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スキル名【すんごい、おっぱい】なんだけど、これってどうなの!?  作者: かわさきはっく
噂の聖女、爆誕編

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第14話 休日とすんごいお忍び

 魔王軍の斥候が去っていったことなど、もちろん私たちは知る由もない。

 テーブルがひとりでに修復した一件は、「またルルナのスキルが何かやったらしい」ということで、仲間内では半ば日常茶飯事として片付けられてしまった。


 外交問題を解決(?)した褒賞として、私たちは国王陛下からしばらくの休暇を賜った。


「よし! せっかくの休みだ! 今日こそ城下町で思いっきり遊ぶぞ!」

 ユウキ様が、朝から意気揚々と宣言する。

「前回は人だかりで大変だったからな。今日は変装していくぞ!」


 そう言って彼が用意したのは、どこにでもいる旅の商人や、農夫が着るような、粗末な服だった。


「……勇者。一つ、よろしいですか」

 シルヴィアさんが、冷ややかな目でユウキ様を見る。

「我々がどれだけみすぼらしい格好をしようと、彼女の〝これ〟が目立つ限り、何の意味もありませんが」

 そう言って、彼女は私の胸を、顎でしゃくってみせた。


「ひゃっ!」

 私は思わず、自分の胸を両腕で隠す。

 シルヴィアさんの言う通りだ。この規格外の胸がある限り、どんな変装も無意味に等しい。


「大丈夫だ、ルルナ! それも計算のうちよ!」

 ユウキ様は、自信満々に胸を叩くと、一つのアイテムを取り出した。それは、胸元に巻く、分厚い布――サラシだった。

「こいつで、君の〝聖なる果実〟をぐっと抑えれば、ただのちょっとスタイルのいい村娘にしか見えないはずだ!」


(聖なる果実ってなんですか!?)

 心の中で絶叫しながらも、私はその提案に藁にもすがる思いで飛びついた。

 シルヴィアさんに手伝ってもらい、サラシをきつく、何重にも胸に巻き付ける。


「うっ……く、苦しいです……」

「我慢しなさい。これで騒がれるよりはマシでしょう」


 全ての準備を終え、私たちは城を抜け出した。

 私はくたびれたワンピースを着て、胸にはサラシ。ユウキ様とダインさんは人の良さそうな行商人に、シルヴィアさんは薬草売りの娘に変装している。


 作戦は、見事に成功した。

 市場を歩いても、誰も私たちに気づかない。時折、すれ違う人が私の胸元をちらりと見るが、「ちょっと胸の大きな村娘がいるな」くらいにしか思わないようだ。


「やった……! 普通に歩けてる……!」

 私は、ただそれだけのことが、涙が出るほど嬉しかった。


「だろう? 俺の作戦に間違いはないのさ!」

 ユウキ様が得意げに笑う。


 私たちは、屋台で売っている串焼きを食べたり、露店に並んだ珍しいアクセサリーを眺めたりと、初めて「普通のパーティ」のような休日を満喫した。


 その日の午後だった。

 私たちは、広場のベンチに座って休憩していた。

 ふと、一人の小さな女の子が、私の目の前で派手に転んでしまった。


「うわーん!」

 女の子は、膝を擦りむいて、大声で泣き出してしまった。

 私は、考えるより先に駆け寄っていた。


「大丈夫? 痛かったね」

 そう言って、私はハンカチで女の子の膝の土を優しく拭ってあげる。


「うえぇぇん、いたいよぉ……」

 女の子は、泣きじゃくりながら、私の顔を見上げた。

 そして、次の瞬間。


 女の子は、泣くのをぴたりとやめ、私の胸を、指さした。

「……おねえちゃん、おむね、くるしそう……」


「えっ?」


 サラシで強く圧迫されている私の胸は、服の上からでも、その窮屈さが伝わってしまったらしい。

 女の子の純粋な指摘に、私は言葉に詰まった。


「あ、いや、これはその……」

 私が慌てていると、女の子は、おもむろに自分のポケットから、一枚の絆創膏を取り出した。そして、お母さんにするように、私の胸に、そっとそれを貼ってくれたのだ。


「これで、いたいの、とんでけー、だよ」


 そう言って、女の子はにっこりと笑った。

 その屈託のない笑顔と、胸に貼られた一枚の絆創膏。

 私は、なんだか胸の奥が、じわりと温かくなるのを感じた。


「……ありがとう」

 自然と、感謝の言葉が口からこぼれていた。


 遠くから見ていたユウキ様が、感動したように呟く。

「なんて尊い光景なんだ……。聖女の慈愛が、子供の純真な心と共鳴している……」


「……ただの、おままごとでは?」

 シルヴィアさんが、冷静にツッコミを入れる。


 その日の夜、城の自室に戻った私は、胸に貼られた絆創膏を、そっと剥がした。

 サラシを解くと、私の胸は、解放されたように、いつも通りの存在感を主張する。


 私は、その胸を、鏡で見つめた。

 いつもは呪わしいとしか思えなかった、この胸。

 でも、今日だけは、ほんの少しだけ。

 ほんの少しだけ、愛おしいと思えた、そんな気がした。

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