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ハルトⅡ -眠る帝国と、避難船メティス-  作者: ユウギリ
【第2章】:再生と重力
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第8話


『今です』


 メティスが言った。

 俺は叫ぶ。


「ヘルメス、全リミッター解除!」


 黄金の翼が、眩しく膨らむ。

 アイギスが目の前に迫る。

 装甲の段差。

 厚い板。

 撃たれるための壁。


『接触座標、Z-402。装甲表面、接触まで3秒』

「分かった!」


 俺は機体を落とす。

 落とすというより――“沈む”。

 重力の泥沼へ、身体ごと引きずり込まれる感覚。

 でも。

 今だけ、浮ける。

 俺は最後にスラスターを噴かした。

 そして――

 衝撃。


 ズゥゥゥゥン……!


 ……いや。

 これは、激突じゃない。

 着地だ。

 ヘルメスが、アイギスの装甲に“乗った”。

 艦橋がざわめく。


『艦長! ヘルメスが艦体に――!』


艦長の声は揺れない。


『予定通りだ。耐えろ』


 アイギスが揺れる。

 だが、崩れない。

 崩れないからこそ――反作用が生まれる。


『今です、ハルト。全エネルギー、推進器へ』


 メティスの声が鋭い。

 俺は息を吸う。


「……抜ける」


 そして叫ぶ。


「ぶっ飛べえええええええっ!」


 ドォォォォォン!


 蹴る。

 押し返す。

 泥沼が、縦に裂けた。

 あり得ない初速。

 “動かぬ巨体”を支えにした、爆発的加速。

 ヘルメスが、重力の檻を――穿つ。

 視界が開ける。

 宇宙が戻る。

 息ができる。


『突破。重力圧、低下』


 メティスが言う。


『……生存、確認』


 その一言が、珍しく弱くて。

 俺は笑ってしまった。


「当たり前だろ。まだ終わってねぇ」


 敵の中心が見える。

 赤い残光も見える。

 そして――

 0.003秒の“穴”を、狙える位置に来た。


『排熱ポート、予測開始』


 メティスが言った。


『次の再生に合わせて――楔を打ち込みます』


 俺は照準を合わせる。

 盾が時間をくれた。

 俺が、決める番だ。



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