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本物の悪女とはどういうものか教えて差し上げます  作者: 桃萌
リュミエール救済院
23/81

ヘルマンの襲撃


「何?今の?」


耳を塞いでいた手を離す。


「私が行きます。マーガレット様ここにいて下さい。マンクスフド様はマーガレットの傍にいて下さい」


そう言うと返事を聞かずにヘリオトロープは悲鳴がした場所に一瞬で移動する。


「マクス、私たちも……」


行こう、と続けようとするがその前に「駄目です」と強い口調で被せるように言う。


「狙いがお嬢様であるかもしれない状況で行くことを許可する訳には行きません。私にとって今この瞬間一番守らなければならないのはお嬢様です」


絶対に行かせない、とマーガレットが命じても駄目だと態度にだす。


マーガレットもマンクスフドの言い分はわかるが、助けを求めている人を放っておくことはできない。


「マクス。わかっている。でもせめて、避難誘導はさせて。今この町にいる人達は私達のように動くことはできないわ。無茶はしないと約束する。お願い、行かせて」


今も遠くから聞こえてくる悲鳴がマーガレットの胸をギューーッと握り締める。


助けを求めても誰にも手を伸ばしてもらえない辛さを思い出す。


最初の人生で処刑されたときの光景が頭によぎる。


「わかりました。ですが、絶対に私の傍を離れないでください。約束してください。それができないのなら、お嬢様を行かせるわけには行きません」


こうなったマーガレットを説得するのは難しい。


仕方ないので自分の妥協案で手を打つことにする。


「約束する。絶対に傍を離れないわ」




「嘘でしょう」


悲鳴がした場所につき、目にした光景が信じられなかった。


地獄絵図。


とは、まさにこのことだと思った。


ヘルマンが見ただけで百体以上いる。


ヘリオトロープがヘルマンと戦っているが、あまりの多さに苦戦している。


目線を横にずらすと地面に横たわる人達が見える。


そこにいたら危険だ、と駆け寄ろとしたがその人達の周りは血だらけで既に死んでいるのだと気づいた。


ヘリオトロープと使徒達は死体を攻撃しないよう気をつけて攻撃するが、ヘルマンは関係なしに攻撃し、終いには死体の上を普通に歩く。


マーガレットはその光景が許さず駆け出そうとしたが、その前にマンクスフドに腕を捕まえられる。


首を横に振り駄目だと。


「……わかっているわ」


自分が行ったところで何もできない。


彼等の邪魔をするだけだと。


今は自分にできることをしなければと逃げ遅れた人、座り込んでいる人達を避難させることに集中する。


逃げ遅れた人達を避難し終えると使徒達は助かったと心の中で礼をのべる。


いくらヘリオトロープがいるとしても、この数のヘルマンと戦いながら守るのは難しかった。


戦いの最中マーガレットを見かけたときは一瞬息が止まった。


何をしているんだ、と叫びたかったがヘルマン達にマーガレットがいることがバレるかもしれないと我慢した。


戦いに集中しないといけないとわかってはいたが、どうしてもマーガレットの方が気になって神聖力のほとんどをマーガレットの周りにおくり襲われないようにした。


漸く避難が終わりマーガレット達をここから離れると呪文を唱えヘルマンを一掃する。


使徒達はヘリオトロープの意図を汲み取り町に被害が出ないようヘリオトロープとヘルマンを囲むよう結界をはる。


蒼い光がヘリオトロープの体を纏うよに輝くと右手を前に出して一気に神聖力を解き放ちヘルマンに攻撃する。


たった一撃でヘルマンは跡形もなく消えた。


ヘリオトロープの体から光が消えると神官達が名を呼びながら近づく。


「もう大丈夫だと思うが万が一まだいたら大変だ。悪いが町に一体もいないか確認してくれ。私は町の人達の治療をする」


「わかりました」


「頼んだぞ」


「何かあったらすぐに知らせにこい」


使徒達に神聖力はないが魔法石を加工したものを持たせているので、簡単な術なら使える。


心配ではあるが自分の意志では使徒になったのでこれも任務だから仕方ないと割り切り命じる。


「はい。わかりました」


使徒達は二手に別れてヘルマンがもういないか確認する。


使徒達が詮索をはじめこの場から消えるとヘリオトロープは急いでマーガレットの元へと向かう。




「お怪我はありませんか」


返事を聞く前に神聖力をおくり治療する。


怪我などしていないので治療する必要などない。


そもそも、そうならないよう神聖力で守っていた。


「はい。どこも怪我はしていないので私は大丈夫です。ありがとうございます」


「そうですか。それならよかったです。では、私はこれから治療をしなければならないので、後で先ほどの話の続きをしましょう」


「わかりました」


最初にマーガレットを襲った男の正体が誰なのかが話の途中だった。


マーガレットもその話がしたかったのでちょうど良かった。


「では、後ほど」


そう言うとヘリオトロープは町の人達のところにいき、一人一人治療した。


神聖力といっても万能では無いので、全ての傷を治すことはできない。


医者と協力しながら治療にあたる。




「マーガレット様。こちらにいらしたのですね」


治療が終わりマーガレットの元に行こうとしたが、どこにいるか誰も把握しておらず仕方ないないので神聖力を使ってどこにいるか捜した。


「クラーク様。すみません、先程の少年を家まで送り届けていたのです。捜させてしまう形になってしまい申しありません。ご迷惑をおかけしました」


頭を下げて謝罪をする。


「いえ、気にしないでください。とりあえず、部屋に戻りましょう」


マーガレットのことが心配でそう言う。


ヘルマンに襲われたのに、自分の体調より他人を優先させ守ろうとした。


勇敢だが見ているこっちは心配で心臓がもたない。


「はい」




「とりあえず、マーガレットさんは座って下さい。私がやりますので」


そう言うとヘリオトロープはお茶を入れる。


「美味しい」


使用人が淹れる何倍も美味しくて感動する。


「お口にあって何よりです」


トントントン。


「どなた」


「私です。アスター様をお連れしました」


カラントを送るとき一人だと危ないとついていくと言って聞かなかったが、アスターを連れてくるよう命じた。


何となくだが、最初のヘルマンの人物を知っていると思ったから。


「入っていいわ」


「失礼します」


マンクスフドの後にアスターも入ってくる。


「二人共座って下さい」


ヘリオトロープは二人の分のお茶も淹れる。


「アスターさん。今から見せる人物を知っていたらおしえてください」


「わかりました」


よくわからないが何か重要な事なのだと思いそう返事をすると、ヘリオトロープに「お腹します」と言って先程の男をもう一度作ってもらう。


ーー知っていますか?


そう尋ねようとしたが、アスターの顔が強張り、これでもかというくらい目を見開いていたので知り合いだと確信した。


「シャガ」


誰の耳にも届かないくらい小さな声でその名を口にする。


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