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過去の記憶 2


「……ん……」


「起きたか」


ヘリオトロープの声が聞こえて目を向ける。


「ジェンシャン、起きたぞ」


「わかった。すぐ行く」


返事をした後大きな音が何回か聞こえキキョウは「(あいつ、何を壊したんだ)」とため息を吐く。


大きな音の一つにガシャーンという音が聞こえた。


「(んー、うるさい。それより眩しい)」


証明の光が眩しくて布団の中に潜りもう一度寝ようとするも強い力で布団が剥ぎ取られる。


「駄目だ。起きろ」


ヘリオトロープは何も言ってないのにキキョウには手に取るように思っていることがわかる。


「……嫌だ、もう少しだけ」


体が重く目蓋が重くもう少し眠っていたい。


神聖力を使いすぎたせいだ。


そう思い布団を引っ張り包まろうとするが、さっきよりも強い力で引っ張られ全て取られる。


「ひどい」


布団を取られ観念したように体を起こす。


「仕方ないだろ。今は時間がないんだから」


キキョウの言葉でようやく頭が動き始めサルビアの記憶の中で見た魔神の力のことについて言わなければとハッとした。


「ヘリオ、大丈夫か」


「……ジェンシャンさん。はい、大丈夫です」


キキョウのときの態度とは一変し、いい子になる。


「(……このクソガキは、相変わらずだな)」


昔からジェンシャンの前だけはいい子になり、自分の前ではクソ生意気なガキになる。


他の神官達の前ではどうかは知らないが、よく自慢のお弟子さんですねとジェンシャンに言っているので猫を被っているのだろう。


まぁ、自分より十歳も年下だから少しくらい大目にみるべきだと思い若干、いやかなり態度は違うが許すべきだと頬が引きつりそうになりながら何とか笑みを浮かべる。


「なら、よかった」


ジェンシャンはヘリオトロープの頭を優しく撫でる。


「ヘリオ、公爵様の過去で何を見たか教えて欲しい」


「……はい。私が覗いたサルビア様の記憶は一言で言えば地獄でした……」


そう切りだすとヘリオトロープは見た内容を話していく。


ジェンシャンとキキョウは想像以上に神殿が酷い状況になっていることに顔が険しくなる。


「ヘリオ、神殿でそれ以外に何か見たか?」


暫く黙って何かを考えこんでいたキキョウが問いかける。


ヘリオトロープは何を聞かれているのかがわかり、もしかして二人は魔神の力のことを知っていたのではないかと思った。


「……はい。魔神の力を感じました」


意識が戻る前に感じた力を伝えると、二人はそうかと頷く。


その返事のしかたにやっぱり二人は知っていたのかと思う。


普通なら魔神の力を感じたなどと言われたら驚き慌てるはずだ。


そうならないのは知っていた以外考えられない。


「……二人は魔神の力ことを知っていたのですか」


「ああ、知っていた。ただ、自分の目で見たわけではないから確信はなかったから言うべきか悩んでたんだ。悪かったな」


ジェンシャンが何か言おうとしていたが、それより先に口を開く。


「それどういうことですか。自分の目で見ていないならどうやって知ったんですか。そもそも、二人は神殿が襲われてから訪れてないですよね」


「ああ、訪れてない。報告があったんだ……」


続きを話そうとするとジェンシャンに名を呼ばれる。


そこからは自分に話させて欲しいと目で訴えられ、わかったと頷き説明を変わる。


「私達が知ったのはセリから報告を受けたからなんだ」


「セリが見たのですか」


「いや、見たのは他の使徒だ。その使徒からセリは話を聞いただけだ」


ジェンシャンは首を横に振って違うと言う。


「その使徒が言うには、一瞬だけ赤い光が見えたと。その光は全てを魅了するような美しさで神官が纏う神聖力に似ていたと感じた、とそう言っていたらしい。……ヘリオ、すまない。ちゃんと伝えるべきだった。本当にすまない」


ジェンシャンは頭を下げて謝る。


自分の目で見ていないから本当に魔神の力かわからないと無理矢理言い聞かせ伝えなかったことを反省する。


キキョウに言うべきだと言われていたのに、巻き込みたくないという自分勝手な考えをしたことを恥じる。


「頭を上げてください。ジェンシャンさんが謝る必要はないですよ。魔神は代理人によって封印され、何百年も姿を現さなかったんです。私だってサルビア様の記憶を覗いていなければ魔神の力を感じたなんて信じなかったはずです」


ジェンシャンはヘリオトロープの言葉が自分を慰める為に言っているのだとすぐ気づいた。


もう一度謝ろうと口を開きかけるが、本人からその必要がないと言われたばかりなのに謝罪を口にすれば頼りにしていないと言っているようなものだと思い口を閉じる。


「それよりこれからどうするつもりなのですか。考えているんですよね」


二人がこれからのことを考えていると信じて疑っていない口調で言う。


ジェンシャンは師匠で尊敬する人物、キキョウはむかつくが一応認めている。


そんな二人が何の計画も立てていないなんてあり得ない。


そう確信している。


「ああ、もちろんだ。聖女探しは最も優先するべきことだが、それと同時に呪術師の目的と計画、そして魔神の封印された場所も探さないといけない。他にも神殿の状況と他国のことを調べたりやるべきことはあるが……」


「一番は聖女を見つけること、ですね」


「そうだ」


キキョウが頷く。


「あの、その前に……」


「わかっている。今から公爵令嬢に会いに行こう」


ヘリオトロープがマーガレットに会って欲しいと頼むのがわかり被せるようにジェンシャンが話す。


「いいのですか!?」


「ああ。それに、挨拶はしておいた方がいいだろ」


マーガレットが聖女だろうとなかろうとヘリオトロープはこれ以上、公爵家にはいられない。


そういう意味でジェンシャンが言うと、悲しそうな表情をする。


「そうですね」


声と口調が明らかに沈んでいる。


そんなに、マーガレットの傍にいたいのかと二人は思う。


もし魔神のことがなければ傍にいていいと言えたが、許可できる状況ではないので心を鬼にして別れの挨拶をしてもらうことにする。


「では、行こうか」


ジェンシャンの後に二人も続きマーガレットがいる部屋へと向かう。

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