表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/65

十九話 深夜の遺跡探検



 いつものように、解放が終わると祠の外にいた。女神から新しい力を得た気がするが、それがなんなのか、レルシャにはまだわからない。


「けっきょく、なんだったんだろう? スキルが強くなったのかなぁ? それにしては、村のなかの景色がいつもといっしょなんだけどな」


 あいかわらず遺跡群は色とりどりに輝いているものの、その光の数が増えているようではない。


 スピカは仰々しく答える。

「スキル解放とは、無から新しいものを得るわけではない。生まれ持ったスキルの力が分化するか強化されるかのどちらかだ」

「強化はわかるけど、分化って?」

「もともとの力に関連するよく似た技を使えるようになる。たとえば、おまえで言えば、遺跡の入口以外の何かも発見できるようになる」

「そういうことか。じゃあ、きっと、今度こそ隠し通路か宝箱でも見つけられるようになったのかな?」


 戦闘に有利な技ではなさそうだが、探索スキルもあれば、それこそ、さっきみたいな迷宮で役立つ。もし、さきほど隠し通路発見技があれば、もっと早く床の仕掛けに気づけた。


「探索系ならこれからの遺跡めぐりで、すぐ使えるね。あとは雑貨屋の裏の遺跡かぁ。うしろからまわって近づけないかなぁ」


 期待したが、裏手はちょっとした崖になっていて、とてもそこまでのぼっていけない。やはり、夜になってキースティングスが寝入ったすきを狙うしかない。


「よし。今日はもう神殿に帰ってお昼寝しよう」

「な〜」

「ニャルニャはお昼寝好きなんだぁ」

「猫だからの」


 とか言いつつ、スピカもすっかり猫の姿になっている。お昼寝モードだ。


 坂道をあがっていくと、やっぱり店の前にキースティングスがいて、しつこく声をかけてくる。無視して神殿へ帰った。


「おや、レルシャさま。今日はお早いお帰りですね」

 迎えでるウーウダリに、「疲れたからお昼寝するよ。夕食には起こしてください」と告げ、ベッドに入る。


 伯爵家の屋敷にくらべたらせまいが、神官や僧侶たちが相部屋も多いなか、机、寝台、クローゼットつきの一室をもらっているのだから贅沢なほうだ。角部屋なので窓が二方向にあり、いつも心地よい風が入ってくるのもよかった。高台なので、窓の外の風景は見晴らしがよく、とても美しい。


「はぁ。気持ちいいねぇ。遠くまでよく見える。こうやってみると、青や緑の光は少ないなぁ。スキルや武器の解放だからなんだね。黄色とかオレンジとかピンクとか赤はなんなの? 紫もあるね。銀色っぽいのや。黄色は白と同じくらいたくさんある」


 スピカは布団の上で丸くなっている。


「黄色は精霊石。紫は魔法呪文。赤は攻撃力解放……銀は……」

「銀は?」


 しかし、そのときにはもうスピカは幸せそうな顔でヨダレをたらしながら寝入っていた。それを見ているうちに、レルシャも眠くなる。


 目がさめると、とっくに日が暮れていた。


「レルシャさま。夕食の時間です」

 ウーウダリに起こされて、寝ぼけながら食堂へ行く。


「こんなにお昼寝されては、夜に寝られなくなりますよ?」

「えっ? うん。そうだね」


 やっぱり、するどい。

 急いでご飯を食べると、部屋に戻るふりをする。


「じゃ、じゃあ、また寝るよ。おやすみなさい。ウーウさん」

「おやすみなさい……」


 なんだか怪しまれている?

 ドキドキしながら、ふたたび部屋にこもる。ウーウダリの寝室は一階の僧侶たちの大部屋だ。足音は去っていった。扉をそっとあけて廊下をうかがってみても、誰の姿もない。


「よし。行くよ。スピカ。ニャルニャ」

「うむ。参ろうぞ」

「なー」


 そーっと、そっと。足音を立てないように廊下を歩く。こんな夜遅くに外へ出るのは初めてだからドキドキだ。夜は魔物が活発になるというから、伯爵家では外出を禁じられていたのだ。モンスターのいない平和な村だからこそできることである。


 神殿のなかはすっかり寝静まっている。見張りもいない。ウーウダリに怪しまれているみたいだったが、バレてはいなかったようだ。


 外へ出ると、夜の景色は昼間よりさらに美しかった。星の数がものすごい。満天を埋めつくしている。流れ星がこんなに速いのだと、レルシャは初めて知った。遺跡から発する泡のような光も、夜に見るとなお輝きを増し、脈打つように息づいている。たくさんの蛍が舞い、夜に咲く花がひっそりとひらき、小川のせせらぎが思いのほか響いた。


「わぁっ。夜ってキレイなんだ」

「おだやかで、よき村だからの。よそでは、こうはいかぬぞよ」

「そうだね」


 坂道をくだっていくが、やはり人通りはない。雑貨屋も明かりが消えている。村の人たちはみんな、油やロウソクを節約するために、夜明けに起きて日が暮れるとまもなく寝てしまうのだ。


 雑貨屋の前まで来ると、レルシャは周囲を見まわした。なんだろうか? 何かの気配を感じる。誰かに見られているような?


(まさか、キースティングスさん。こんな時間まで見張ってるのかな?)


 いや、それはないだろう。店主はレルシャが夜中にやってくるとは知らないはずだ。


(気のせいかな?)


 夜に活発なフクロウや夜行性の動物のせいかもしれない。きっとそうだ。

 そのように思うことにして、レルシャは雑貨屋のわきへ入っていく。裏手の森のなかに遺跡がある。青い光を放つスキル解放遺跡だ。


 だが、森へ続く木の間へ足をふみいれたとたんだ。ガシッと何者かに腕をつかまれる。やっぱり、気配は気のせいじゃなかった。キースティングスが見張っていたに違いない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