第2話 妖精の仲間
「お お母様…」
だ だめだ、うわ言を言う様になっしまっている、ええい!恥ずかしがってる場合じゃねぇ!!
「光あふるる所に命の導きを」
そのキャラの定番のセリフを唱え妖精に手をかざす
「ハイヒーリング」
やさしいが力強い光が森を大きく照らす、みるみるうちに妖精の顔色が良くなっていく。
すると妖精は俺を見て
「お母様…?」
と一言つぶやくと気を失う。
一瞬死んでしまったのでは!?
と思ってあせったが、どうやら疲労から眠ってしまった様だ。
今変わっているこのキャラはシルファと言うエルフィンと言う種族のキャラだがまぁファンタジー作品で言うエルフみたいな物だ。
シルファは魂は見れないが肉体の情報を見るのはプロだから感覚で分かった。
…しかし妖精を治せたのは良いがどうにもこのキャラは、居心地が悪い。
なにせこのキャラは女の子だ。
年齢は500才くらいで不老不死の種族だが見た目は15~16才くらいの少女にしか見えない。
そして魔法のエキスパート。
治癒魔法だけでなく攻撃魔法もマスタークラスだ。
デュランダルとは別の意味でチートキャラだ。
只このキャラはゲーム会社からの依頼でゲームのNPCキャラとして設定通りに俺がデザインして制作したキャラだ。
設定上は失われたエルフの王国の王女で行方不明の妹を探して旅をする冒険者で、その尋常でない魔法の力で魔賢人と呼ばれて讃えられていると言う設定だ。
ゲームはオンラインMMOで、そこではシルファはプレイヤーにクエストを出したり手助けをしたりしてくれるが、その強さゆえに仲間には出来ない程バランスが悪い飛び抜けた実力を持つチートキャラだ。
その分シグレアキラは、まだ10話くらいしか構想をねってないのでシルファとデュランダル程能力がカンストしておらず少年誌で成長させるのを見せるには持ってこいのキャラである。
しかし俺の作った漫画の作品以外のキャラになれるのも驚きだ。
しかも性別が違ってもなれるんかい!!
…いや夢なんてそんなもんかな理不尽極まり無いもんだしな。
確かレム睡眠の間に脳が情報をデフラグの様に調整をしている時の浅い睡眠状態の時に見るのが夢だった…かな?
こんな自分のキャラになっちまう様な恥ずかしい事も起きるんだろう。
しかし面白い体験だったな。
夢なんてすっかり忘れちまってるもんだが今回の体験は、とても興味深い物だった。自分の作品のキャラになるなんて滅多に出来るもんじゃないだろうし、さっきの生々しい戦闘なんかの体験が作品に活かせると言う物だ。
さて目が覚めるまでもう少しこの世界を堪能しとくかな?
…とその前にシルファからアキラに体を戻さないと、なんだか落ち着かない。
胸が邪魔で歩きづらいし…その…股間のアレがないと、どうにも落ち着かないのだ。しかしどうやってアキラに戻るか…とりあえず俺はアキラに、戻れ!と強く念じてみた。
すると、フッと体の感覚が変わったかと思うと、体はアキラに戻っていた。
「あ、そうだ馬鹿だな俺はせっかくの異世界(?)なんだし元の俺、桜田誉29才の身体に戻れば良いんじゃね?」
俺は同じ様に自分の元の身体をイメージし強く念じた…しかし、どう言う訳か元の自分の身体には戻れなかった。
「たく、なんなんだよな元の俺の身体で、この貴重な体験を体感したかったのに夢サービス悪すぎだろ!」
俺は、この時はまだこの事態がとんでもない事だと言う事にまったく気がついていなかった。
今思えば緊急事態に、気づけなかった自分の愚かさに心の底から脳天気だったと思う…
そう、あれから数時間経過し、辺りは薄暗くなって来ている。俺は一向に夢から醒めないでいた。
初めは、その内、目が醒めるだろうと軽く考えて、この自然豊かな森林を満喫していたんだが…
どこまで行っても森しかなくアキラが全力で走っても一向に森から抜けられない。
途中巨大な熊や魔物と戦闘になったがアキラの敵ではなく素手で負かして追い払えた。
しかしこの世界は森しか無いんか!?
