索しても思い出せないようだ。

 その辺を歩く女性に聞く手もあるかも知れないが、突然見ず知らずの男が化粧品はどこで売ってるか、なんて聞いてきたら普通は驚く。そして女装趣味でもあるのかと思われそうだ。誤解されても困りはしないが、いい気はしない。

 うーん、しばらく見て回って見つからなかったら水から製造しよう。どこまでも万能だな、水。このまま全部水ですましてもいい気がする。


 結局化粧水も美容液も見つからなかった。美白とかには縁のなさそうな世界だしなぁ。

 代わりと言うわけではないが、ちょっと高級そうな瓶(実際に高かった)を買っておく。領主さんの遠縁の娘さんに薬瓶とはいえ最安値の素っ気ない瓶で渡すより綺麗なものに入れて渡す方がいいだろう。

 さらに鏡が銅鏡っていうのかな? 金属板を磨いただけの物だったので作ることにする。ガラス板に銀を塗ればいいはずなので銀の小さい固まりと、ガラス板の代わりにガラスっぽい小瓶を買っておく。

 遠足で魔法瓶を壊した時の経験がこんなところで生きるとは思わなかった。

 水筒の中になんで鏡が入ってるのか疑問に思って調べたんだよな。疑問ってか、水筒の中が割れてるのに気付かずに中身を含んで口の中大惨事になった恨みだった気もするが。

 おかげで魔法瓶の仕組みも何となく分るので魔法と合わせると作れそうな気がする。使い道がなさそうだから作らないけど。

 鏡は傷が綺麗に治ったことをはっきり見せてあげるのに必要だよな。

 自分の目ではっきり確認できれば人前に出るのを嫌がることもなくなるだろう。

 顔の傷って女の子にとってはかなり重要なことだろうからな、できるだけ完璧に治してあげたい。心の傷も含めて。

 あとは着替えや靴なども買い換えたかったが日が暮れてしまい、店じまいが始まったのでまた明日にする。約束は昼からだから間に合うだろう。

 




 宿に戻るとルイ達が待っていた。食事をしながらだったが。

「ただいまー」

 一緒のテーブルに着き、大皿の料理を分けて貰う。

「おう。どうだ、領主様は立派な方だったろう」

 この都出身だというガルドさんは街の繁栄をとそれを導いた領主様を自慢にしているらしい。

 確かに情報の早さや行動力はすごいな。災害時の対応とかもこの通りだったら領民からはありがたい領主様だ。

 得体も知れない、この都に来たばかりの人間に会うのはかなり無謀な気がするけどな。

 執事さんが護衛を兼ねてて、さらに領主さん自身も腕に覚えがあったのかも知れないが。

「そうだな。で、依頼で義肢頼まれたからしばらく通うことになったんだよ。ポーションの件も落ち着いたし、護衛はもういいと思う。すごく助かった。ありがとう」

 短い間だったけど、よくしてもらった。ちょっと寂しいが、彼らにも彼らの生活があるんだ。いつまでも拘束できない。

「そうですか、私たちの方こそガルドの件やポーションの作成方法などいろいろお世話になりました」

「半年は働けないところだったんだ、本当に助かった。ありがとよ」

「……ああ」

 レバタさんは相変わらず無口だ。昼に田舎に帰るって話を聞いて、寂しくなるなーってしんみりしてたのにその夜に別れを切り出すとか俺もなんか生き急いでる気がするな。あっという間に状況が変わってく。

 落ち着いたら、って話だったがどうするんだろうな。

 あ、でもレバタさんが抜けるってことはこの3人のパーティは解散なんだろうか。

 レバタさんが田舎に帰るって話をすでに話してあるのかが分らないから聞かない方がいいか? もしまだ話してなかったら余計な火種を作ることになりかねない。

 それにしても、これでお別れだっての2人はにしんみりするどころか楽しそうだ。短いつきあいとはいえそれなりに仲良くなれたと思ってたのは俺だけだったらしい。レバタさんは良く分らないし。

「依頼も終わったことですし、改めて。ハヤト、私たちと組みませんか?」

 は?

「俺とレバタが前衛でルイとハヤトが後衛。バランスは悪くないだろ」

 えーっと。

「レバタさん、落ち着いたら田舎に帰るんじゃないんですか?」

 言わないつもりだったがこれは確認しなきゃいけないよな?

「落ち着いたらな」

 依頼が終わったこの時点で落ち着いてないって言うならいつ落ち着くんだ?

「ああ、レバタのそれはもう口癖みたいな物ですからね。気にしなくていいですよ」

 あんなにシリアスな場面だったのに。さすがにあの態度とか想いは嘘ではないんだろうが、俺の感動を返してくれ。

 でも誘ってくれるのは正直すごく嬉しい。だが、いろいろと作ったりしたいし、そうすると一緒に仕事を受けるのは難しそうだ。

「誘ってくれるのは嬉しいけど、義肢とかいろいろ作りたいから仕事は受けられそうにないんだ」

 気の合う仲間と旅をするのは楽しいだうし、彼らが仕事に行ったらいくらポーションを持ってても怪我とか心配になりそうだ。でも薬を作ったり便利そうなアイテムを作るってのも捨てがたい。

