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月隠ノ日向  作者: shio
第三章
70/150

七十


 日愛、灯澄、燈燕――三人の戦う姿に日向は動くことができなかった。日愛の向かう方向が分かっているからこそ対応もできている。今動けば、灯澄や燈燕に負担がかかってしまう。

 そして、それは自分が日愛に向かっていっても一緒だった。灯澄と飛燕は護ろうと必死になることは間違いない。声で止めても駄目だった。


 だったら――自分はどうするか。


「――日向」


 最中、ふいに呼びかけられ日向は視線を向けた。横へと近づいてきていた陽織は日向へと静かに伝える。


「私も灯澄さんと燈燕さんの間に入って日愛を止めます。あなたは整えておきなさい」

「お母さん……」


 ――違う、と日向は内で呟いていた。自身の心が、いや、日愛が教えてくれている。「違う」と。


「機会は必ずきます。いいですね」

「駄目です」

「日向?」


 常とは違う、初めて聞くような日向の強き言葉に、陽織は驚き顔を見つめた。


「わたしが行きます。日愛はわたしを呼んでいるんです」


 日向の心の内を現す強き言葉と瞳――それは信念の証だった。日向の話したいことは陽織もよくよくわかっていた。日向は日愛を救いにきたのだ。自分が戦わないと、という思いもあって当然だった。

 だが、


「それは分かっています。でも、今は危険です。あなたは待ちなさい」

「違うんです!」


 母の言葉に、日向は声を上げ否定した。陽織の腕を掴み、精一杯伝える。自分の内のものを、真実のものを。


「『戦って』は駄目なんです」

「…………」


 自分の心底が伝わったのだろうか――伝わってほしいと願い、日向は陽織の瞳を見つめた。

 だけれど、


「あなたは待ちなさい。私たちが機会を作ります」


 問答をしている時間はない。陽織は掴まれた腕に手を沿え外すと、日向に一言告げ、すぐに走り出した。


「お母さんっ!」


 制止する日向の声を背中で聞きながら、陽織は日愛へと向かっていった。

 日向の「戦ってはいけない」という気持ちは分かっていた。陽織としても、日愛とは争いたくない。だが、今それは許されなかった。何より、日向を護るために。


 ――日向の気持ちを、その真実なるものを陽織は分かっていない。それでも、陽織は日愛に向かっていった。


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