第12話
『多次元同時演算射撃、継続。光条の配置が更新されます』
メティスの声が速い。
「読まれる前に動く。読まれたら、読めない動きをする」
『あなたの“非論理”を、こちらの損失最小で補正します』
「頼む」
次の光条が置かれる。
右。
左。
上。
下。
逃げ道が消える。
だから俺は――逃げ道を使わない。
「行くぞ!」
ヘルメスが跳ねる。
直線じゃない。
円でもない。
“間”を飛ぶ。
光条が俺の背中を掠めた。
警告音が短く鳴る。
でも止まらない。
『赤点、再提示。旗艦の実体座標――右上0.4度』
「見えた!」
俺は照準を合わせる。
その瞬間。
光条が、照準の先に置かれた。
「くそっ!」
『旗艦はあなたの“狙う癖”まで読んでいます』
「狙わせない」
俺は狙いを捨てた。
撃つ前に動く。
動きながら撃つ。
当てることより、まず“当たる状況”を作る。
『損傷部位、再構成を開始。エーテル・ドライブ、稼働』
当てても、戻る。
分かってる。
でも俺が欲しいのは――
“戻る瞬間”だ。
『再生は必ず熱を出します』
メティスが言う。
『熱放射ノイズのピークが来ます。その瞬間――0.003秒』
「そこに楔」
『はい』
俺は歯を食いしばる。
今の戦いは、二段構えだ。
1回目で当てる。
2回目で止める。
その2回目は、0.003秒。
『次の再生が来ます』
メティスの声が鋭くなる。
旗艦の装甲が溶ける。
盛り上がる。
繋がる。
熱のノイズが、視界の端で跳ねた。
世界が遅くなる。
『……今』
俺は引き金を絞った。
一点。
赤点の“奥”。
――抜けた。
手応えが違う。
火花じゃない。
内部で何かが砕ける、鈍い感触。
『命中。再生制御、乱れます』
装甲が、戻らなかった。
戻りかけて、止まった。
裂け目が残る。
「止まった……!」
『楔、刺さっています。旗艦の再生は“無限”ではない』
メティスの声に、確かな熱が混じる。
でも。
次の瞬間、背中が冷えた。
旗艦が――怒った。
怒った、というより。
“優先度”が変わった。
光条が、俺の周囲に密集する。
『警告。あなたが最優先排除対象になりました』
「上等」
俺は笑えないのに、笑った。
「だったら――俺はもっと邪魔をする」
アイギスの通信。
『ハルト、盾が削れる。時間は長くない』
艦長の声が硬い。
「分かってる!」
俺は叫ぶ。
「次で終わらせる!」
『終わらせます』
メティスが言った。
『旗艦の“心臓”へ、楔を届かせましょう』
赤点が、さらに奥を指した。
そこが――決着点。




