第59話 凱旋とすんごい真相究明
グライフェン砦での死闘を終え、私たちは三度、英雄として王都ソリスティアへと凱旋した。
しかし、今回の謁見は、これまでのものとは全く違う空気に包まれていた。
玉座の間に集った国王陛下と大臣たちは、私たちの勝利を祝いながらも、その視線は、どこか緊張し、そして恐れているかのようだった。
「して、勇者ユウキよ」
国王陛下が固唾をのんで尋ねる。
「魔王を討ち滅ぼしたという、その経緯……詳しく、聞かせてもらおうか」
「はっ!」
ユウキ様は羊皮紙の報告書を広げたが、その手は、わずかに震えていた。
彼は魔王の圧倒的な力、そして、私のおっぱいが弱点であったという、奇妙な戦いの流れを、なんとか当たり障りのない言葉を選びながら説明していく。
しかし、陛下は首をかしげた。
「うむ……。つまり、聖女の胸元をチラリと見せることで、魔王の動きを止めた、と……。しかし、それだけで、あの魔王を倒せるとは到底思えんが……。決定打は何であったのだ?」
謁見の間の全員の視線がユウキ様に突き刺さる。
ユウキ様は滝のような汗を流しながら、観念したように言った。
「……最後の、とどめは……その……」
彼は、一度、天を仰いだ。
「……魔王がルルナに突進し……つまずいた彼女の……胸を鷲掴みにしてしまったことが、直接的な消滅の引き金で……あります……」
しん、と。
謁見の間は水を打ったように静まり返った。
大臣の一人が、ごくり、と喉を鳴らす。
全員の脳裏に、数日前の、あの作戦会議が蘇っていた。
『もし、誰かが、その手で、神の領域ともいえるその胸を、強く、揉みしだいたとしたら……』
『世界そのものが消滅する可能性さえ、否定できないのです』
シルヴィアさんの、あの恐るべき仮説。
そして、陛下が自ら発布した、「聖女のおっぱい保護法」。
全員の視線が私の胸元へと、恐怖と畏敬の念を込めて集まる。
誰もが思った。
――世界は本当に、紙一重だったのだ、と。
「……そ、そうか」
陛下が、ひきつった声で言った。
「……よく、やった……」
その時、これまで大人しくヘクサーナに抱かれていたノア(元魔王)が、ふにゃ、と声を上げた。
「さて、その聖人殿の養育だが……」
陛下の言葉に、私は、はっとして前に出た。
「私に、お任せください!」
私がノアを抱き上げ、安心させるように、あやした、その時だった。
私が持っていた『嘆きの神の枷』(腕輪)が、ノアの小さな手に触れてしまった。
ぽすん。
私の胸が、ノアを抱きしめる形で腕輪に優しく触れる。
すると、どうだろう。
腕輪が、まばゆい光を放ち、その光が、近くに置かれていた、王家に伝わる、古代の予言書を照らし出したのだ。
予言書の空白だったはずのページに、光る文字が、ひとりでに浮かび上がる。
『――古の魔女、聖人を導かん』
その、あまりに都合の良い神託に、またしても全員が言葉を失った。
こうして、ノアの養育は神の御業(という名の、すんごいおっぱいの奇跡)によって、ヘクサーナに一任されることが決定した。
そして、私の胸は、もはや、国家機密レベルの最終兵器として、王国に認識されることになったのだった。




