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ハルトⅡ -眠る帝国と、避難船メティス-  作者: ユウギリ
【第2章】:再生と重力
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第9話


 突破しただけじゃ、勝てない。

 でも突破したことで、勝ち筋が“つながった”。

 ヘルメス:敵旗艦群の外縁、上方優位。

 アイギス:重力圧から解放、陣形を立て直し中。


『排熱ポート、開きます。……0.003秒』


 メティスが言う。


『視覚補助、最大。赤点同期――開始』


 世界が遅くなる。

 敵艦の装甲が“溶ける”。

 再生の瞬間。

 そのときだけ。

 小さな開口。

 一筋の黒。


『今』


 俺は撃った。

 一点。

 閃光。

 衝撃。

 そして――

 戻らない。

 再生が、止まった。

 敵艦の装甲が途中で“固まる”。

 繋がりかけた部分が、裂けたままになる。


「……止まった!」

『再生制御が乱れました。楔が刺さっています』


 メティスの声が、わずかに熱い。

 俺は続けて撃った。

 0.003秒を、連鎖させる。

 一隻。

 二隻。

 三隻。

 再生が止まるたび、隊列が崩れる。

 敵の動きが――揃わなくなる。

 そのとき、通信が入った。


『敵の通信、断片を捕捉しました』


 メティスが言う。


『……言語は解析済み。しかし、構文が“会話”ではない』

「会話じゃない?」

『ログのようです。同期指令。……集合体の更新命令に近い』


 背中が冷たくなる。

 敵は“国家”というより――

 “システム”に見える。


『ハルト。今は考えないでください』


 メティスが言う。


『あなたの役目は“今の一秒”です』

「……分かった」


 俺は頷く。

 アイギスの通信が入った。


『ハルト、よくやった。盾が息を吹き返した』


 艦長の声は、相変わらず硬い。


『次は“旗艦”だ。あれを落とせば、宙域は守れる』


 旗艦。

 敵の芯。

 でも――

 そこにはきっと、もっと理不尽がある。


『警告。旗艦周辺、歪曲の屈折率が上昇』


 メティスが言う。


『嘘が濃い。……そして再生も、より深い』

「上等」


 俺は照準を握り直す。

 折れない航路は、作った。

 あとは――決める。




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