第9話
突破しただけじゃ、勝てない。
でも突破したことで、勝ち筋が“つながった”。
ヘルメス:敵旗艦群の外縁、上方優位。
アイギス:重力圧から解放、陣形を立て直し中。
『排熱ポート、開きます。……0.003秒』
メティスが言う。
『視覚補助、最大。赤点同期――開始』
世界が遅くなる。
敵艦の装甲が“溶ける”。
再生の瞬間。
そのときだけ。
小さな開口。
一筋の黒。
『今』
俺は撃った。
一点。
閃光。
衝撃。
そして――
戻らない。
再生が、止まった。
敵艦の装甲が途中で“固まる”。
繋がりかけた部分が、裂けたままになる。
「……止まった!」
『再生制御が乱れました。楔が刺さっています』
メティスの声が、わずかに熱い。
俺は続けて撃った。
0.003秒を、連鎖させる。
一隻。
二隻。
三隻。
再生が止まるたび、隊列が崩れる。
敵の動きが――揃わなくなる。
そのとき、通信が入った。
『敵の通信、断片を捕捉しました』
メティスが言う。
『……言語は解析済み。しかし、構文が“会話”ではない』
「会話じゃない?」
『ログのようです。同期指令。……集合体の更新命令に近い』
背中が冷たくなる。
敵は“国家”というより――
“システム”に見える。
『ハルト。今は考えないでください』
メティスが言う。
『あなたの役目は“今の一秒”です』
「……分かった」
俺は頷く。
アイギスの通信が入った。
『ハルト、よくやった。盾が息を吹き返した』
艦長の声は、相変わらず硬い。
『次は“旗艦”だ。あれを落とせば、宙域は守れる』
旗艦。
敵の芯。
でも――
そこにはきっと、もっと理不尽がある。
『警告。旗艦周辺、歪曲の屈折率が上昇』
メティスが言う。
『嘘が濃い。……そして再生も、より深い』
「上等」
俺は照準を握り直す。
折れない航路は、作った。
あとは――決める。




