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ヴェルガの牙  作者: ラグナウルフ
DATA01 異世界落下編
10/21

ACT.009 異世界での一日

 光一が目を覚ましたとき、空はすでに茜色に輝いていた。

「ちょっ! 嘘ー!?」

 お酒を飲んでから一切記憶の無い光一。逆に一口で意識を飛ばすお酒を飲んだのだからアル中を心配するが、その心配は杞憂のようだ。

 ホッと胸を一撫でし、光一は部屋を見回した。

 当然ながら部屋には光一以外誰もいない。和室のような部屋で、襖で二方を固められており、もう一方は壁、もう一方は障子であった。

 障子からは赤い光が紙越しに部屋にもれてきている。

 その他には畳しかない、いうなれば何も無い部屋に光一は寝ていた。無論布団は敷かれ、その上で寝ている。

「……誰かが俺を運んでくれたんだな……悪いことしたかな?」

 お酒を飲んで潰れてしまった事を覚えている光一は少々その運んでくれた人物に罪悪感を感じていたが、唐突に考えるのをやめた。

 相手も判らないのに謝るなんて若干馬鹿らしく思えたのだ。

(その相手と会った時にお礼でも言っておけば良いかな)

 あまりにも適当な考えだが、実際言ってしまえばそちらのほうが正解なので問題は無い。

 光一は立ち上がり、襖のほうへと歩いた。

「このままじっとしているのも面白くないし、とりあえず探検でもしようかな」

 いつまでも子供気分の光一であった。

 だが、襖を開けた瞬間に向こうからも誰か着ていたようで、出た瞬間に相手の頭をゴチッと胸にぶつけてしまう。

 相手は女性だったようで、頭同士でぶつかるということは無かったが、なんとなく胸でぶつかるのは駄目な気がした。(出会い的に)

 光一はあわてながらその女性に手を伸ばす。

「だ、大丈夫ですか!? す、すいません……ちょっと前方不注意でした」

「いえいえ……き、きにしないでくださ~い……」

 頭を押さえながら目をうるうるとさせる女性、いや、少女か。見た目は10代だ。

 短い茶髪をした子で、瞳は大きくまるで猫のようにペット的な感覚を受ける。服はこの世界の私服のような服の飢えから白い純白のエプロンを着けていた。

 そして下着の色は水色。

 扱けたときに足を開いてこけたせいでスカートだった彼女はそのまま光一に下着を見せるような体制のままなのだ。

 光一は顔を赤くさせながら「とりあえず立ったら?」と手を伸ばす。

「そ、そうですね。ありがとうございます」

 そのまま光一の手をとって立ち上がる少女。何気に女の子とタッチするのは初めてな光一は顔を真っ赤にさせた。

 シエナは額と額だったのでノーカウントのようだ。

(お、女の子の手ってあんなに柔らかいんだな……)

 と変体チックなことを考える光一。彼も男の子なので仕方ないといえば仕方ない。

 少女は立ち上がると衣服の乱れた所を少々直し、ピシッとさせて光一の前に立った。

「私の名前はメリア=アストゥスって言います! コウイチ様のお世話係として派遣されました! よろしくお願いします!!」

 約90°の角度でキッチリ礼するメリア。あまりの展開に鳩が豆鉄砲食らったかのような表情をする光一。

 他人が見ればあまりにもシュールな光景に笑い出していたかもしれない。

「えっと、お世話係って言うのはどういうこと?」

「はい。コウイチ様は本日からこのファーメルのお客様という扱いになりまして……ファーメルではお客様に対しては一人に最低一人、手伝いや部屋の掃除などをするお世話係と呼ばれる人がつきます。コウイチ様の場合はそれが私ということになりました」

「そ、そうなんだ……」

「まだまだいたらないところも多いかと思われますが、よろしくお願いします!!」

 また90°礼。あまりの急展開についていけない光一はため息を吐きながら目の前のメリアを見る。

 背の高さは光一の胸くらいまでしかない。もしかすると十代の前半ぐらいなのかもしれない。

 メリアはとても可愛く、そのひたむきな情熱さは光一も好印象を受けるほどにすばらしいものであった。ただ、若干まじめすぎるのはあるが。

「じゃあヨロシクね。メリア……ちゃん」

「ちゃ、ちゃん!? わ、私のことは呼び捨てでかまいませんよ!?」

 顔を真っ赤にさせてそういうメリアが可愛くって光一はなんとなく虐めてみたいと思ってしまう。

 だが、十代前半の子に手を出したら彼の世界では犯罪だ。中盤でも犯罪だが。

「でもいいんじゃないかな? メリアちゃんで」

「あ、あぅぅ」

 顔を真っ赤にさせて俯いてしまうメリア。世界が茜色なために判りにくいが、耳まで真っ赤になっているのが光一にはわかった。

 さすがに虐めすぎたか?と光一は心配になったが、メリアは真っ赤な顔を上にあげ、光一の顔を見てニッコリと笑った。

 その顔はまだ赤いが、とてもすがすがしそうな笑顔。

 光一はふっと小さく微笑んで、そのメリアを見ていた。

 はたから見るとまるで恋人のような二人だが、残念ながら今この場に二人以外の人物は存在していない。

「えっと……コウイチ様、晩御飯の仕度が出来ているので食堂まで来ていただけますか? シエナ様、ファーナ様、メリニア様がお待ちです」

 そう用件だけ言うとメリアは顔を真っ赤にさせたまま走り出してしまう。よほど恥ずかしかったようだ。

 メリアが角を曲がり、見えなくなった所で光一はあることに気がついた。

「ちょっ!! メリア待って!! 俺食堂の場所わからないんだけど!!」

 その後メリアに追いついた光一は難なく食堂へと行くことが出来た。

 

