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月隠ノ日向  作者: shio
終章
146/150

百四十六


 月隠れ、日に向かう――光照らし白む朝の陽。空は蒼く、澄んだ空気が満ちる。

 制服に着替え、鏡を見る。鏡に映る自分の姿。ほんの二ヶ月ほど前、今と同じように制服に着替え登校の準備をしていた。

 その時と、今と――鏡に映る自らの姿に変わりはないように見える。だけれど、そう、だけれど――


(――わたしは)


 トッと鏡に触れる。

 違う。何かと明確には分からないけれど、違った。目に見えるもの、見えないもの。姿は変わっていないように見えても、見る自分が変わればそれはまったく違う。


(何を見ているのだろう)


 自身の姿――自分は何を見つめ、何を感じているのか。

 日向は鏡に触れた指を戻し、そして、その場を離れた。もう、学園へと行く時間。今日は早く行かなければならない。

 玄関へと行くと、陽織、灯澄、燈燕、スズ……そして、自分の姿を見つけた日愛が駆け寄り手をぎゅっと握った。


「お待たせしました。行きましょう」


 こんなに大勢で学園へ行くのは初めて、楽しそうな日愛に日向も嬉しく微笑みながら玄関をでる。

 暖かく、少しだけ冷たい涼やかな風が頬を撫で、一点の曇りもない蒼天の空と輝く朝の陽の光が日向たちを迎えるように優しく照らしていた。



  ――――――――――



「――こんなに朝早くに来なくてもいいのに、帰ってすぐに報告に来るなんて本当に律儀ね。一日くらいゆっくり休んでも良かったのに」

「ごめんなさい、妃紗さん」

「ううん、いいわ。日向らしくて、安心した」


 妃紗は笑い、日向と手を握っている日愛、後ろに居る陽織、灯澄、燈燕、スズへとそれぞれに視線を向けた。


「さて、まずはお話を聞きましょうか。月隠日向さん、と呼んだほうがいい?」

「そうですね。でも、すぐに変えてしまうとみんなも困ると思うので、時期を見て変えようと思っています」

「ふふ、本当にあなたらしいわ。では、今は城守日向と呼びましょう。城守学園の生徒である日向として」

「はい、ありがとうございます」


 日向はお礼を伝え、そして、一度だけ瞼を伏せ、ゆっくりと深呼吸した。


「全てお話しします。日愛のこと、妖のこと、月隠のこと、月代のこと――そして、母のこと」


 視線を妃紗を向け、迷いのない声と瞳で凛と日向は続けた。


「わたしが知ったこと、決めたこと、お話しします」


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