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スキル名【すんごい、おっぱい】なんだけど、これってどうなの!?  作者: かわさきはっく
波乱の魔王軍、介入編

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第41話 炎獄とすんごい耐熱性

 王家の転移魔法陣が放つ光が収まった時、私たちの目の前に広がっていたのは、まさしく地獄のような光景だった。


「うわっ……あつっ!」

 ユウキ様が悲鳴に近い声を上げる。


 ごつごつとした黒い岩の大地。遠くで川のように流れる紅蓮の溶岩。そして、肌を焼くような熱波と、鼻を突く硫黄の匂い。

 空は絶えず噴き上がる火山灰で薄暗く淀んでいる。


「がはは! 故郷の鍛冶場を思い出すぜ!」

 この灼熱地獄の中、ドワーフであるダインさんだけが、どこか楽しそうだった。


「私の魔法では、この熱を完全に遮断するのは不可能です。長居はできません」

 シルヴィアさんが張ってくれた冷気の結界も、気休め程度にしかならない。立っているだけで汗が噴き出し、体力が奪われていく。


 私たちは、ヘクサーナから教えられた《憤怒の火山炉》を目指し、険しい岩山を登り始めた。

 道中には、無残に砕けた王国騎士団の盾や、焼け焦げた鎧が散乱しており、ここで行われた戦いの激しさを物語っていた。


 しばらく進んだところで、私たちは蒸気を噴き出す亀裂が、無数に走る広大な岩盤地帯へとたどり着いた。

 熱気は、これまでとは比較にならないほど凄まじい。


「はぁ……はぁ……あ、暑いです……」

 パーティの中で最も体力のない私は、すでに限界寸前だった。

 意識が朦朧とし足元がおぼつかない。


(涼しい……風が……欲しい……)

 私は、ほとんど無意識のまま、自分の服の襟元を掴むと、胸元に向かって、ぱたぱた、と扇ぎ始めた。

 少しでも風が欲しかった。


 その、ささやかな行動が引き金だった。

 私が服を扇ぐたびに、私の胸が、ぽよん、ぽよん、と、リズミカルに揺れる。


 すると、どうだろう。

 私の体から、まるで蜃気楼のように、ひんやりとした冷気が溢れ出し始めたのだ。

 それは、私だけでなく、パーティ全員を包み込む、一つの快適な空間を作り出した。

 うだるような熱波は消え失せ、まるで高原の朝のような、爽やかな空気が私たちの肺を満たす。


「……え? なんだこれ……涼しい……!」

 熱でへたり込みそうだったユウキ様が驚きの声を上げる。

 ダインさんの額から、玉のような汗が引いていく。


 シルヴィアさんは信じられないという顔で、私を見ていた。私が、ただ暑くて胸元を扇いでいるだけの私を。

「……まさか。彼女の体が周囲の熱エネルギーを無尽蔵に吸収し、生命活動に最適な温度へと変換する、自動環境調整機能オート・クライメート・コントロールを……? そんな……馬鹿な……」


(え? なんだか、少し涼しくなったような……? 皆さん、どうしたんでしょう……?)

 私だけが、何が起きているのか全く理解していなかった。


 その時だった。

 山の向こうから、凄まじい轟音が響き渡り、大地が震えた。

 私たちは弾かれたように音のした方角を見やる。


 見晴らしの良い岩陰から、眼下の巨大なカルデラを見下ろし、私たちは息をのんだ。

 そこで戦っていたのは、ボロボロになりながらも必死に陣形を組む、十数人の王国騎士団の生き残り。

 そして――


 一人の山のように巨大な魔族。

 その体は冷えた溶岩のような黒い甲殻で覆われ、両の拳はマグマそのもののように赤く輝いている。

『剛力の魔将軍ブルガロス』。


 ブルガロスは雄叫びを上げると、ただ地面を殴りつけた。

 それだけで、騎士たちが盾にしていた巨大な岩盤がクッキーのように粉々に砕け散る。

 騎士団長バルトークさんが、血を吐きながらも剣を構え、仲間を鼓舞しているのが見えた。

 しかし、彼らが全滅するのも、もはや時間の問題だった。


「……あいつが、ブルガロスか。とんでもねえ化け物だ」

 ユウキ様が聖剣の柄を握りしめ、呟く。


 シルヴィアさんが私の顔を見た。

「……スキル名、『聖なる癒やし空間ホーリー・リフレッシュ・エリア』、とでも名付けておきましょうか。ルルナ、あなたのおかげで、私たちは、あの化け物と戦う、最低限のスタートラインに立てたようです」


 絶望的な戦場に、私たちは、すんごい耐熱性を身につけて、今、足を踏み入れようとしていた。

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