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五十九話 みんな、今、行くよ!



 ついに五つめの解放を得た。ピンクの光に包まれる。その光はいつもより強烈だ。


「あっ! ピンクの玉が大きい。並玉一つぶんくらいあるよ」


 いつもの従者解放では、小玉一粒しかもらえなかった。すると、新しい並玉がこれまでの小粒の石を吸収する。ピンクの色が濃くなり、キラキラ輝いた。みるみるうちに、なかの小粒がふくらみ、並玉サイズになった。並玉十一個だ。十個はかたまって大玉一つに変化する。


「こ、これって、小玉の効果が十倍になったってこと?」


 今回の玉は消えてしまったが、たぶん、すでに持っている玉を強化する解放だったのだ。望んでいた従者自身の数値をあげる解放ではなかったが、これはこれでスゴイ。


「これまで、ぼくの従者の解放は11%だった。でも、これで110%になったんだ。ぼくの数値の110%……えっ? それじゃ、ぼく一人ぶんより高い補正? ぼくより強くなったってことだよね?」


 充分な強さだ。ラビリンなんて、もとが強いから生命力9000超えだ。ニャルニャでも7000あまり。これなら、ドラゴンともいい勝負になる。


「でも、レルシャ。わたしの玉はなくならないよ?」

「たぶん、ソフィは従者解放の玉を持ってなかったからだと思う。だけど、これじたいが並玉の効果があるよ。ソフィの能力値の十分の一が従者に加算される。ソフィに従者ができたらね」

「ふうん。まあいいよ。赤とピンクと緑と金色の玉が増えて、護符が可愛くなったもん。形もふつうの才光の玉と違ってるぅ」

「解放遺跡でもらえる白以外の玉は才光の玉じゃないからね」

「レルシャの護符、豪華になったね。思ったんだけど、わたしもレルの従者になれば、すごく強くなれるんじゃない?」

「そうだけど……」

「じゃあ、レルシャの従者になる」

「えっ? 本気?」

「もちろん」


 話しているうちに、あたりがぼんやりして、気がつけば遺跡の外に立っていた。地下階段の下だ。

 ここからが本番だ。ドラゴンを倒すことが目的なのだから。


「急いで屋上へ戻ろう」

「うん。行こう」


 ぐずぐずしてはいられない。レルシャたちは一丸となって階段をかけあがった。


 どうか、まにあってほしい。みんな、ぶじだろうか? 兄はどうなったのだろう? ウーウダリはほんとに兄を救出してくれただろうか?


 不安と焦燥しょうそうで胸がいっぱいになる。

 地下一階まで戻ると、あたりは失神したワニ兵士の山だった。もしかしたら、なかにはほんとにポックリいってしまったワニくんもいたかもしれない。それくらいたくさんの山のてっぺんに、グレーレンがあぐらをかいてすわってる。黙ってれば美人なので、パンツが見えそうなのは勘弁してもらいたい。レルシャには刺激が強すぎる。


「おおっ! 戻ってきたか」

「おつかれさま。グレーレンさん」

「たいしたこたねぇよ。なんかさ。さっき急に力がみなぎってきて、このとおり、全部のしちまった」


 きっと、レルシャが従者解放したからだ。いちおう今はグレーレンも従者の一人に入っているのだ。


(もしかしたら、グレーレンさんなら、ガーゴイル倒すのも楽勝だった?)


 まあ、そこはそれだ。ガーゴイルはソフィアラにも倒せたが、一階で兵士たちをひきとめられたのはグレーレンしかいない。適材適所だった。


「グレーレンさん、治癒魔法かけたほうがいいですか?」

「このあとドラゴン戦だろ? なら、ちっと頼む」

「ハーフヒール!」


 これで準備万端だ。

 レルシャを先頭にらせん階段をかけあがる。もはやジャマしてくるモンスターはいない。いても、レルシャたちが強すぎるせいか、柱のかげからながめるばかりだ。ときおり頭上から、ズシン、ドスンと轟音ごうおんが響く。きっと、まだドラゴンがあばれているのだ。


 まにあってくれと願いつつ、レルシャは屋上への扉をひらいた。


 屋上はまさに戦場だった。スピカの姿がなく、なぜか、最前列にウーウダリがいて、ドラゴンの炎撃をたくみにかわしている。出入り口のすぐそばには父とゾルムントがいて、床によこたえた兄を守っていた。その中間あたりにダヴィドだ。ダヴィドはドラゴンをなだめようとしている。


「父上! 兄上は?」

「レルシャ! よくぞ戻ってきた。アラミスは……まだ息はある。手持ちの薬草を飲ませたので、出血は止まった。だが……危ない」


 やはり、両足が食いちぎられている。そこからの出血で顔色が青い。息が浅く、今しも絶えてしまいそうだ。父たちのなかには回復魔法を使える者がいない。


「魔法持続の法則。ハーフヒール!」


 レルシャが回復魔法をかけると、またたくまに顔色がよくなった。しかし、なくなった足が戻ってくるわけではなかった。これでは、兄はもう戦士として戦場に立つことはできない。生まれたとき、どんなに高い数値を持っていたとしても、二度と戦えないのだ。戦士としての兄の生涯は終わった。才光の玉がくだけちったのは、そのせいだろう。


(兄上……ぼくの憧れだった。強くなって、ソフィを守り、兄上のとなりで戦う。そう願ってたのに……)


 弱かったレルシャにとって、兄の強さはそれだけで神話の英雄にも等しかった。家族だから、兄だからという以上に大切な存在だった。


(ゆるさない。ドラゴン。ぼくがやっつける!)


 あふれる涙を抑え、レルシャは戦いの場へ走った。

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