19-6 妻にケガをさせた不届者への井戸吊り刑(2.7k)
マリアとグリーンが【魔王城】で【魔王】を放置して熱いバトル。
なんで箒と【ハリセン】のチャンバラで真剣の打ち合いみたいな音が鳴るんだよ。
魔法がらみか? 気のせいか?
騒ぎに気付いたのか、イエローとブルーも出てきて呆然と見てる。
ブラックはすごく焦っており、気が気でない様子だ。
グリーンが心配なのだろうか。
「【暴走】を止めるために、別の所を【暴走】させる。これも技術の進歩に必要な過程なのでしょうか」
「いや、そんな過程は必要無いからな。ルクランシェよ。他人事みたいに言ってるけど、お前のせいなんだぞ」
「でも、あの強化アイテムはグリーン先生に頼まれたんですよ。【怪獣女】を成敗するために強くなりたいと」
「頼まれたからって、【技術者】は危険なものを作ったらいかん。今回の件は【品質保証部】に通報するからな。【カイゼン室】でよく考えろ」
「そっ、そんな!」
暴れ回る二人のせいでカオスになっている【魔王城】内だが、ジェット嬢は気にせずにテーブル席で絵を描いている。
夢中なのか? 少しは気にしてもいいように思うが。
ダダダダダダ ガン ゴン キン
「成敗! メディカルハリセンブレード!」 グワッ
「あっ!」 ベチーン
グリーンの放った謎の一閃で、マリアさんが吹っ飛んだ。
そして、その吹っ飛んだ先はエントランスのテーブル席。
ズザァァァァ ガターン ゴチン
ジェット嬢の椅子にマリアさんが命中して、ジェット嬢が頭から床に落ちた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」×6
なんてことを!
大爆発か、溶岩か、世界の終わりか!?
「…………」
シーン
「ジェット嬢?」
落ちたまま動かないジェット嬢に近寄り、恐る恐る確認すると、頭から出血して意識を失っていた。
マリアさんも出血は無さそうだが、目を回しているようで動かない。
「救護班!」
「アイアイサー」 シャキーン
グリーンが【ハリセン】を捨ててジェット嬢に駆け寄り、ブラックはマリアさんに駆け寄り、イエローとブルーはストレッチャーを取りに【魔王城】居住区画に走る。
「グリーンよ。何は無くとも、先ずその【お守り】を外せ」
「申し訳ありません【魔王】様」
暴走中だったグリーンは正気を取り戻したようだ。
…………
「脳震盪ですね」
ジェット嬢とマリアさんをそれぞれストレッチャーに載せて医務室に搬送。
正気に戻ったグリーンの診察。
ジェット嬢はすぐに意識を取り戻したが、ちょっとぼーっとしている。
そりゃそうだ。
頭ぶつけたら誰だって普通に危ない。
当の本人は落ちた原因とかよりも、ぶつけた側頭部の出血が気になるようだ。
しきりに頭を触っている。
「グリーン。この裂傷【回復魔法】ですぐ治せるかしら。できれば髪を剃りたくないのよ」
「治せますよ。患部を掃除してから治療にかかります」
機材を準備するグリーン。
ジェット嬢を心配そうに見守るブルーとイエロー。
頭の傷を縫うなら髪を剃らなといけないけど、【回復魔法】なら剃らずに治せるのか。便利だな。
「それにしても、【魔王妃】様は意外と頭が弱かったんですね」
ザシュ ズバ ベキ グシャ
ドカーン ベシーン
シュゴォォォォォォ
「イエローがイエローなのに真っ黒に!」
瞬間魔法リンチがイエローに炸裂。
あっという間にズタボロ黒焦げになった。
「ジェット嬢! 今のは頭が悪いとかそういう意味じゃなくて、頭部が弱点だったとか、それが意外だったとかそういう意味だからな。表現は不適切だったけど、バカにされたわけじゃないからな!」
「あ……。ゴメン。なんかぼーっとしている時に直球ですごい酷いこと言われたと思って、とっさに焼いちゃった……」
らしくないぞ。そんなに寝起き悪かったのかジェット嬢。
