第1話
今作からチャットGPTに書いてもらっています。
空が、青い。
エリュシオンの“白”しか知らなかった俺には、それだけで眩しかった。
見上げるたびに、胸の奥が変な音を立てる。
――ここが、テラ・オリエナ。
『ハルト、日焼け止め。あなた、肌が弱いから』
机の上に、ぴょこんと小さなホログラムが現れる。
腰までの髪。整った顔。
だけど、どこか人間より“正しい”動き。
メティスだ。
「……出た。お節介AI」
『お節介ではありません。生活を破綻させないための支援です』
「それをお節介って言うんだよ」
『定義の差ですね』
相変わらず淡々としているくせに、こういう時だけ一歩も引かない。
俺は苦笑して、日焼け止めを受け取った。
窓の外。
風が木を揺らして、葉がきらきら光っている。
こっちの世界は、あったかい。
食べ物も、あったかい。
最初に口にしたスープの温度を、俺はまだ忘れられない。
「……なあメティス」
『はい』
「ここ、夢じゃないよな」
メティスは少しだけ目を伏せた。
『夢ではありません。あなたが守った結果です』
その言い方が、妙に胸に刺さる。
守った結果。
救出された結果。
生き延びた結果。
そして――
「監視された結果」でもある。
俺の端末の隅には、いつだって小さな表示が出ている。
通信制限。ログ管理。アクセス権限。
メティスも同じだ。
彼女は“再雇用”された。
でも自由じゃない。
「……今日、学校だろ?」
『はい。制服のネクタイ、曲がっています』
「うるせ。自分で直せる」
『直せていません』
「うるせ!」
俺がネクタイを引っ張ると、メティスが肩をすくめた。
『あなたの“できる”は、目標であって現実ではありません』
「めっちゃ煽るじゃん」
『事実の提示です』
メティスの声は変わらない。
なのに、前より“温度”がある気がする。
……気のせいじゃない。
あいつは変わった。
一度、壊れたから。
俺はそのことを、忘れないようにしている。
忘れたら、また同じことを繰り返す気がして。
学校へ向かう道は、広い。
歩いているだけで、街の匂いがする。
パン屋の香り。車の音。子どもの笑い声。
エリュシオンには無かったものだ。
俺はそれを――怖いくらい、好きになっていた。
『ハルト』
メティスが、いつもより低い声になる。
「何」
『通信。軍管区から優先呼び出しです』
一拍。
心臓が、嫌な跳ね方をした。
「……来た、か」
俺は端末を握り直す。
空の青が、急に遠く感じた。
通信が開く。
画面の向こうに、堅い顔の男が映った。
――コンピューター制御センター所長。
この人は、俺を救った側でもある。
同時に、俺たちを“管理する側”でもある。
「ハルト。聞こえますか」
「聞こえてます」
「緊急事態です。第八観測ステーションが、大規模な空間跳躍反応を捕捉しました」
空間跳躍。
それだけで、背中が冷たくなる。
「艦隊、ですか」
「複数です。規模が大きい。所属は不明」
所長の視線が、ちらりとメティスへ向く。
「メティス。あなたの権限での解析は許可する。だが、ログは全て記録される」
『了解。命令系統に従います』
淡々と返すメティス。
でも、その返事の奥に、わずかな緊張が滲んだ気がした。
所長は続ける。
「ハルト。あなたに選択肢を与えます。……ただし時間がありません」
画面の右端に、別の通信窓が開く。
そこに映ったのは、艦橋。
エルンスト艦長だ。
「久しぶりだな、ハルト」
「艦長……」
「顔が少し健康になった。……それでいい」
それだけで、胸が少し軽くなる。
この人は、最初から“人”を見てくれる。
「状況を伝える」
艦長の背後で、艦橋クルーが慌ただしく動いている。
「未知の艦隊が侵入する。目的は不明。だが、こちらの宙域に向かっているのは確かだ」
艦長は静かに息を吸った。
「防衛艦アイギスは出る。――俺たちは“盾”だ」
画面が切り替わる。
宇宙に浮かぶ巨大艦。
分厚い。
段差だらけの装甲が幾重にも重なり、艦というより城壁みたいだ。
飾りがない。
速さも、優雅さも捨てている。
最初から。
撃たれるために造られた塊。
――防衛艦。
「……でけぇ」
思わず声が漏れる。
『アイギスは装甲に重点を置いた設計です。防衛艦として合理的』
「合理的って言い方……」
『事実です。盾は折れないことが価値です』
艦長が俺を見る。
「ハルト。君は、どうする」
その質問が、重い。
俺が出れば、戦いになる。
出なければ、誰かが代わりに出る。
テラ・オリエナは、俺たちを受け入れてくれた。
空も、飯も、温かさもくれた。
――それを、奪わせるわけにはいかない。
俺は息を吸う。
「行きます」
答えた瞬間、所長が口を開いた。
「“行く”なら条件があります。あなたはまだテラ・オリエナ軍の正規兵ではありません。民間人扱いです」
「……じゃあ」
「ですが、特務テスト隊の枠で臨時登録できます。あなたの機体――新型ヘルメスの運用は、既に準備されています」
新型。
ヘルメス。
あの翼。
『ハルト。あなたが乗るべきです。あなたの操縦データは、既に反映されています』
「……当然みたいに言うな」
『当然ではありません』
メティスは、少しだけ間を置いた。
『私は、“あなたがいなくなる可能性”を計算したくない』
その言葉に、俺は一瞬、息を止める。
淡々とした声が。
たった一文で、胸を掴む。
艦長が短く頷く。
「決まりだな」
所長も頷いた。
「ハルト。特務テスト隊の第一種パイロットとして臨時任命する。――ただし」
所長の声が硬くなる。
「メティス。あなたは“専属ナビゲーションAI”として同行を許可します。ですが、逸脱行為があれば即時切断するので、そのつもりで」
メティスは、正面を見た。
『了解』
短い返事。
だけど――
『私は、命令に従います。……そして、彼を守ります』
その二つを同じ息で言えるようになったのが、今のメティスだ。
俺は端末を強く握る。
「艦長。俺、矛になります」
艦長の口元が、ほんの少しだけ緩む。
「よし。アイギスが盾になる」
「メティス」
『はい』
「実戦モードに切り替えろ」
メティスのホログラムが、まっすぐ俺を見る。
『了解。あなたの往く道を――私がナビゲートします』
胸の奥が熱くなる。
あの時みたいに。
あの寒い星で、何度も聞いた声みたいに。
空は青い。
でも。
戦いは、宇宙から来る。
俺は歩き出した。
新しい翼へ。
未知なる艦隊へ。