日が沈み始めてしまっている。
マズイこのままでは野宿決定である。
いくらなんでも現代人の俺が、こんな森の中で野宿なんて出来ようはずもない。
林間学校でだって設置されてたテントで寝泊まり出来ていたのだ。
地べたで寝るなんて、とても出来そうにない。
すると自分がシグレアキラだと言う事を思い出した。
「そうだ、まだネームにもしてなかったけど構想してたアキラの設定だと衛星軌道上に自分の宇宙船を停泊していて、そこに星でGETしたアイテムなんかを貨物室に転送出来たはず、それに宇宙船に収納している反重力エアバイクやキャンプセットなんかも地上に転送出来たはずじゃ!?」
そんなアキラの設定を思い出した俺はポケットからスマホ位の大きさのリモコンを取り出した。
「あ、あったよ!コレコレ!!これならエアバイクとキャンプセットを取り寄せる事が出来るはずだろ!!」
ん?いや待てよアキラの世界
「ソウルブレイカー」
は、星を巡り数々の冒険を繰り広げるスペースファンタジー作品だ。自分の宇宙船に転移出来れば地上でキャンプなんかしなくてすむんじゃないか!?俺はそう思ってリモコンで自分を船に転送させようとする…しかし
「ピーエラーです。その動作は認められません」
と、冷たい機械音が頭に響いた。
「なんでやねん!?」
俺は諦めきれず何度も転移ボタンを押したが結局自らが船に行く事は出来ずに諦めざるおえなかった…
「クソ!分かったよもぉ!ならエアバイクとキャンプセット転移!!」
すると
「ピピッ認証しました。転移座標確認。転移いたします。」
と、相変わらず機械的な音声を発すると共に空間にバイクとキャンプ用品一式が転移された。
とりあえず船に戻れない事は棚上げしつつ俺はエアバイクとキャンプセット一式を確認した。
バイクは反重力仕様で大きめの大型スクーター位の大きさで2人乗り用の近未来仕様のサイバーなバイクだ
。太陽光で動くエコでガス欠の無い永久機関を持つ高性能なバイクでバリアーも貼れて小口径の銃弾くらいの攻撃なら跳ね返せる、かなり凄い設定のエアバイクだ。
アキラの世界では一般的な乗り物である。ちなみにアキラのバイクは中古のバイクをレストアしたチェーンナップされた違法な物で警察に見つかるとマズイ代物である。アキラは体力があるけど流石に、この世界を徒歩では動きづらいし、こいつがあればかなり助かるよな…
そう俺は今いる、この世界は現実の俺が見ている夢だと初めは思っていたのだ。
しかし時が経つにつれ、この自然のあまりのリアルさと、体で感じる空気や光、風などの体感から、これは夢と言うには、あまりにもリアルすぎる…もしかして俺は異世界に転移してしまうと言う、アレ…なのか!?
…と初めは冗談半分で笑っていたのだが、懐で眠る妖精の吐息と温かさ…リアルすぎる…この世界のあり様に本気で今は焦っている所だった。
まだ半信半疑ではあるが、もしも異世界に転移してしまったのなら、とにかく生き延びなければならない。
その為に役に立てる物は、なんでも利用して生活をしなけば、野垂れ死んでしまう。とにかく今は夢が覚める事を祈って生きる為に生活を、なんとかしていくしかない。船に行けないのは残念だが船には食料があるし、それらは転移出来そうなので、飢え死にだけは、当分は大丈夫そうだ。
しかし船に積んである食料も無尽蔵では無い。
一ヶ月くらいは大丈夫そうだが、その間に対策を練らなければならない…一ヶ月?
俺は、こんな所に一ヶ月も居なきゃいけないのか!?
アニメの配信見逃してんだろ!?戻れなかったら発売日を楽しみにしてたゲームやラノベも見れないじゃんか!?
…い いやそれどころではない家族も心配してしまうだろ!
…いや漫画家になるって言って反対されて両親とは10年以上連絡取り合ってなかったっけ…友人も…そういや漫画が忙しくて、ここ数年は、まともに喋ってなかったっけな…考えてみたら俺が居なくなっても誰が心配してくれんだ!?