いや、頭ぶつけた直後だからか。
「あの、【魔王妃】様。言いにくいのですが、ここまでされると私では治療ができないかと……」
グリーンが匙を投げたイエローは、死んでないのが不思議なぐらいの酷い状態。
両腕両脚がぐにゃぐにゃになっており、背中から肋骨がはみ出して、全身が炭化するぐらいの黒焦げ。
口元からヒューヒューと音が出てることより、かろうじて生きていることが分かる。
もしかして、ヨセフタウンでの【お仕置き】は毎回こんな感じだったのか。
再犯率がゼロになるわけだ。
「あー、私治すわ。ついでに自分の傷も」
「じゃぁ、俺がイエローの横で腹ばいになればいいか」
「それでお願い」
「今回は起こさなくてもいいからな。明日までここで寝ててもいいだろう」
「そういうわけにはいかないわ。アンタが居ないと私は動けないのよ」
俺がズタボロ黒焦げイエローの傍で腹ばいになり、ブラックとブルーによりその上にジェット嬢が置かれる。
俺が【尻に敷かれる】形の【回復魔法】だ。
これをすると俺は【回復魔法】の【波動酔い】で意識を失うので、その度にジェット嬢の【地獄の激痛牙】で起こされる。
それが、つらい。
ザァァァァァァァァァァァァァァ
…………
「……起きたぞ! 齧らなくてくていいぞ!」
首筋に当たる吐息で目を覚ました。
「あ、起きたの。今回は早かったわね」
助かった。今回は【地獄の激痛牙】で齧られるのを回避できた。
ジェット嬢が俺の背中で動く気配、背面背負いおんぶ紐的ハーネスの金具を繋いでいるようだ。
「金具繋いだわ。起きていいわよ」
「了解だ」
起き上がると、俺が意識を失ってからそれほど時間が経っていないようで、手術台に患者着を着たイエロー。医務室には、ブルー、ブラック、グリーン、ルクランシェ。そして、ストレッチャー上にはマリアさん。
まぁ、イエローは見た目きれいに治っているから、明日には目を覚ますんだろう。
マリアさんもスヤスヤと寝息を立てているので、こっちもそのうち起きるだろう。
「一時はどうなることかと思いましたが、何とかなって何よりです」
一仕事終えた雰囲気でグリーンがまとめる。
だが、まだだ。まだ終わらんよ。
発端と経緯を確認して、しかるべき処置を行い再発を防ぐ必要がある。
所謂、【歯止め】というやつだ。
…………
「ごめんなさい! ごめんなさい! 深く反省しております! 【医師道精神】に誓って、二度とこのような暴挙は致しません! 許してください! 暗い! 怖い! 落ちる! 深い! 深いです!」
昼食後、ルクランシェとグリーンの取り調べを行い、グリーンはぐるぐる巻きにして【魔王城】裏の井戸の中に逆さ宙吊りの刑。
ルクランシェはブルー操縦の【双発葉巻号】にて、サロンフランクフルトの【品質保証部】に連行。
暴れた共犯のマリアさんについては、アンとメイに【適切な処置】を依頼した。
この世界の【魔王】は、厳しいときは厳しい。
「【魔王】様! なんかこの井戸変です。魔法的になんか変です! うまく言えないけど、何かありますよ! 【魔王】様ー!」
「魚が食べたいわ」
「じゃぁヴァルハラ川行くか」
「【魔王】様ー!」
●次号予告(笑)●
【戦争】していたことを忘れたかのように、事実上の経済交流を開始していた二国。完全に後追いの形となるが、終戦協定と講和条約の締結へと重い腰を上げる。
【魔王城】で開催された【終戦協定締結式典】。式典後の立食パーティがメインというぐらいの形式的なセレモニー。その円滑な進行をだれも疑わなかった。
しかし、時代の流れに翻弄され、望まぬ【覚醒】と【解放】を遂げてしまった女はその流れに異論を唱える。
『私は許してないわ』
『アンタ達は【戦争】をしなさい』
世界に響く女の声は【恫喝】か、それとも【懇願】か。
二国間の戦争の行方はどっちだ。
次号:クレイジーエンジニアと戦争の行方




