表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル名【すんごい、おっぱい】なんだけど、これってどうなの!?  作者: かわさきはっく
噂の聖女、爆誕編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/65

第17話 勇者とすんごい本音

 書斎での一件以来、私の頭は混乱していた。

 私のスキルは、世界の法則さえ書き換えてしまう?

 考えれば考えるほど、自分の力が恐ろしくなる。その夜、私はなかなか寝付けずに、城のバルコニーに出て、一人で夜風にあたっていた。


「こんな時間にどうしたんだ、ルルナ? 眠れないのか?」


 背後からの声に振り返ると、ユウキ様が立っていた。

「あ、ユウキ様……。はい、少しだけ……」

「そっか」

 ユウキ様は私の隣にやってくると、手すりに寄りかかり、私と同じように星空を眺めた。普段の快活な雰囲気とは違う、静かな横顔。


 その横顔を見ていると、私はずっと気になっていたことを、思わず尋ねてしまっていた。

「ユウキ様は……どうしてそんなに、私のスキルを信じてくれるんですか? お父様も、周りの皆も、笑ったのに……」


 ユウキ様は、星空から視線を外さないまま、ぽつりと答えた。

「……信じてるっていうか、信じたいんだよ」

 その声は、いつもの彼からは想像もできないほど、穏やかで、少しだけ寂しそうだった。


「俺さ、元の世界じゃ、本当に何でもない、ただの学生だったんだ。特別なことなんて何もなくて……。だから、こっちに来て『勇者』なんて呼ばれても、正直、自信なんて全然ないんだ」


 初めて聞く、彼の本音だった。


「でも、ルルナのスキルは違う。あれは、常識じゃ測れない、本物の『奇跡』だ。理屈なんてどうでもいい。その奇跡がそばにあれば、俺みたいな偽物でも、本当に勇者になれるんじゃないかって……そう思わせてくれるんだよ」


 いつも私を励ましてくれる、太陽みたいな人。

 そんな彼も、私と同じように、不安と戦っていたんだ。

 そう思うと、私はなんだか、彼のことが「すごい勇者様」ではなく、もっと身近な、一人の大切な仲間に思えた。


「……私は、ユウキ様がリーダーで、本当によかったです」

 自然と、言葉がこぼれた。

「あなたが、私の力を信じてくれたから、今の私が、ここにいられます。ありがとうございます」


 私のまっすぐな言葉に、ユウキ様は少し驚いたように目を見開き、それから、照れくさそうに笑った。

「ははっ、なんだよ、急に…。でも、ありがとな、ルルナ!」


 彼が、嬉しそうに手すりに体重をかけた、その時だった。

 バキッ!

 風雨に晒され、脆くなっていた石の手すりが、彼の動きに耐えきれず、大きな音を立てて砕けたのだ。巨大な石の塊が、バルコニーの外へと落下していく。


「やべっ!」


 真下は、衛兵が巡回している中庭だ。大騒ぎになるに違いない。

 私は、危険を顧みず、ユウキ様の腕を掴んで、力いっぱい引き寄せた。

「あぶないっ!」


 その勢いで、私の胸が、ユウキ様の背中に、ぽすん、と強く押し付けられた。


 ――奇跡は、その瞬間に起きた。


 中庭へと落下していくはずだった石の塊が、空中で、ぴたり、と静止したのだ。

 そして、まるで糸に引かれるように、ゆっくりと浮き上がり、元の場所へと吸い寄せられる。砕けた断面が寸分の狂いなく合わさり、ひび割れが魔法のように消えていく。

 全ては、無音のまま行われた。


「…………」

「…………」

 私たちは、完全に修復された手すりと、静まり返った中庭を、ただ呆然と見比べていた。


 やがて、ユウキ様が、ぎこちなく口を開いた。

「……なあ、ルルナ」

「は、はい!」

「今の……俺に触れたよな? 俺の背中に、君の胸が……」


「も、申し訳ありません! わざとじゃ……!」

 私の顔が、カッと熱くなる。


 ユウキ様は、修復された手すりを指さし、そして私を見て、全てを理解したという顔で、にやりと笑った。

「……そっか。なるほどな。つまり君のおっぱいに触れた対象は、本人だろうが、その人が壊した物だろうが、全部まとめて『守護対象』として奇跡が起きるわけだ」


 彼は、夜空に向かって高らかに宣言した。

「スキル名『聖なる接触ホーリー・タッチ』! 効果範囲、自分自身から接触対象へ! うん、これに決まりだ! やっぱり何でもありだな、君のおっぱいは!」


 私の、生まれて初めての、少しだけ良い雰囲気だった夜は、またしても私のすんごいおっぱいによって、台無しにされてしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