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義肢

大騒ぎに巻き込んでしまったギルドの人に改めてお礼をお詫びを言ってヒールポーションの販売を頼む。

手数料も所定の2割と言うことですんなり決まった。

ポーションの作成方法を教える話なんかもあったので、今回の騒動の分は所定の手数料で考えると4240ルトという大金になるところだが銀貨3枚の3000ルトにまけてもらえた。

それでも露店とかで勝手に売らないと約束することになったので、レバタさん曰くギルド的にはかなりの大儲けらしい。

独占禁止法とかはなさそうだもんなー。

俺が個人的に使う分や他の村や都で売る分には干渉しないってことなので、こちらも手間が省けて助かる。

持ちつ持たれつってやつだな。


「レバタさん、なんか食って帰ろうぜ」

そろそろ空腹が限界だ。朝から大騒ぎだったもんな。

懐も温かいことだし、うまいものが食べたい。

モンスターの肉の値段でも解るが、うまいものはその分値が張る。

安いものもそれなりにうまいんだが、なんというかレベルが違うんだよな。

娯楽に溢れる世界じゃないからか食べ物の種類の多さはかなりのものがある。

食堂もその分多く、屋台っぽい店も軒を連ねてる。

レバタさんならうまい店を知っていそうだし。

「うむ。そうだな」

鷹揚に頷く姿も頼もしい。

楽しみだ!




レバタさんが選んだのは路地裏の小さな店だった。

そんなに繁盛してる感じもなく、教えてもらわなければまず来なかったような店だ。

「おっ、骨斧のレバタじゃないか。連れは見ない顔だが、パーティは解散か?」

常連らしく店のおっちゃんに話しかけられてる。

「骨斧?」

武器っぽいけど骨の斧ってなんか脆そうだ。斧ってのは重さも武器になるだろうに骨は軽くないか?

