第6話
光が降る。
アイギスが受ける。
ヘルメスが刺す。
それなのに――敵は、戻る。
欠けた装甲が、繋がる。
繋がった装甲が、また前に出る。
『エーテル・ドライブ。再構成を継続』
メティスの声が冷たい。
「冷たいのはお前じゃなくて、敵だよな」
『……はい』
その返事が、少しだけ遅れた。
俺は気づいている。
メティスが、焦っていることを。
焦りたくないのに。
計算したくないのに。
『ハルト。攻撃を一度、止めてください』
「は?」
『再生の“瞬間”を見たい』
俺は歯を食いしばる。
止めたら、盾が削られる。
でも、撃っても意味が薄い。
「……分かった」
俺はスラスターを絞り、アイギスの陰へ滑り込む。
その瞬間、敵艦の表面が――“生き物”みたいに動いた。
溶ける。
盛り上がる。
繋がる。
『……見えました』
メティスが言う。
『再生の核は“中枢”ではありません。正確には――再生の制御は複数箇所に分散』
「最悪じゃん」
『ですが、分散しているからこそ“隙”があります』
メティスの声が少し強くなる。
『再生は完璧ではない。熱が出ます』
「熱?」
『物質変換はエネルギーを消費し、必ず排熱が発生する』
俺の視界で、敵艦の表面が色分けされる。
赤。
黄色。
青。
『排熱のピークは――再生の直後です』
「なら、そこを叩け」
『間に合いません。ピークは短すぎる』
「短すぎるって、どれくらいだよ」
メティスが一拍置く。
『0.003秒』
俺は息を止めた。
「……瞬きより短いじゃん」
『はい。だから“瞬きの空白”です』
メティスが続ける。
『再生が進むと、排熱ポートが開く。開いた瞬間だけ“中身”が露出する』
『そこへ楔を打ち込めば、再生を止められる可能性がある』
「可能性、か」
『確率は上げられます。あなたの反応速度なら』
「買いかぶりだろ」
『買いかぶりではありません。あなたは――生き残ってきました』
その言葉が、妙に重い。
俺は拳を握る。
「じゃあやる。0.003秒、合わせろ」
『了解。視覚補助を最大化します』
視界が変わる。
時間が、引き伸ばされる感覚。
世界が少しだけ遅くなる。
『次の再生タイミングを予測します』
アイギスの通信が入る。
『少年。何か掴んだか』
「掴んだ。再生の“穴”だ」
艦長が短く笑った気がした。
『よし。盾は稼ぐ。矛は決めろ』
光の雨がまた降る。
アイギスの装甲が軋む。
盾が耐える。
なら、矛は――
0.003秒に賭ける。