…俺は、あまりに寂しい現状に心から、へこんでしまった。そんな事を考えてると懐が、モゾモゾと動き出した。
「う…うーん…あれ?ここは…どこ?」
ピョコッと可愛らしく俺のコートの内側から顔を覗かせた妖精の少女は辺りをキョロキョロしてから、俺の懐に入っている事に気ずき
「きゃああ!!なにすんのよ!!エロ人間!!」
勢い良く俺を蹴飛ばすと、そのまま5mくらい上空に逃げ出した。
「はは良かった元気になったみてーだな。ずっと寝続けてるからよケガは治したけど大丈夫かなって気になってたんだよ元気になったんなら良かったぜ」
「…え!?そ そうよ確か私はアークデーモンに魔法で…あ あれ!?傷が…傷が治ってる!?」
「おう!外傷は、もう治したはずだぜ?痛みもないだろ?お前の魂は安定して見えるしよ完治してるはずだ」
「え?ちょ ちょっと待って、まさか、あなたが治してくれたの!?」
「ああ俺が…あ いや、俺の友達が治したって言うのが正しいか…」
「へ?ど どう言う事?その人は?ここに居るの?」
うーん、うまく説明出来ん
「今はちょっと会えないんだけど、そのな事情があってな…」
「ど どう言う事?私がアークデーモンに受けた魔法は黒炎魔法で、その威力は凄まじくて即死は防御魔法で防いだけど、アークデーモンの魔法は一種の呪いに近いのよ?直撃は避けられても、かすっただけで身体が焼き尽くされて絶命するのに私これは…完全に治ってるわよ…そんな凄い治癒士なんて聞いた事無いわよ?王宮魔術師レベルでも私のダメージは治せないはずよ…なのになんの後遺症も無いなんて、その友達きっと物凄い使い手よ、ぜひお会いしたいわ特に命を救ってくれたお礼がしたいわよ」
「え?只のハイヒーリングだぞ?大した事、無いだろ?」
「大ありよ!!アークデーモンの黒炎のダメージを治せる治癒士なんて聞いた事ないんだから!!ぜひお会いして、ご享受願いたいわよ!!」
「え?そうなの?」
この世界では、あの程度のヒールも珍しいのか?
「は?何言ってるよ治癒士って珍しい職業なのよ!?ましてや高レベルの治癒士なんて滅多にいないのよ?低レベルでも治癒が出来るだけでも生活には、困らないくらいの稼ぎになるって聞くわ!」
「そ そうなのか…」
なら生活に困ったらシルファになって稼いで暮らすのも手かな…
「そ そう言えば、あのアークデーモンは、どうしたの!?気配を感じ無いけど、あなたが私を連れて逃げてくれたの!?そう言えば、あなた私が意識を失う前に私を受け止めてくれた人間の子よね!?」
「子って俺は、そんなガキじゃねぇぞ?」
「え?どう見ても14〜15才くらいでしょ?もうちょっと上なの?」
「あ…」
しまったつい29才と言いかけた。そうだ今の姿はシグレアキラ…見た目は中学生くらいのガキだった…
「ま まぁよ子供扱いすんなって事だよ、アークデーモンも俺が倒したんだしな」
「はぁ?そんな訳無いでしょ!あいつは12魔王って呼ばれるくらいの高位デーモンなのよ?只の人間が倒せる訳無いじゃない!!」
ああ、そうだった、ありゃデュランダルが倒したんだったわ。
俺が奴になって倒したから自分が倒したって思っちまったけど正確にはあいつが勝手に暴れて倒したんだった…
ま まぁ俺が倒した事には違いないんだが…ああ、もう面倒くさい
「お 俺も戦ったって事だよ正確には仲間が倒しちまったんだけどな」
「え!?もしかして治癒士の方が倒してくれたの!?凄い…もしかして魔法使いでもあるの!?」
「い いや、そいつはまた別のやつで…」
「はぁ?どういう事なの!?ちゃんと説明しなさい!!」
「ああ!もういいじゃんか!助かったんだからよ!細かい事気にすんなっての!!」
「気になるわよ!!」
俺と妖精は、そんな押し問答をしばらく
繰り返した後シルファとデュランダルには必ず会わせると約束をして納得してもらった。
「…とりあえず、悪魔から助けてくれて、ありがとう本当に感謝するわ。あんまり役に立ってなかったとしても、あなたも戦ってくれたみたいだしね」
うーむ納得いかんが、これ以上説明するのも面倒くさいし俺の現状を理解出来るとも思えないし、まぁこれで良しとするか…
「気にすんなって、でもなんであんな強そうな奴と戦ってたんだ?」
「あなたには関係ないわ」
「いや俺も結構死にかけたんだぞ?そりゃないだろ?」
「…そ そうだね、あなたも命がけで私を救ってくれたみたいだしね…ごめんなさい」
あれ?この子、意外と素直なのか?
