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王宮からの知らせ


「お待たせしてすみません」


長い時間ヘリオトロープを待たせてしまった事を謝罪する。


「気にしないでください。それより、楽しかったですか」


聞かなくてもずっと見ていたからわかる。


マンクスフドと共にいるときのマーガレットは年相応な顔で笑う。


ブローディア家の娘として気負うことなく、ただの一人の女の子として自然な姿でいられる。


自分といるときのマーガレットはブローディア家としての姿。


あんな表情を向けてもらえるマンクスフドが羨ましいくて、いつか自分にも向けてもしいと願ってしまった。


「ええ、とても」


「なら、今度は私ともお茶しませんか」


気付いたら口から言葉が出ていて言った後自分で驚く。


「私とですか?」


きょとんとした顔で尋ねる。


「はい」


断れるかもしれないと思うと怖くなる。


心臓の音が煩くマーガレットにも聞こえているかもしれないと恥ずかしくなる。


「ええ、喜んで。私で良ければいつでもご一緒します」


「ありがとうございます。楽しみにしてます」


顔を綻ばせ喜ぶ。


目を細め微笑む。


マーガレットはヘリオトロープからお茶をしたいと言われたとき驚きを隠せず目を見開いてしまったが、両親以外から初めてお茶に誘われたので純粋に嬉しかった。


同世代の貴族達とは仲があまり良くなくお茶をしたことは一度もない。


貴族のお茶会がどんなものかよく知らない。


もてなし方がよくわからない。


まあ、でもヘリオトロープはそういった感じのお茶会は好きではないだろうから大丈夫だろう、と両親とするような若干適当でもいいかと決めつける。


ヘリオトロープはマーガレットとするお茶会でどんなスイーツを用意するかで頭が一杯で部屋に戻って続きを話そうと思っていたマーガレットは、あまりに真剣に何かを考え込んでいたので声をかけるのを諦め溜まっている仕事を片付けることにした。




夕食のときサルビアから報告があり王宮パーティーが開かれる事を聞かされる。


マーガレットは絶対王妃と王女が無理矢理にでも開こうとするのは目に見えていたのでさほど驚かない。


「……それは本当ですか?あまりにも非常識ではありませんか?」


カトレアは信じられず顔を歪ませる。


アングレカムと神殿が襲われ呪術師も現れたというのに、パーティーを開くなど理解に苦しむ。


そんな金があるなら支援金として使うべきではないかと憤りすら覚える。


「ああ、俺もそう思うが正しいとも言える。この王宮パーティーは他国の者達も訪ねてくる。今中止にしたら何かありましたと言っているような者。この国を狙っている者達に付け入る隙を与えることになる。それに万が一、神殿が襲撃されたと知られれば一気に二か国攻めてくる」


サルビアもカトレアと同じ思いだが、時季が悪すぎる。


今回のパーティーが終わったらすぐ別のパーティーが開かれる。


ランドゥーニ国との友好を深める為の。


他国に弱みを見せられないという王宮の決定は正しい。


それに今回はブローディア家も絶対参加を言い渡された。


一人だけくればいいと。


アングレカムの件やシルバーライス家のことを調べたくてそんな余裕がない。


どうにかして調整しなければと頭を抱えていた。


「確かにその通りです。お父様、国王はブローディア家には何かしろとおっしゃってましたか」


サルビアが険しい表情をしていたのでそう尋ねる。


「今回ブローディア家は一人必ず参加するよう言いつけられてな。理由は分からなくもないが、正直そんな暇はなくてな」


パーティーなどマーガレットが非道な扱いを受けてから怒りを示すよう二人も基本どこにも訪れていない。


たまに国王の命令で参加するよう言われたものにだけ渋々参加しているくらいだった。


前回から一年以上経っている。


正直行きたくなさ過ぎてどうにかして断れないかと思考する。


「それなら問題ないではありませんか」


どういう意味だ、と二人はマーガレットを見る。


「元々私は参加する予定でしたし、そのパーティー私がブローディア家の代表として参加します」


何だそんなことか、あんな険しい表情をしているから何事かと心配したが大したことではなくて良かった、と心の中で呟きながらニッコリと微笑む。


「……マーガレット、本気か」


信じられず尋ねる。


このパーティーには間違いなくシルバーライス家は参加する。


何かしてくるかもしれない。


心配しているのがひしひしと伝わってくる。


「はい。本気です」


マーガレットはサルビアの目を見つめ返し何が何でも絶対に行くと訴える。


「……めよ……そんなの、絶対駄目!」


カトレアが叫ぶように駄目と言う。


マーガレットの身に何かあれば耐えられない。


アドルフを殺した呪術師を匿っているかもしれない危険な家と関わらせたくなかった。


マーガレットも殺されるかもしれないと思うと胸が張り裂けそうなくらい痛くなる。


「お母様」


「私が行くわ。マーガレットにそんな危険な真似させられないわ」


「お母様、私なら大丈夫です。心配いりません。任せていただけませんか」


諭すように言うマーガレットにカトレアはそれでもやっぱり自分が行くべきだと主張する。


カトレアの方が社交界歴も長いし貴族達のあしらい方も知っている。


マーガレットは指で数えるほどしか社交界には行っていない。


それに今回はアングレカムのこともあり貴族達から質問され馬鹿にされたりもするだろう。


折角社交界で友達を作ろうと頑張ろうとしているマーガレットに嫌な思いはさせたくなかった。


マーガレットもそんなカトレアの想いがわかっているからどうやって納得させるか頭を悩ます。


「あの、口を挟んでも宜しいでしょうか」


一緒に食事をしていたヘリオトロープが口を開く。


「はい、構いませんがどうかされましたか」


サルビアが許可を出す。


「そのパーティー私も参加することになっているので、マーガレット様のパートナー兼護衛として参加するのはどうでしょうか」


国王からの命令で今回神官の一人が参加よう言われた。


本来、神官がパーティーに出ることなどあり得ないが神殿が襲われ皆が不安になっているので、問題ないと示す為参加するようお達がきたのだ。


今は動ける神官は三人しかいない。


誰が出るかで揉めていたとき、マーガレットがそのパーティーに参加するとたった今知ったので勝手に行くと決めた。


後で二人に報告すればいいからと。


「何故、神官が?」


ポカンとした顔で尋ねる。


「神殿が破壊され神官が無事だと証明する為です。それと、今動ける神官が私を含め三人しかいないのを悟られないようする為の偽装でもあります。パーティーで貴族達と話すことで不安を和らげ大丈夫だと思わせる為に参加しろ、と国王からの命で」


確かに貴族達は神殿が襲われ動揺している者が多い。


神官と話そうとしても何処にいるか知らない。


パーティーに参加していれば話を聞けて少しは不安を取り除けると国王は思ったのだ。


いい案だが何故か不安が残る。


何かと聞かれたら上手く説明できないが何か大切なことを忘れている気がする。


「ヘリオトロープ様が一緒なら安心ですが、マーガレット本当に大丈夫なのか」


「はい。お任せください。必ず何か掴んで参ります」


あまりの気迫に少したじろいてしまう。


娘の成長は嬉しいが少し寂しくもなる。


サルビアがカトレアの名を呼び頷く。


カトレアも「ええ、そうね。マーガレット、貴方に任せるわ」と最後は納得してくれた。


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