表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月隠ノ日向  作者: shio
第二章
46/150

四十六


「お前は会っている。といっても記憶はなかろう、会ったのはお前が赤子の時だからな。とはいえ、あやつも赤子のようなものだったが」


 続ける灯澄の言葉。日向は話を聞き、まず自分が会っていたことに驚いた。以前、「一族の誓約」と灯澄は話していたが、それは遥かな昔のことではなく自分が産まれてからの誓約だったことを知ったからだった。そして、もう一つのことも知る。やはり灯澄と燈燕には幼き日に会っていたことを。


「先に言っておくが、妖の姿とお前たち人間が考える歳はまったく違う。元々の存在が違うからな。妖も歳を重ねるが、それがそのまま姿の老いには繋がらぬ。百年経っても幼いままという奴もいる。経典でいう、仏や諸天もそうだろう。あの者たちに歳はない。存在の意味によって姿が決まる」

「我らも、見た目はこのように若いが歳月でいえばそれなりに経っている。とはいえ、妖でいえば幼子のようなものかもしれぬが」


 付け加えて話す燈燕の間に、灯澄は酒に唇を触れさせた。一見無駄な話にも思えるが、姿の話はしなければならないことだった。日向が目にした時、その姿に初めは驚くかもしれない。それは戦いを鈍らせる恐れもある。その為には伝えねばならないことだ。

 上手い酒を飲むのは今だ先――いや、結果如何であれば不味くもなる。一生、不味い酒を飲むことになるか、はたまた、酒自体が飲めなくなるか。灯澄は一拍空け、続けた。


「今の話のように、妖の歳月と姿は関係がない。お前が対する者の姿は幼く、童女のような姿をしているが見た目だけで判断はするな」

「童女……女の子なのですか」

「ああ、幼き女の子だ。その者の、我らが子の名は日愛ひな。幼き天狗の子だ」

「天狗の子……日愛」


 正確にいえば名付けたのは日向の母。考えてみれば日向と日愛は姉妹、いや、兄妹、又は、姉弟のような関係かも知れない、などとふと灯澄は頭に浮かぶ。が、それは話さなかった――話せば日向の迷いが深くなるだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