「…私はアークデーモンに故郷を滅ぼされたの…それに故郷の宝を奴から奪い返す為に旅を続けてたの…」
いきなり重い話来たな、こりゃ聞かない方が良かったか…
「50年探して、ようやく、あのアークデーモンが、この森に居るって突き止めたのよ…準備を整えて奴に挑んだけど、はっきり言ってまったく敵わなかったわ…死を覚悟したんだけど、あなた達に救われたのね…本当に一族の仇も取れずに犬死する所だったわ…感謝してるよ…心から…」
そう言うと妖精の女の子は柔らかい優しい表情になった。
本来彼女は、こう言った表情を見せる優しい子なのかも知れないと、その笑顔を見て俺は感じていた。
「ま まぁよ何回も言ってるけど気にするなって、たまたま俺…俺達が、この森に来て、たまたま助けただけだしな偶然通りかからなかったら助けらんなかったしな、だから気にする事無いからよ」
そう俺が言うと彼女は、またやさしい柔らかい笑顔で
「たまたま通りかかっただけで命をかけるの?」
と、優しく微笑んだ。妖精の女の子なのに、その笑顔に年甲斐もなくドキっとしてしまった。
「だから、この話は、もぉいいだろ!お互い命は助かったんだしWINWINって事で、お、し、ま、い!」
妖精はクスッと笑い
「ウィン…何?まぁ了解よ。あ そう言えば私まだ名前言ってなかったわね」
そういや俺も名乗ってなかったな
「私はウリシュクよ。よろしくね」
「あ ああ俺はシグレアキラだ。よろしくな」
「うん!よろしくシグレ!!」
なんだか満足そうに妖精ウリシュクは俺の回りを飛び回っている
「じゃとりあえず飯にすっか…って、そういや妖精って人間の食い物食べられるのか?」
「失礼ね!人族と同じ食べ物が食べられるわよ!そう言えば、お昼から何も食べて無かったわ、お腹空いたわね」
まぁ決意して、あんな化け物と戦おうってんだ食欲も出ないわな…
「それじゃ携帯食だけど食うか?」
「けいたいしょく?」
「ああカップラーメンとかビスケットくらいしかねーけど」
そう言うと俺は転移して来たキャンプセットを広げバーベキューセットに火を付けてお湯を沸かした。テントはワンタッチで広がり、すぐにテントとして使える一品だ。わりかし中は広い。念の為、熊とか魔物も、この森には居るのでフィールド装置をエアバイクから発生させテント全体を包みこませた。
これは一種のバリアーで、さっきの熊や魔物程度なら、かなりの防御力で防いでくれるはずだ。攻撃があれば警報が鳴るので、その時は、また追い払えば良いだけだ。
「何これ?テントは分かるけど、この機械は何?見た事ないよ?」
「ああ、こいつはエアバイクって言って地上を、ちょと浮いて走行出来んだ。俺がチェーンしたから結構な性能だぞ?」
「浮いて?こんな大きな物が?ちょっと信じられないわね」
「この世界には、こんな乗り物は無いのか?」
「ある訳ないわ聞いた事も無いよ、あったとしても、それは先代文明の遺跡、オーパーツって言われる物じゃないかしら?魔道具のたぐいかしらね?」
なる程この世界には機械のたぐいは、珍しい物なのかな?
「それは何をしているの?」
カップラーメンに、お湯をそそぐのを見てウリシュクは不思議そうな顔をした。
「え?いやカップラーメン作ってるんだけど、この世界には…もしかして…やっぱり無い?」
「カップ…メン?何それ?」
…ちょっと頭を整理してみる。
ここは夢であって欲しいが、どうやらもしかして異世界なのかも知れない。
とすると定番バリバリのド、ファンタジーな世界!?それとも俺らの現実世界に近かったり?もしくは、アキラの舞台の近未来的なSFファンタジーな世界?
とりあえず、広大な森林、見た事無いような魔物やゲームに登場する様なアークデーモン、しかし現実世界にも居るヒグマ程の3m位の熊も居た。どっちだ?
「え!?嘘!?お湯入れただけで凄い、いい匂いがするわ!?な 何これ!?」
うんカップメンの無い世界、つまりSFと現実世界では無さそうだ。
次回の更新は3月15日の日曜日になります。よろしくお願いします!
(^^)(お昼頃です)