 何もないときならそれでもきっと一緒に行っただろうけど、今はセレスの治療も頼まれてるし。残念だけど……。

「ああ、説明が足りませんでしたね。一緒に仕事を受ける必要はあまりないです」

「じゃあなんでパーティなんだ?」

一緒に仕事をしないならただの友人ってことでいいと思うんだけど。

「パーティを組んでいれば宿やギルドでも割引があります。何より、何かあったときにパーティメンバーが黙っていないってことでもありますからね。厄介ごとに巻き込まれにくくなりますよ」

 それなりの知名度があるパーティなら、その一員に手を出す馬鹿は少ないってことらしい。

 なんかやくざとかマフィアの一員っぽいな。

 でもそれで利があるのって俺だけじゃないか? 損になることは何もないようだし、助かることもあるだろうが助けてもらうばっかりじゃ申し訳ないぞ。

「俺も3人が何か困ってたら助けようとは思うけどさ。仕事も一緒に行けないのにそこまでよくしてもらうのはなぁ」

 そもそも利がなくても友人が困ってたら助けるし。

「あって困る名前じゃないぞ、いいじゃないか!」

 ガルドさんは酒が入ったせいか陽気だなー。そう軽く言われると深く考えなくていい気がしてくる。

「こちらも有名なポーション作製者が仲間となれば信用度が違ってきます。お互い、助かることはあっても負になることはないでしょう」

 昼の食堂の親父を見るに、レバタさんがいれば信用度はかなり高いだろうに。俺に気を遣わせないように言ってくれているのだろう。

 不利益はなくても、利益もない。それなのに誘ってくれる優しさが嬉しい。

「じゃあ、遠慮なく入れてもらう。これからも、よろしく」

「おう! 骨斧にようこそ!」

 杯を合わせて乾杯する。俺は果汁水だけど。

 これからは「骨斧」の一員だ。基本別行動なのがなんだが、所属があるというのはいいな!

 ところで骨斧ってどういう意味なんだろう。ただのパーティ名なのか? 地味に気になってるんだが、また聞きそびれてしまった。






 思う存分飲み食いして部屋に戻る。

 このまま寝てしまえば最高の気分なんだけどなー。明日の約束もあるので薬を作ってみよう。

 あ、ギルドで売る分のポーションも用意しないと。

 ポーションはいつものだからいいとして、傷跡が綺麗さっぱり消えるってのは新陳代謝がめいっぱい活性化してれば大丈夫そうかなー?

 コマーシャルとかでよくやってる化粧水とか乳液とか、パックとかその手のものを強力にすると効きそうな気がする。

 色は化粧水のイメージで透明かな。あれ、白いっけ? 良く分らないからクリーム状にして白でいっか。軟膏的なイメージもあるからその方が分かりやすい。

「皮膚の再生、シミ、そばかす、さらにはどんな傷跡でも綺麗に消える新世代のパックです♪」

 なぜかパックになったが気にしない。塗って乾いて剥がしたらそこには綺麗な素肌が! というイメージのせいだ。

 幸いというかなんというか、ポーションを試してたときにうっかり深くやり過ぎた傷が残ってたのでそこに塗ってみる。すぐに治癒したせいかひどい傷跡ではないのだが、試すにはちょうどいいだろう。

 塗ってみる。べたべた。乾いたら剥がせばいいのだが。

 これ、気になるなー。じっと見ているとなかなか乾かない。端の方をつついてしまう。

 少し剥がれたかと思ったら生乾きのせいで剥がれず切れてしまった。

 うずうず。きーにーなーるー。

 一人悶々としながら素数を数えてみたり九九を唱えてみたりして時間をやり過ごす。円周率は3.14159までしか覚えてない。いっそ計算してみようかと思ったら計算式が思い出せなかったので悩んでたらその間に乾いてたので結果オーライか?

 無駄に疲れつつ、パックを剥がしてみる。さんざんつついたが、傷は綺麗に消えてたので多分成功だろう。よかったよかった。

 これ、呪文から考えるにシミそばかすにも効くだろうから女性には需要があるかも知れないな。

 当分は傷跡とかの深刻な状態に使うの分を作るだけで精一杯だろうけど、傷跡消しの需要がなくなってお金に困ったら考えよう。



 あとは鏡か。

 こっちは作り方が分ってるので気楽だ。

 ガラスっぽい瓶を魔力で適当に砕いて平面になるように並べて再連結。板ガラスにする。

 そしてその上に魔力で溶かした銀を薄く塗る。スティック糊みたいなイメージで筒状にした銀を持って塗りつけるだけ。ガラスに触れた面が溶けて、塗れるようになっている。

 あっという間に完成。カップラーメンより手軽だ。

 出来を確かめるために手に取ったら側面のガラス部分で指をざっくり切った。

 ……そうだよな、枠に入ってないとそうなるな。

 遠い目をしつつ、残ってた銀で枠を作ってくっつける。蔦のようにして縁取ってみた。美的センスはあまりないがそれなりにうまくできたと思う。

 もうポーションを作るのも面倒だったのでさっさと魔法で怪我を治して寝ることにする。

 最近一日が濃いよなぁ。

 

魔法瓶の話は実話です。

破片でざりざりいってたのに、氷を入れてたので氷が砕けただけだと思って口に入れた馬鹿です。

飲み込まなくて良かった……。

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