六十話 ふたたび、ドラゴンと対決
ドラゴンの前に仲間たちとよこならびでかけていく。すでに、ラビリンは歌っている。気合充分だ。さっきまでの自分たちとは違う。格段に強くなった。
戦力だけで言っても、こっちはウーウダリをよせて従者五人。つまり、レルシャ六人ぶん以上の戦力だ。ふつうの兵士の三百人よりも強い。これなら、ドラゴンだってやれる。
「レルシャさま! さっきから急に私の力がみなぎってきて……もしかして、レルシャさまのおかげですか?」
「そうです。説明はあとで」
「やはりでしたか。おかげで、私が囮になることで、なんとかしのげました。スピカは力を使いきって眠っています。というか、気絶したんですかね?」
ウーウダリがふところから、目をまわしたスピカをとりだした。いつもの猫のようなキツネのようなウサギのようでもある、摩訶不思議で小さい生き物だ。
「ありがとうございます。ウーウさん。スピカ。ここからは総力戦です。みんなで力をあわせて行きましょう」
ドラゴンはレルシャたちに脅威を感じたようだ。さっきまでのバカにしきったようすとは違う。慎重に身がまえている。
「レルシャさま。私は囮を続けます。自分の回避をあげつつ、敵の注意をひく盗賊の技がありますから」
「じゃあ、お願いします。みんなはちらばって。グレーレンさんは背後からたたけるように、ドラゴンのうしろにまわってください。ラビリンとニャルニャは左右から攻撃。ソフィアラはぼくが魔法に集中できるように援護して。みんなが思いきり戦えるよう、回復はぼくがする!」
「やるぜ!」
「ニャー!」
「キュルン!」
「レル、ちょっとカッコイイよ?」
それぞれにちらばる。
ウーウダリが最前列で囮になる。右に左にものすごい速さで疾走しつつ、ドラゴンの注意をひきつけた。そのあいまに、ニャルニャとラビリンがサッと一撃入れては遠のく戦法だ。背後からグレーレンも攻撃しているらしく、こっち側が何もしていないときに、ドラゴンが苦しむこともあった。
ドラゴンもただやられてはいない。何発かくらって、レルシャたちの実力を理解したらしい。急に力をためると、大きく口をひらく。火炎を吹くつもりだ。それも、これまでのような火の玉ではない。もっと大技をくりだす気に違いない。
すかさず、レルシャは叫んだ。
「攻撃力低下の法則!」
ドラゴンの攻撃を弱体化させる。
次の瞬間、ドラゴンは火の息を吐きだしてきた。帯のように長々と続き、レルシャたちを全員、なめるように襲う。まるで炎の壁だ。さっきまでのレルシャたちなら、これであっけなく全滅していた。それも失神するだけではすまなかった。丸焼けになって骨も残らなかっただろう。
だが、今は違う。弱体化の魔法によって、ドラゴンの攻撃は十分の一にまで減退している。逆にレルシャたちは強くなっていた。みんなの生命力が半分くらいへっていたが、みんな、立っている。
「魔法持続の法則! ヒーリング!」
全体回復魔法でいっきに最大まで治癒した。
「さすがはドラゴンの火力だね。十分の一にしてるのに3000もダメージが来るなんて。もとは三万攻撃力ってことか。じゃあ、平均的に考えて、生命力は十五万ていど」
こっちは全員の攻撃力が一撃一万だ。十五万なら、たった十五発当てればいい。たしかに、さっきからの仲間たちの攻撃で、すでにドラゴンはフラフラである。かなり、きいている。
「うりゃー!」
「戦神の舞!」
「なななー!」
右からニャルニャのネコキック。左からラビリンのまわしげり。背後からはグレーレンの攻撃が同時にキマる。ドラゴンは今にも倒れそうになってよろめいた。
すると、レルシャのもとへ、ダヴィドがかけてくる。何事か早口にわめくが言葉が通じない。困っていると、パチリとスピカが目をあけた。
「待って。ヴァシュラーダは悪くないんだ。ほんとはおとなしい竜なんだよ。殺さないで! と……言っておる」
「スピカ。ありがとう」
「うん? 逆鱗の玉をこわせば……と言っておるな」
そういえば、以前にもダヴィドは話していた。逆鱗の玉を埋めこまれたせいで、ドラゴンは我を忘れて怒り狂っているのだと。
「ちょっと、みんな攻撃やめて。逆鱗の玉をこわせば、ドラゴンはおとなしくなるんだって。みんなで逆鱗の玉を探して!」
「玉? そんなのどこにもないけどなぁ」と、グレーレンの声が聞こえてくる。
「埋めこまれてるっていうから、外からは見えないのかも?」
「えー? さすがに、それじゃ見つけらんねぇぜ?」
ドラゴンはこっちの攻撃がやんだので、尻尾をふりまわし反撃に出る。みんな、倒れはしないものの、生命力はガッツリへった。こんなのをずっとくらえば、いくらなんでも倒れてしまう。
(どうしよう? ダヴィドには悪いけど、このまま倒してしまうほうが早い。その力はある。あと何回かこっちの攻撃が入れば……)
だが、レルシャの気持ちを察したのか、ダヴィドは涙を流しながら必死ですがりついてきた。しきりに首をふる。きっと、ダヴィドにはとても大切な竜なのだ。もしかしたら、レルシャにとっての兄のような存在なのかもしれない。これでは、殺せない。




