ACT.013 酒飲み少女と悪酔い少年
書くのが遅れましたが、この作品はフィクションです。
実際の団体や人物、その他もろもろは現実とは一切関係ありません。似ていたとしても他人の空似です。
ファーナから絵本を借り、その絵本を読んでいると時間はすでに夜を回ってしまっていた。
突然後ろから声をかけられた光一が振り返るとそこには一礼するメリアがいて、光一は「なんだ……」と心を落ち着かせた。
正直光一が後ろから声をかけられたときはかなりビックリしたのだ。
「メリアか。どうしたんだ?」
「そろそろ晩御飯の時間です。皆さん食堂の方へと集まっていますが……どうされますか?」
彼女の後ろの外を見ると確かにすでに真っ暗になってしまっている。
光一は真っ暗な部屋の中でずっと絵本を読んでいたということになるのだが、それはそれでちょっと怖い人かもしれない。
その為かどうかは判らないが、メリアは少し困り顔だ。
「本を読むときは蝋燭に火をともさなくては……目を傷めますよ?」
「えっ? あ、あぁそうだね」
暗闇の中で本を読むと目を悪くするのは何処の世界でも伝わっていることらしい。
光一はそんなメリアの言葉に頷きつつその場を立ち上がり、メリアの方を向いた。
「じゃあ行くか」
「えっと……私は、いいです」
「そ、そうか。じゃあ今から行くな」
メリアは一礼して光一の部屋から出て行く。光一もそんなメリアを追いかけるかのように部屋から出て、食堂への道を歩き出した。
「あぁ、コウイチさん。これからお食事ですか?」
「あ、あなたですか。はい。これからシエナやファーナとご飯です」
途中でであった兵士に声をかけられ、光一は当たり触りのない普通の返答を返す。
何気に光一は兵士達での噂の人。かなり知名度的にも高く、以外に気さくなためか兵士達の間でも光一の噂はいろんな意味で絶えない。
ある時には実はシエナかファーナのどちらかの恋人であるという根も葉もない噂が立ち込めた時もあった。
「いいですなぁ……私も二人に混ざって一緒に食事したいものです。おっと、急ぎでしたね。では」
「はい。またどこかで」
兵士は光一が急いでいるのを察してくれたのか話を早々に切り上げ、そのまま去ってしまう。
みんなを待たせている事を思い出した光一は食堂に急いだ。
食堂の席はいつも同じ。あの初めての食事会と同じ席で食す事になるので、いつも若干光一は緊張して食事をしている。
光一が食堂に着いたときには三人ともすでに席に座っていた。
「ご、ごめん。遅かったかな?」
「コウイチ、早く座るんだ。メリアの作ってくれた料理が冷めてしまう」
「うん、そうだね」
いつもの席に座り、目の前の料理を見た。
焼き魚と白米などを中心としたかなり和風の食事で、昼ご飯に中華が出た事を考えると、誰かが和風の方がよいといっているのかもしれない。
と言うのも、晩御飯は光一、シエナ、ファーナ、メリニアの四人が一同に返すのだが、いつも和風の食事だった。三人の少女のうち誰かが和風好きなのかもしれない。
特別嫌な事もないので、光一は聞いたことないのだが。
「「「「いただきます」」」」
日本と同じ食事のときの挨拶を皮切りにみんなが箸で食事をし始める。日本と違うのはあまり会話をしないということだろうか。
この世界では食事中の会話はマナー違反となるらしい。
静かにゆっくりと食べ、食べ物に感謝、料理人に感謝しながらご飯を食べていくのがマナーらしい。
だが、今日はシエナがそのマナーを犯した。あまり犯さなそうな人だったので光一は驚く。
「今日はどうしたんだ? いつもはちゃんと時間通りに食堂に来るのに……」
「えっ!? あ、うん。ファーナから借りた絵本がちょっと面白くてずっと読んでたんだよ」
「あれ読んでくれてるんですか」
「何か本を貸したのか?」
「はい。コウイチさんに勉強用にと言う事で『ラフィレイルの星』を貸したんです」
「そうか……ラフィレイルの星ならすぐにコウイチも字を読めるようになると思うぞ」
「コウイチさんはかなり読みには強いので、本当にすぐに読めるようになります。読めるようになったら、孫子とかまた貸しますよ」
「いやぁー……孫子や孔子はさすがに勘弁してもらいたいと思います……」
「シエナ殿、ファーナ殿、コウイチ殿、口を慎みください。礼儀にかけます」
「「「うっ、ごめんなさい」」」
メリニアに怒られたことによって三人はシュンとしながら食事を再開する。
まさかメリニアに怒られるとは思わなかった三人はさすがに落ち着いて食事を再開していた。若干失礼な事を言っている。
数十分すると三人は食事を終了させていた。
「ではいつものお酒タイムにはいるかな」
メリニアが取り出したのは一本の徳利。いつものお酒のようである。
シエナとファーナは苦笑いをしながら、光一は若干恐怖に頬を引きつらせながら彼女の持つ徳利を見つめていた。
無論理由は最初の時に一口で潰されたせいである。
「メリニアさんって本当にお酒が好きですよね……何か理由があるんですか?」
「理由……か。そうだな……あるといえばあるし、ないといえばないかもしれない」
ちょっと遠い目をしながら外に浮かぶ三日月を見つめるメリニア。そんな顔されれば「ある」といっているようなものだ。
だが、あまりにも心のこもった遠い目だったために光一も、シエナも、ファーナも聞くことは出来なかった。
