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情報屋からの連絡


「それで、どうやって王妃達の計画を阻止するつもりだ」


サルビアが尋ねると待ってましたといわんばかりの顔をして答える。


「それは王妃の出方にもよりますが、パーティーでランドゥーニ国の踊りを踊ろうかと思っています」


「踊れるのか?」


いつの間に踊りを覚えたのか、いやそれ以前にどこで習ったのか。


町によく出かけているのは知っていたが、騎士達の報告からそんな話しを聞いたことはない。


「本でどんな踊りかは知っていますが踊れません」


本当は踊れる。


最初の人生でランドゥーニ国の老婆と友達になり踊りを教わった。


「なら、どうやって?」


マーガレットが何を言っているのか理解できず二人は困惑する。


「ランドゥーニ国の人に教えてもらおうかと思っています。後一週間もすればランドゥーニ国がこの町に訪れますよね」


「そういうことか。だが、パーティーまで日がないが大丈夫か」


「はい。大丈夫です。必ずものにします」


「わかった。この件は任せよう」


不安はあるが信じて任せることにする。


「ありがとうございます」


二人を説得できるか賭けだったが、これで計画を実行できる。


二人にバレないよう心の中で喜びを叫ぶ。


「それともう一つ聞きたいことがある」


「何でしょうか」


「男達の会話を聞いたとき"薬は用意できたか"と言っていたと言ったな」


「はい」


マーガレットがそうだと言うとサルビアの顔が強張る。


それが誰に使われるのか気付いたみたいだ。


「その薬を使う相手は国王なのか」


「はい、そうです」


「それはどういうこと……」


カトレアは二人が何を言っているのかわからず説明を求めるも二人は会話を続ける。


「それも阻止することができるのだな」


「はい。もう手は打ってあります」


「それを聞いてもいいか」


どんな手を使うのか知っておいてもいいのか、それとも知っておいては駄目なのか尋ねる。


「申し訳ありません。それは言えません。ただ一つだけいえるとしたら、国王の身に何が起きたとしてもそれは全て計画の内だということだけです」


「……そうか、わかった。お前を信じるぞ」


王宮を離れる前、神官達に何かお礼だと言って袋を渡していたが、もしかしたらあのときに国王の事を伝えていたのかもしれないと思い、自分はこの件に関わらない方がいいと判断し任せることにする。


下手に自分まで動けばマーガレットの邪魔をするかもしれない。


そうなれば国王の身が危険になるかもしれない。


何もできないのは歯痒いが任せると決めた以上そうするべきだと自分に言い聞かせる。


「はい。必ず王妃の思い通りにはさせません」


マーガレットがそう宣言すると外から鐘の音が聞こえた。


こんな時間に珍しいなと思っているとまた鐘がなる。


何かあったのかと、不思議に思っているとふと情報屋のことが頭に浮かぶ。


そう言えば情報を掴んだら鐘を七回鳴らすよう指示した事を思い出す。


今、五回目の鐘が鳴った。


あと二回。


ゴーン、ゴーン。


七回鳴ると音がとまる。


「今のはいったい?」


カトレアは不思議そうに窓の外から見える鐘の塔を見る。


「わからない。誰かの悪戯か?」


七回も鐘が鳴るなどサルビアの人生では一度もなかった。


最近不穏なことが多い。


これもなのか、と急いで騎士達に捜査させなければと考える。


二人の話を聞いて自分のせいでこうなったとは言えず申し訳なくなる。


「(意外とこれは目立つわね。連絡方法を変える必要があるわ)」





「それで何かわかったのかしら?」


翌日、誰にも気づかれないよう屋敷を抜け出し情報屋の店に来る。


「はい。まだ調べている途中ではありますが、この情報は一刻も早くお伝えするべきだと思いご連絡をさせていただきました」


「前置きはいいから本題に入って」


シグレの態度が今までと違い妙に優しく礼儀正しい。


顔が引きつりそうなのを何とか耐え早く言うよう指示する。


「では、こちらをご覧ください。簡単に調べたことをまとめまてみました」


一枚の紙を渡す。


マーガレットはそれを受け取り内容を確認する。


まあ、だいたいは予想通りで大して驚きはしなかったが最後の一文をみると「……嘘でしょ」と呟く。


信じられなかった。


最近の出来事でも仲が悪いのは周知の事実なのに……。


この内容だけは信じられず疑うような視線をシグレに向けてしまう。


「これは、本当なの?」


「間違いありません。昨日マーガレット様方が王宮から出ていかれた後、王妃とアネモネ・シルバーライスは密会しておりました。王妃はシレネ・シルバーライスとは仲が良くないですが、娘の方とは頻繁に手紙のやり取りや密会をしているみたいです。決闘前は流石にあっていませんでしたが、デザストルを贈ったのは王妃の弟のパルサティラでした。二人が繋がっているのは間違いないかと」


マーガレットはいつか正体がバレるとは思っていたが、笑顔で報告をしている途中にサラッと名を呼ばれるとは思ってもみなかった。


もしかしたらとんでもない人物を計画に引き込んだかもしれない。


引き返すことはできないが少しだけ後悔する。


もう少し調べてから依頼するべきだったかと。


「証拠はあるの?」 


気を取り直して問いかける。


デザストルを贈った証拠があればロベリアを陥れることができる。


ただ一つわからないのは何故ロベリアがシレネを助けようとしたのか。


ロベリアとシレネは仲が悪いのは周知の事実。


いくら娘のアネモネと何かしているとしても助ける義理はない。


それなのに危険を犯してでもデザストルを贈ったということには何か理由がある。


それがわかればロベリアとアネモネを失脚させることができる気がする。


「ありません。ですが、昨日の密会の会話ならお教えすることはできます」


「会話を聞いたの?」


「はい」


「誰にも気づかれずに?」


「はい」


「どうやって?」


「それは企業秘密です」


ニコッと完璧な笑みを浮かべる。


「そう、ならいいわ。二人がどんな会話をしていたのか教えて」


「はい。こちらをお聞きください」


シグレは録音機能がついている魔法石を取り出す。


マーガレットはその魔法石をみて目を見開く。


こんな高価のものをどこで手に入れたのか、と。


ただの情報屋が手に入れるのはできないものなのに。


それよりも魔法石の録音つきなら十分証拠になるのに何故証拠にならないとシグレは断言するのかわからない。


よっぽどどうでもいい話をしていたのか。


考えてもしかたないので会話を聞いてから判断するしかない。


そう思い二人の会話に耳を傾けるが、頭の隅ではシグレの正体が気になってしかたなかった。


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