表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月隠ノ日向  作者: shio
第二章
45/150

四十五


 元より着いたのは夕暮れ。しばらくすればすぐに陽は落ち、月明かりが差し込む時間となる。

 電気も通っていない山奥の小さな家。囲炉裏に火を付けるのも、川から水を汲んでくるのも日向にとっては初めてのこと。そうして瞬く間に時は過ぎ、夕食が出来上がったのは家に着いてから三時間の後だった。


 目の前に並ぶ山菜料理。山菜汁に煮物と白米、和え物と漬物も添えられている。肉や魚はなく決して豪華とはいえないが、日向にとっては十分な料理だった。今日一日山を歩き続けた身体がほっと落ち着く温かみのある味――というのも当然で、並べられている料理は全て陽織と日向が作ったものだ。灯澄も燈燕もできないことはないがあまり得意でもないらしく、それで陽織と日向が担当することに決まった。


「野菜や米も仲間が用意してくれたものだ。我らでも腹は減るからな」

「妖もご飯を食べるのですか?」

「もちろん食べる。だが、食べなくとも死ぬことはない。万象に宿り、共に在る者だからな」


 そう話しつつ燈燕は酒の入ったお猪口を置き、煮物に箸を伸ばした。筍を一つ摘み口にする。


「うん、上手い」

「よかった。いつも薄味にしているので口に合うかと心配したのですが」

「いや、これくらいでいい。懐かしい味だな」


 燈燕の言葉にに日向は微笑んだ。聞けば、昔日向の家の料理を食べていたらしい。それを聞き、懐かしい味といわれ日向も何だか嬉しくなった。

 初めは燈燕が日向に酒を勧めるという一幕もあったのだが、ともあれ和やかに食事は進んでいった。日向もすっかり灯澄と燈燕に打ち解け、自然と会話も弾んでいく。その中で――どうしてもというべきか――誰とは無くこれからの話へと流れていった。日向がこれから会う者、救わねば成らぬ妖の話へと。


「――そうだな、もう話さねばなるまいな。ここへ来た以上は」


 灯澄は酒を置き、最初にそう切り出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