 

「遅いぞコウイチ」

「ご、ごめん。食堂の場所がわからなかったんだ」

 和風の館では食堂も洋風の食堂ではなく、どうやら普通の和室のような場所に大きな机がおいてある場所の事を指すようである。

 いつもと変わらない部屋のように思えるが、甲冑などの置物が置いてあり、それらはかなり高価なものだと判る。うかつに触らない方が良い。

 黒い机の上にはまるで旅館の料理のような食事がずらりと並んでいる。この辺もやはり和風だ。

 もしかしたらファーメルは日本に近い国なのかもしれない。そう感じる光一だった。

 ただ、シエナやファーナ、メリニアが着ている服のデザインはどう考えても洋風で、そこだけよく判らない光一でもあった。

 食堂ではすでに三人が座っており、光一も空いている席に腰を下ろす。

 まだまだ机の長さは足りている(後20~30人くらいは座れる)が、食べるのはどうやら四人だけのようである。

「えっと……」

 光一の席は机の横の辺の一箇所。そして向かい合うようにファーナが座り、シエナの隣にメリニアとファーナが座っている。

 まるで光一に対して全員が向かい合うように座っている。

「じゃあいただきましょうか」

 ファーナの一言によって三人は手を合わせた。

「「「いただきます」」」

「い、いただきます……」

 とりあえず箸を持って白米を口に運んだ。その瞬間、今まで食べたことの無いようなおいしさに目を光らせる光一。

(な、なんだこれ……これ本当に米なのか? 別の食材かなにかで作ったんじゃないのかってぐらいに美味いぞ!?)

「とりあえず気に入っていただけた用で何よりです」

「えっ?」

「コウイチは顔に出やすいな」

 ファーナの一言で意識を元に戻す光一。メリニアに若干笑われながらも他のおかずにも手を出した。

 豚肉を焼いたものや野菜、その他見たことも無いものまでさまざまな料理を口にした。その度に光一の意識は飛びそうになる。

「それよりもコウイチさん。お世話係の子は気に入ってくれました?」

「え? あ、はい。メリアちゃんですよね? すっごい良い子ですね」

「実はこの料理、そのメリアが作ってくれたものなのだ」

「彼女がこれを……ですか」

 シエナのその言葉には驚きを隠せない光一。

「もともとメリアはこの館の料理長をしていたんだが、とりあえず経験をつませようという話でな……すまないがコウイチのお世話係とさせてもらった」

「まぁ、メリアちゃんも緊張はしていましたが拒みませんでしたし、大丈夫だと思いますけど……」

(あ、あれ? 何かファーナさんの笑顔がむっちゃくちゃ怖いんですけど……)

「メリアちゃんに手を出したら……ダメデスヨ?」

 この時のコウイチはまるで首を振るだけの人形に成り下がったかのように必死に首を振っていた。

 危うく首が取れそうになったとはその後の本人談である。

「それとコウイチはいきなり王というのも問題があるから、今のところファーメルのお客様ということにしてある」

「そうでした。それを伝えるのを忘れていました。コウイチさんは明日からこの館ですごして貰います。それで私や姉さん、メリニアさんが貴方を王としてふさわしい人物かどうかを判断します」

「まぁ、試験のようなものだ。気にせずがんばれ」

 と、あまり心のこもっていないような応援を受けた光一。

 正直光一的にはファーナに脅された辺りから全く料理を楽しめていなかったのだが、これからの事について考えているとネガティブな考えをグルグルと回ってしまう。

「ネガティブな考えをしてしまうのは体が疲れているせいかもしれない」

 光一は食事をした後、自らの部屋ということになった先ほどの部屋へと戻ってきていた。相変わらず何も無い部屋である。

「そういえばこの世界にもお風呂はあるのかな? さすがに汗で服がべとべとだ……しかもボロボロだし」

 二、三日寝ていたのと車に轢かれたせいもあり、さすがに着替えやお風呂の恋しい。

 とちょうどよいタイミングでメリアが部屋に入ってきた。

「シエナ様から変えの服を渡されたのでもって着ました。お召し物をお代えいたしましょうか?」

 そんな羞恥プレイはしたくないと言う事で着替えは自分で出来ると言う光一。

 若干もったいなかったかなとおもう心はある。

「それよりもお風呂ってある?」

「お風呂ですか? ありますけど……この館のお風呂は基本的に上の方しか……あぁ、お客様であるコウイチ様なら問題ないでしょう」

「よかった。ちょっとお風呂に入りたいんだけど、大丈夫かな?」

「良いですよ。私が案内します」

 久しぶりにお風呂に入れるということでウキウキしてしまう。

 日本人はお風呂好きなので当たり前といえば当たり前の反応だが、メリアからは変な目で見られてしまった。

 気にせずお風呂の着替え場所で服を脱ぎ、出てみるとそこは確かにお風呂であった。しかも露天風呂。

 温泉などでしか見たこと無い露天風呂にテンションがあがる光一。

「いやっふーい!!」

 ザバーンと温泉に飛び込む。行儀は悪いものの、誰もいないなら問題はあるまい。

「………………」

 誰もいないなら……問題は無いのだが……。

「…………えっ?」

「…………な、なんでコウイチさんが……」

 お風呂には、当たり前だが裸でお風呂に入るファーナがいましたとさ。

戦争小説なのにまだ一切戦争が出ていない上になぜこんなにもラブコメ……

まぁ、物語のテーマは「戦争の悲惨さと愛」なので問題は無いと思います。

あれ?テーマって先に教えちゃって大丈夫なんでしょうかね?

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