光一はシエナとファーナの反応から彼女のその部分は二人も知らないということに気が付いた。
「まぁ、無いが。……んぐぅ……ゴク、ゴクゴク……」
「そうなんですか…………。…………って、ないならそんなにあるように見せかけた反応しないでくださいよ!!」
「あぁ~そんな話題聞いたことないと思ったらやっぱり嘘だったのか……」
「め、メリニアさん、あまりお戯れをなさらないでくださいよ。空気が悪くなってしまいます」
「あーすまん」
そういいながら徳利のお酒を飲み始めるメリニア。
正直光一から見ればその徳利はかなり大きく、そう簡単に一本開けられるようなものではないはずだが、すぐに一本開けてしまうのだろう。光一はそう思った。
シエナとファーナは苦笑いしたままメリニアの飲みっぷりを見ている。
「おっと、そういえばシエナ殿達はお酒がありませんなぁ……メリア、少し軽めの酒を持ってきてくれ」
『あ、判りました。少々お待ちください!』
どうやら近くにメリアが控えていたようで、メリニアの一言ですぐに取りに行ったようだ。
トテトテと廊下を走る音が響く。
メリアが戻ってきたとき持ってきた徳利はメリニアが持っている徳利の3分の1程度の大きさしかない。
三人の近くに器を置き、その器にトクトクと無色透明なお酒を注いでゆく。すぐに飲みたくなる衝動が光一に襲い掛かるが、メリニアのお酒の事を思い出して少しだけ躊躇してしまう。
それに気が付いたのかファーナはニコニコと笑った。
「大丈夫ですよコウイチさん。このお酒はそこまで強いお酒ではないので、いきなり倒れるということは無いと思います」
「そ、そうですか。判りました」
光一は恐る恐る器を手に取り、ゆっくりとお酒を口に含んだ。
まろやかにそれでいてスゥーとした舌触りが光一の口に広がる。はっきり言えば"おいしい"お酒であった。
「おいしい」
「そうですか? このお酒は私達ファーメルの名産品でもあるんですよ。だからおいしいって言って貰えると嬉しいです」
シエナとファーナもすでに飲んでいたようでメリアから二杯目を注いでもらう所だった。
光一もこのお酒ならと思い、もういっぱい貰おうとしたのだが
「すみません、この大きさの徳利では三人に二杯ずつは無理のようで……でも大丈夫です。もう一本持ってきてありますから」
「ほほー準備がいいなぁメリア」
「ありがとうございます、メリニア様」
微笑みながら光一の器に二本目の徳利のお酒を注ぐメリア。すでにこの時、何故か光一の中で危険信号が鳴り響いていた。
何故と思うのだが、器に鼻を近づけた瞬間に光一は全てを察した。
(ま、まさかこのお酒……すごくアルコール度数高いんじゃないのか……?)
だが、ファーナを見ると嬉しそうに笑顔、シエナを見るとおいしそうにお酒を飲みながら光一を気にし、メリニアは一寸笑っている。
光一はプルプルと手を振るわせた。
しかしみんなの期待を背負った光一はその器を口にし、中のお酒を口に含んだ。
(あ、あとは飲み干せば……)
「ゴクン……」
バタリ。やはり倒れた光一だった……。
★★★★★
「こ、コウイチ様!?」
「……メリア、コウイチに何を飲ませたんだ?」
「えっと……先ほどと同じものを飲んでいただいたはずなんですけど……」
「どれ、私に貸してみろ。ペロ……これは……さすがに同じものではないぞ? 私の飲んでいるものよりは低いものの、それでもかなり強いぞ?」
「えぇ!?」
メリアは驚いて徳利の所を見る。容器は間違いなく同じものだが、中身は同じものではないようだ。
と言うことは誰かが間違えたのか、故意に入れ替えたのか。とにかくメリアは光一のことがかなり心配だった。
「え、えっと……どうしましょう!?」
「前の時と同じように兵士の方に連れて行ってもらいましょう」
ファーナは前のときよりもかなり落ち着いているようで、すぐに指示を出そうとする。だが、そんな四人の少女達を驚かせることが起きる。
どちらかといえば、起きたのは光一。
お酒に潰されたはずなのに急にムクリと上半身をおこし、無表情な目を器に注いでいる。
「あ、あのぅ……コウイチ様? 大丈夫ですか……?」
「……えぇ大丈夫ですよ。それよりも、"僕"を心配する貴方は誰ですか?」
さわやかな笑顔。光一が絶対に見せることがなさそうなほどキラキラとした笑顔と、いつもは使わない一人称。
☆☆☆☆☆
「いてて……」
頭を押さえながら光一が起きると、そこは自分の部屋だった。
空はすでに白みだしており、時間にすれば朝6時位だろうかと光一は予想する。
さらに何故かすごく頭が痛む。光一は痛む頭を押さえながら布団から出て、廊下へと足を運んだ。
そこにはちょうど同じように頭を押さえたメリアが現われて、彼女は少し顔を赤くしながら挨拶を交わしてくる。
「お、おはようございます。コウイチ様……」
「うん、おはよう。それよりもメリアも頭が痛いのか? 昨日何かあったとしか思えないんだが……」
「これからは絶対にコウイチ様には強めのお酒を飲ませません……!!!」
「へっ?」
頭を抑え、頬を染めたメリアはそう決心するのだった。
間に合った!
最近は少し忙しかったために二つ上げるのがつらかったのですが、今日は上げる事が出来ました。皆さんにはお詫びいたします。
次から少しシリアス路線、新たな仲間が加わる話へと移ります。