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スキル名【すんごい、おっぱい】なんだけど、これってどうなの!?  作者: かわさきはっく
すんごい、おっぱいは世界を救う(?)編

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第57話 戦後処理とすんごい聖母

「……母乳まで、出るのかよ……」


 ユウキ様の魂が抜けたような呟きが、静まり返った地下空洞に響き渡る。

 私の腕の中では、元・魔王であった赤ん坊が、満足げな寝息を立て始めた。

 シルヴィアさんは完全に意識を失っている。


「おい、シルヴィア、しっかりしろ!」

 ダインさんが、その巨体に見合わない優しい手つきで、倒れたシルヴィアさんを揺り起こす。


「……夢、ですね」

 ようやく意識を取り戻したシルヴィアさんは、私と、私の腕の中の赤ん坊を見ると、力なく言った。

「私はまだ、魔王の悪夢の中にいるのですね。そうに違いありません」

 そう言って、彼女は、再び、地面に倒れ込もうとした。現実から目を背けようとしている。


「現実だ、シルヴィア!」

 ユウキ様の悲痛な叫びに、彼女は全てを諦めたような顔で、ゆっくりと起き上がった。


「……そうだ、『神の枷』!」

 ユウキ様は思い出したように、祭壇へと駆け寄る。

 そして、そこに静かに鎮座していた、黒い鉄の首輪――《沈黙の神の枷》を、その手に取った。

 これで、王国側が確保した『神の枷』は、三つ全て。魔王の野望は完全に潰えたのだ。


 私たちの勝利。

 しかし、その勝利の証を手にしても、私たちの表情は晴れなかった。

 全員の視線が私の腕の中で、すやすやと眠る、元凶(?)へと注がれる。


「で……」

 ユウキ様が、おそるおそる、口を開いた。

「こいつ、どうするんだ?」


「魔王だったんだろ? どっかに置いてくわけにも、いかねえしな……」

 ダインさんが困ったように、自分の顎鬚を掻く。


 シルヴィアさんが眼鏡を押し上げながら、分析を始めた。

「存在そのものが初期化された今、彼に過去の記憶や邪悪な意志はないでしょう。ですが、その身に宿る潜在的な魔力量は計り知れません。放置すれば、将来、再び世界の脅威となる可能性も否定できません」

 彼女は結論を告げた。

「……我々の監視下に置くのが最も論理的です」


 全員の視線が私に集まる。

 私は腕の中の赤ん坊の、あまりに無垢な寝顔を見つめていた。

 この子が、あの絶望の化身だったなんて、とても信じられない。


「……この子、悪い子じゃ、ないです」

 私は固い決意を口にした。

「私が……この子の面倒を見ます」


 その、私の言葉が合図だった。

 私たちの背後で空間が歪み、一つの、魔法の扉が開かれる。

 そこから現れたのは、元・魔女のヘクサーナだった。魔王の気配が消えたことを察知し、様子を見に来たのだろう。


 彼女は私たちが無事であること、そして、ユウキ様が『神の枷』を手にしていることを確認すると、最後に私の腕の中の存在に気づき、凍りついた。

「……まさか……魔王、様……?」


 私たちは彼女に、この戦いの、あまりにも、あんまりな結末を説明した。

 ヘクサーナは全てを聞き終えると、しばらく呆然としていたが、やがて、ゆっくりと私の前に進み出た。

 そして、深く、深く、その場に跪いた。


 その礼は、かつての主君である、赤ん坊に向けられたものではない。

 私に向けられたものだった。


「……聖女様。いえ……ルルナ様」

 彼女は顔を上げると、これまで見たこともない穏やかな表情で言った。

「その方のお世話、私にも手伝わせてはいただけませんか。それが私の、新しい役目なのでしょうから」


 こうして、私の意志とは全く関係のないところで。

 私を聖母とする、新しい、そして、あまりにも奇妙な家族が誕生してしまった。


「……スキル名、『聖なる聖母ホーリー・マザー』かよ……」

 ユウキ様が、その光景を眺め、悟りきったように呟いた。

「……奇跡すぎるだろ……」


 私たちは三つ全ての『神の枷』を手に入れ、そして、元凶であった魔王を赤ん坊にして、連れて帰ることになった。

 王都に戻って、この状況を、一体、どう説明すればいいのだろうか。

 私の新しい悩みは、世界の危機よりも、もっと現実的な問題だった。

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