「知らないのか? 骨斧のレバタっていやあキュルボを一人で倒す豪傑じゃないか!」

ごめん、俺はキュルボも知らない。草原に出ないことだけは知ってるけど。あとで思い出そう。


でもレバタさんは本当に有名人だったらしい。

「レイシャードには来たばっかりなんだよ」

そもそもこの世界に来てまだ一ヶ月程度だったりする。

密度が濃すぎて何年もいるような気分になってたけど。

「そうなのか。この街に来てそうそうに骨斧とお近づきになれるなんて運のいい兄ちゃんだな!」

………そんなに恐れ多い人だったのか。見る目が変わりそうだ。

「おやじ。適当に見繕ってくれ。ハヤト、酒は」

渋いな、レバタさん。これが大人の貫禄だろうか。

「飲めないんで、水で」

レバタさんはビールっぽいものを頼んでた。

麦酒って言ってたから多分ビールなんだろう。真っ黒で飲むのに勇気がいりそうな色なんだが。

魔法で水が作れるからか? 果汁を混ぜた味付きの水とかは豊富なのに酒がまずそうなんだよなー。

レンが飲んでたのはワインくらいだったがえらく水っぽかった。

外国ではワインは子供でも水代わりに飲むってのを納得した。あれだけ水っぽかったらジュースと同じだろう。

こっちで見る酒はワインと麦酒くらいだから飲酒の楽しみはなさそうだ。

まあ、年齢足りないから当分飲まないが。

………お屠蘇で2日酔いくらいになるくらい弱いからではない、決して。ないったらない。

普通の屠蘇器に一杯だったのになぁ……。



出された食事は平べったいパンで煮込み肉を挟んでてある豪快なものだった。

ハンバーガーの巨大版って感じだったが、煮込み肉が美味しい。

獣臭さも血生臭さもなく、とろっとした舌触りなのに噛み応えもある。肉の線維が軟骨を長時間煮込んだような質感になってるというか。

味自体はそんなに付いてないのに肉汁のうまみと微かな塩味で十分美味い。噛めば噛むほど味が出てくるのに溶けて消えるようなのがもったいないくらいだ。

一緒に煮込んである野菜はさっぱりしてるから肉の味が染みこんでるのにあっさり食べれて肉とは違う食感がいい。

アルゴルゥグの肉も煮込みがうまいっていってたが、あれより遥かに美味い。癖になりそうだ。

パン自体は素朴としか言えないが、煮込み肉の邪魔をしないのがポイントなのだろう。

「ハヤトはこれからどうするつもりだ」

うっかり食事に夢中になってたのでレバタさんの話を聞き逃すところだった。

食事を待ってる間ずっと無言だったんでちょっと沈黙が痛かったんだが。

「んー。人間とか翼人に使える四肢再生用ポーションを作りたいんだけど。どうもうまくいきそうになくて悩んでる。なんかヒントない?」

「力人の儂に無茶をいう。ルイに相談した方がなんぼかましだろう」

そりゃそうか。

「そうするよ、ありがと」

「儂はもういい年だ。落ち着けば田舎に戻ろうと思ってる」

せっかく知り合いになったのに残念だ。

せいぜいが壮年ってところなのにもう引退か。体力気力共に辛そうな仕事ではあるが、まだまだやれそうなのにな。

「もうお別れか。残念だけど、いい余生になるといいな」

ちょっとムッとされた。余生はさすがに早すぎたか?

「えーっと、第2の人生?」

「もういい」

気難しいな。脱サラ…はもっと違うだろうし。

だが、この世界ではじめて親しくなった人とこうも早く別れることになるとは思わなかった。

この人達にもいろいろあったんだろうな。仲間を亡くしたとかもいってたし。

すでに別れる気になってたら続きがあった。

「儂の田舎は森が近くてな。モンスターがこのあたりより多くでる。力人の多い里だがそれだけに魔人や人間が身体を不自由にしたら生きづらい。再生薬が出来たらどれだけ助かるか。……頼む」

他人のために俺みたいな若造にも頭を下げられるのが格好いいな。

「努力する。出来るだけ早く、形にするよ」

これでがんばらなきゃ男じゃないよな。

まだ全然思いつかないが、やれば出来る! たぶん、きっと。





宿に戻ったらルイさんがノーマルヒーリングポーションを完成させてた。

魔力は残り少ないようで少しぐったりしてたが。

ルイさんは華奢だが表情が結構きつめで怖い印象があるのだが、好奇心が強く意外と話が合う。

再生用ポーションについて二人で盛り上がってたらいつの間にか力人二人はどっかにいってた。

つきあいきれなかったらしい。

「傷は薬草が効くんだから再生ならトカゲの丸焼きとか効きそうな気がするんだけどなー」

「やめてください。鱗が生えたらどうするんですか」

「鱗人になるな」

「そういう問題じゃありません」

鱗が生えても四肢が再生するならそれはそれでいいような気がする。鱗人でも差別はないし。

でも途中で種族が変わるのはさすがに嫌なものかな? 女の子とかは特に自分の美醜の基準は変えにくかろう。

でも本当に思いつかないんだよなー。ルイは否定するだけで提案してくれないし。

じとーっとみてたら一緒に悩んでくれた。やっぱ意外とお人好しだ。

「そうですね、力人の髪とか爪とかではどうでしょう」

力人なら再生するもんな。

「それだと力人になるんじゃない?」

「筋肉が付いて困ることはないでしょう」

女の子は困りそうだけど。と言うか、爪とか髪の毛飲むのはちょっと抵抗がある。成分の濃縮抽出だけど。

そもそも再生するってのが意外性抜群すぎてうまく抽出出来そうにないのが問題なんだよな。

四肢を失ったらそもそも義足とか義手つけるくらいしか思いつかないし。

義手とか義足が元の手足みたいに不自由なく自分の意志で動けば便利だなーとは思うけど。

「あれ? ポーションにこだわらなくてもいいのか」

「何か思いつきましたか」

身を乗り出して聞いてくれる。わくわくしてる感じが分かりやすいなー。

「義手をさあ、魔力使って身体に馴染ませて自分の意志で動くようにしたら良くない? 痛覚とかはないだろうし最初は見た目も微妙かも知れないけど、本人の魔力でじわじわと身体の一部として馴染ませていけば再生したのと同じように出来るかも」

ルイは首を捻ってる。解りにくいか?

「生えてこないから、接ぎ木して見ようって感じ?」

「簡単にいいますね」

呆れられたが、何事もやって見なきゃ解らない!

材料は普通の木とかじゃ身体に悪そうだよなー。何がいいだろう。

身体に近そうなのだと肉とかだがそれもなんか怖いよな。

魔力だけで腕の模型というか素が出来れば一番いいんだけど。

人間の身体の大部分は水だっていうし水最強論もあることだし、水に魔力を通して腕の素になるようがんばって見よう!



一人でテンションを上げてたらルイに見捨てられてた。

いろいろと素材になりそうなのを紙に列挙してくれてたが、その優しさがかえって辛いのは何でだろう。

生暖かい視線で見るのはやめてください……マジでへこむ。





ヒロインまで辿り着きませんでした…。


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