王宮からの手紙
パーティーから一週間後。
「旦那様、王宮から手紙が届きました」
メイナードがパーティーの次の日から王宮から手紙が届いていないか確認していた。
今日その手紙が届いているのを見つけ急いでサルビアのところまで持っていく。
「本当か!?」
書類仕事をしていたがメイナードの言葉で椅子を倒す勢いで立ち上がり手紙の中を確認する。
「……四日後か」
ボソッと呟く。
メイナードはサルビアの顔を見てあまりの不気味な笑みに思わず後ずさる。
「メイナード。カトレアとマーガレットを呼んできてくれ」
「はい、かしこまりました」
メイナードは急いで部屋を出て二人を呼びに行く。
サルビアは決闘が決まってから毎日剣を振っていた。
漸く叩き潰せる日が決まったと思うと喜びのあまり触れていた本棚の一部を破壊してしまった。
壊したことにも気づかず二人が来るのを今か今かと待ち続けた。
トントントン。
「あなた。私です。入っても」
扉を叩かれ漸くきたかと声が聞こえる前に立ち上がり言い終わる前に扉を開けた。
「ああ。ん?マーガレットも一緒だったか」
「はい。ちょうどすぐそこでお母様とお会いしました」
「そうだったのか。それはそうと二人共中に入ってくれ。王宮から手紙が届いた」
二人はサルビアの言葉に歓喜し部屋の中に入る。
「取り敢えず呼んでくれ」
手紙をカトレアに渡し二人でその内容を確認する。
簡単に纏めると四日後に決闘する場を設けるので王宮に昼までに来るように、と書かれていた。
「四日後ですか」
マーガレットは意外にも時間がかかっているなと思い無意識に呟く。
本来決闘は早くて3日後、遅くても一週間以内に終わる。
今回は十三日も決闘をするまでかかるといこと。
早くシルバーライス家を潰したいマーガレットにとっては十三日でも長く感じる。
「まあ、これは国王からシルバーライス家へのせめてもの温情だろうな」
「温情ですか。確かにそうかもそれません」
サルビアもマーガレットも国王は意外に甘いところがあるからな、と同じ事を考え決闘までの期間の長さに納得する。
「まぁ、私達には関係ないことだがな。国王が温情を上げたのだから、私達はあげる必要はなくなった。これで思いっきり潰せるな」
サルビアは凶悪な笑みを浮かべる。
当主がするような顔ではないな、と二人は思う。
それに、サルビアは温情をあげる必要がなくなったと言ったが元々あげる気などなかっただろうとカトレアは声には出さなかったがそう感じていた。
「貴方、張り切り過ぎて逆に足元をすくわれるなんてことにはならないでくださいね」
「わかっている。勿論そんなことにならないよう気をつけるさ」
「なら、いいですが」
「では、私はそろそろ稽古に戻るとしよう。なるべく勘を取り戻しておきたいのでな」
決闘が決まってからほぼカトレアとマーガレットが仕事を受け持ち稽古に励んでいた。
圧倒的な力の差を見せつける為、昔の勘を取り戻す為に毎日マンクスフド達と手合わせをしていた。
「では、マクスにはお父様から決闘の日が決まったことを教えてください。私はクラーク様に今から会いに行きますので」
「わかった」
マンクスフドも決闘についていくのでいろいろと準備があるので教えておかないと。
「では使用人達には私から話しておきます」
「ああ、頼んだ」
話が終わり各自違う場所に向かって歩いていく。
同時刻、シルバーライス家。
「お兄様、お呼びでしょうか」
デルフィニウムに呼ばれ部屋に入るとシレネもいた。
二人共顔面蒼白で何があったのだと思ったが、机の上に手紙があり封には王家の紋章が記されていて直ぐに決闘の日が決まったのだとわかった。
「アネモネ。いつになったら策は思いつくのだ」
あの日からアネモネはデルフィニウムに言われ策を考えたがいい案が何も浮かばなかった。
それに自分達を監視する王家の者達もいて下手に動けば計画のこともばれかねないので何もできなかった。
本当はロベリアのところにいき、何故裏切ったのか問い詰めたかった。
それを見越しての人数なのだろう。
国王ならせいぜい二、三人くらいしかよこさないと踏んでいたが、実際いるのは二十人程度。
残りはロベリアが監視するよう指示したのだろう。
ロベリアのことだ、一人でも死んだらシルバーライス家を潰せるよう準備してある。
それがわかっているからアネモネは何もしなかった。
いや、できなかった。
「申し訳ありません。監視の目が多すぎて今何かするのは危険だと判断しました」
「なら、他の案を考えろ!この役立たず!このままでは我が家はお終いなのだぞ!わかっているのか」
「そうよ、早く何とかしてちょうだい!大して役にも立たない貴方が唯一頭を使えば私達の役に立つことができるのよ!それもできないのなら、貴方に生きる資格は無いのよ!早く案を出しなさい!」
「一つだけ案はありますが、それを実行できるものがいません」
呪術を使わずにブローディア家を倒せるかもしれない方法をアネモネは見つけていたが、絶対では無い。
アネモネは向こうの代理人はマンクスフドだと思いこの方法を思いついたが、こちらの代理人が見つからない今その方法見つけても意味がない。
だから、デルフィニウムに報告しなかった。
「とりあえず話せ。それから判断する」
「はい」
アネモネは返事するとその案を話し始める。
「この国でブローディア家に勝てる騎士はいません。幾らお金を積もうとも誰も私達の代わりに戦う騎士はいないでしょう」
「そんなのわかってるわよ!だから、貴方に案を出すよう言ったのでしょう!」
シレネがアネモネの言葉に激怒する。
言われなくてもわかっている事を言われ腹を立てる。
「母上。落ち着いてください」
デルフィニウムがシレネを睨みつけ、黙って座っていろと圧をかける。
シレネが大人しく座るとデルフィニウムが「続けろ」と命令する。
「はい。なので、人ではなく剣を調達しました」
「剣?……剣を調達して何になる。剣を変えて勝てるなら皆そうするだろう」
深いため息を吐く。
デルフィニウムはアネモネに失望する。
お前を頼ったのが間違いだった、と蔑むような目をする。
「確かにただの剣ならそうかもしれません。ですが、デザストルならどうでしょうか」
デザストル。
その言葉を聞いてデルフィニウムの顔色が変わる。
ただ一人何もわかっていないシレネがちゃんと説明しろと叫ぶが、二人はそんなシレネを無視して話を続ける。
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