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19-5 異端は排除か共存か、ハリセンと箒の哲学バトル(2.9k)

 俺が【かがやたましいの力】に目覚めて、【試作2号機】が退役し、ジェット嬢とキャスリンがパジャマパーティをした日から三十日後。グリーンが再び【医者修行】に出かけてから五日後。

 レッドは首都に出張。ブルーとイエローとブラックは【魔王城】周辺でそれぞれの仕事をしている通常進行な日の午前中。


 あの日以来、ジェット嬢はエントランスのテーブル席でいろいろ絵を描くのが日課になっている。

 どんな絵なのかは見られたくないらしく、俺はちょっと離れたところにある座敷からそれを見守っている。


 そんな微妙な距離感でくつろいでいると、入口から二人来客。


「臨死グリーン、若干予定を繰り上げて【医者修行いしゃしゅぎょう】から帰ってまいりました」

シャキーン

「お久しぶりです。お邪魔します」


 来たのは臨死グリーンとルクランシェだった。

 ルクランシェはここに来るのは初めてだったはず。


 グリーンは【医者修行いしゃしゅぎょう】という名目でよく【魔王城】から出かけている。

 【回復魔法】の使い手が少なくて、しかも、王宮に集中しているので、地方都市では治療を受けるのが難しい状況という。

 それを少しでも緩和かんわするために、【医者修行いしゃしゅぎょう】としてあちこちの病院を巡回しているらしい。


 飛行機に乗ると酔うから専ら陸路での巡回とか。

 今回は一週間の予定で出かけていたが、ちょっと早めに帰ってきたようだ。


 座敷にて、久々に会うルクランシェと雑談。


「ルクランシェ、久しぶりだな。元気にしていたか」

「お久しぶりです。いろいろありましたが、おかげさまで元気です」

「研究室の【潜水艦状態】は解消したか。あのままだと火災になった時に危ないぞ」

「【品質保証部】の査察でカイゼンされました。おかげで研究もはかどっています」

「そうか。それは良かった」


「あっ! グリーン! 帰りは二日後の予定じゃなかったか?」

 【魔王城】居住区画のドアから出てきたブラックがグリーンを見つけて叫ぶ。

 普段わりと冷静なブラックがここまで慌てるのも珍しい。


「ブラックか。【魔王】様にルクランシェ主任開発の新技術を見てもらおうと思って、ちょっと予定を繰り上げたんだ」

「そっ、そうか。後で、その新技術とかを私にも教えてくれ」


 それだけ言ってブラックは慌てて【魔王城】居住区画に戻っていったが、何があったんだろう。

 グリーンが早く帰ってきて都合が悪いことでもあるのだろうか。

 それはそれとして、新技術と聞くと俺も気になる。


「ルクランシェよ。今度はどんな新技術を開発したんだ? 危ない物じゃないよな」

「大丈夫ですよ。今回はフロギストン波動応用技術の一環として、人間の精神に干渉して潜在能力を最大限引き出す技術の開発を行いました」

「全然大丈夫じゃない! それはどう考えても【危ない技術】だ! なんでそんなものを作ろうとするんだ!」

「そこはそれ。【クレイジーエンジニア】のロマンです」


「それは分からなくもないけど、越えちゃいけない一線があるだろ。【品質保証部】の承認は取れたのか? 今は企画時点での審査があるからそういう【危ない技術】の開発に予算は下りないはずだが」


「絶対承認下りないので自腹で細々研究してきました。でも監査で見つかりそうになったので、有給休暇取って研究成果を全部こっちに隠そうとグリーン先生に連れてきてもらいました」

「ダメなパターンだ! やっちゃダメなパターンだ!」


「この技術の延長線上には、意思を持って自分で動く機械の開発があります。あの【勝利終戦号】のようなものを再現したいんです。将来絶対に必要になる技術です」

「技術としての有効性は分かるが危険なことに変わりはない。安全性が担保できない状態で進めていい研究じゃないぞ。ちゃんと社内で相談して、必要な手順を踏んで進めるべきだ。面倒だと思うかもしれんが、それが一番の近道だ」


 俺は頭を抱える。

 興味を持ったテーマを追求したい気持ちも分かるし、多少なら自腹で自由研究というのもアリだろう。

 前世の俺もそうやって持ちネタを増やしていた時期はあった。


 でも、このテーマは明らかに危険だ。

 しかし、研究に熱意を燃やす若者を無下に止めるのも心苦しいし、既に平然とルール違反をしでかしているこの【クレイジーエンジニア】が止めて止まるとも思えない。


 【品質】と【品格】と【道徳】を統括する【魔王】としてどうしたものか。


 ふと、【謁見の間】へ上る階段を見ると、ほうきを持ったマリアさんが【尻尾】を揺らしながら降りてきた。

 ズボン姿で【尻尾】付きというちょっと変わったマリアさんは【魔王城】の非常勤職員で、神出鬼没ながらも居る時はアンやメイの手伝いをしてくれている。

 今日は普段使っていない【謁見の間】の掃除をしていたようだ。

 

「「あっ!」」

 マリアさんとグリーンがお互いを見つけて叫ぶ。


「あー! 遅かったか!」

 【魔王城】居住区画のドアから飛び出してきたブラックが叫ぶ。


 ゆらりとマリアさんに向きなおったグリーンが大きな【ハリセン】を両手で構える。

 【ハリセン】って両手で持つものか?


「【怪獣女】の生き残りめ。国内何処を探しても居ないと思ったら、ここに居たか。ここで会ったが百年目。成敗してくれる」

「百年も経ってませんよ。二百十二日です。それに成敗される理由はありません。【怪獣女】なんて失礼です」


「【闇魔法】のアイテム強化、人体の【強化改造】などという人道に外れた行い。その存在を許容するわけにはいかん。【医師道いしどう】の名の下に我が【ハリセン】のみとなれ!」

「あれは頼まれたからやっただけです。趣向とはマッチしていましたが、明らかに失敗だったので他の人には試してません。それだけで存在を否定するなんてひどいです。それに【ハリセン】にみができるぐらい叩く気ですか。そっちほうが非人道的です」


「理屈は無用! 成敗!」 ゴォッ

「そうはいきません!」 ダッ


 ブン スカッ ヒョイ ブン ガン スルリ ヒョイ ブン スカッ ドガッ ヒョイ サッ パリーン ゴン


「ルクランシェよ。グリーンの様子が明らかにおかしいが、まさかその新技術を既に使ったんじゃなかろうな」

「使いましたよ。このアイテムを装着して波動を送り込むことで、冷静な思考力を失うのと引き換えに肉体能力を二割増しできます」


 そう言ってルクランシェが出してきたのは【お守り】。

 俺の前世世界で神社とかで普通に売ってたアレの形をした何か。


「ずいぶん罰当たりな形に作ったものだな。効果が二割増しって中途半端な割に失う物多すぎだろ。どうするんだアレ」


 ものすごい勢いでエントランスと【謁見の間】を行ったり来たりしながら、ほうきと【ハリセン】でチャンバラする二人。


 どちらも動きが常人離れしている。

 グリーンは【お守り】の効果なのかもしれんが、マリアさんは何なんだろう。

 【尻尾】の効果かな。


 ズダダダダダダダ ガキーン シュパーン ガン ゴン


「変わった趣向しゅこうを持って生きていたっていいじゃないですか!」 ガキーン


「異端の排除は人間の本能だ。貴様が成敗されるのは、歴史の必然だ!」 シュパーン


「異端者と共存できる社会こそが健全とは思いませんか!」 ブン


「それは理想論に過ぎん。理想と現実は違う!」 グワッ


「それを理想と理解しているなら、理想を否定することから始めるのは間違っています!」 ヒュン


「だから、敵となるのだ貴様と私は!」 ゴォッ


 ドドドドドドド キン ガン ゴン


 いや、本当にどうするんだよアレ。

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