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19-2 試作2号機、最後の突撃(2.1k)

 ジェット嬢の初体験発言をきっかけに、俺が【輝く魂の力】に覚醒した昼下がり。


 仰向けで【巣箱】の上に転がったまま、ジェット嬢は画板を使って何かをいろいろ書いている。俺はこの世界の文字を読み書きできないので何を書いているかは分からない。

 途中から文字ではなく絵を描きだしたようだが、俺にあんまり見られたくないらしく、描いたものからシーツの下に隠している。


 俺は【巣箱】の上に座りながら、そんなジェット嬢を見下ろす。

 【魔王城】には俺とジェット嬢しかいないから、動けなくなっているジェット嬢のそばから俺が離れるわけにはいかない。


 患者着の下に例のハーネスは着けていないようで、仰向けで転がるジェット嬢のシルエットがいつもと違う。

 オリバーいわく【それなり】だそうだが、仰向けで【ある】と見えるのは【かなり】だ。


 まぁ、それはいい。

 今は【セクハラ】が国際的に禁止されている。


 居室にある東向きの大窓から東の空を眺める。

 時間は昼間。予定では、首都の【魔王討伐二周年記念祝賀会】に参加していた【魔王城】メンバーがもうすぐ帰ってくるはずだ。

 

 南東側の空に飛行機が見えた。帰ってきたかな。

 いや、【双発葉巻号】にしては小さい。


『一方通信 【魔王妃】様! 無事ですか!』


 キャスリンの【一方通信】が聞こえた。

 ということは、あの飛行機は【試作2号機】か。

 なんか緊迫感のある声でジェット嬢に呼びかけているようだが。


『一方通信 昨晩【魔王妃】様の【悲鳴】が広範囲に聞こえました。無事ですか!』


 悲鳴? ジェット嬢一体何をしたんだ。

 いや、ナニをしたかは分かっているが、広範囲に聞こえる悲鳴って……。


 そう思ってジェット嬢を見ると、顔を真っ赤にして大口おおぐちを開けた驚愕の表情。

 今まで見たことが無かった【歯並び】が見えた。


 猫みたいで可愛いじゃないか。その上下の【きば】。

 口閉じた時にどうやって納まってるんだ?

 噛み合わせとか大丈夫なのか?


「イヤァァァァァァァァァ!」


 絶叫したジェット嬢がペンの束を掴み、窓に向かって小口径の【魔導砲】を【弾幕射撃】。

 窓周辺の壁が吹っ飛んで、【魔王城】東側から接近する【試作2号機】目掛けて無数の光弾が飛んでいく。


「やめろジェット嬢! 【試作2号機】に当たったらどうする!」

「あっ! しまった!」


『ニャギャァァァァァァァァァァ!』


 今度はキャスリンの悲鳴。

 おそるおそる窓の外を見ると、【試作2号機】が火を噴きながらフラフラと高度を落としている。


 幾つか命中してしまったか。

 どうする。いや、どうすることもできんか。


「ジェット嬢! このままではキャスリンが危ない。なんとかできないか?」

「えっ? えーと、どうすれば、でもキャスリンなら……」


 ジェット嬢が珍しく動揺している。

 確かにキャスリンは一度墜落しても死ななかったけど、今回もそれで済むとは限らん。だが、手段が無い。


『やってくれましたね【魔王妃】様!』


 キャスリンの【一方通信】が聞こえる。

 幸いキャスリンの身体には当たらなかったということか。

 炎上する操縦席で必死で不時着しようと頑張っているのか。

 滑走路は近いからなんとか無事に降りてほしい。


 そう思って【試作2号機】を見守っていると、火を噴きながら降下する【試作2号機】の機首がこちらを向いた。


『私も王族の女ですわ。無駄死にはしません!』


 キャスリンの【一方通信】で、なんか前世で聞き覚えのあるセリフ。

 なんか、コレは、ヤバイ【電波】の予感。


 そして、炎上する【試作2号機】の木造布張りの機体が、空中分解しながら俺達の居る居室の窓目掛けて突っ込んでくる。


『ユグドラシル王国に 栄光あれぇぇぇー!』


「ごめんなさーい!」


 ヤバイ【電波】をまとって突っ込んでくるキャスリンの乗機。

 必死で謝る俺達。


…………


 居室の壁に突き刺さった【試作2号機】。

 衝突時に操縦席から投げ出されたデタラメコーディネィトのキャスリンが頭から血を流しながらボロボロになった愛機を見ている。


 大破した機首部分。

 そこにあった電動機や【魔力電池】の部品が居室内に散らばる。

 トリコロールカラーで塗装されていた木造布張りの機体は黒焦げになっており、木製の骨格はあちこちが折れて大きく歪んでいる。

 

 外に風が吹いた。

 【試作2号機】の骨だけになった主翼がきしむ。

 そして。


 ギギギギギ バキバキバキ 

 

 機首、主翼、操縦室それぞれを繋いでいた連結金具を境に黒焦げになった木製骨格が崩壊し、【試作2号機】はバラバラになって居室の壁から崖下へと落ちていった。


 【試作2号機】

 ウィルバーが作り出したこの世界最初の飛行機のうちの一機。

 垂直離着陸が可能という特性を活かし、国内各地に滑走路が整備されるまでの間、国内全域の高速な情報伝達及び移動を支え続けた名機。

 その特異な構造故に同等の性能を持つ代替期の開発が遅れ、兄弟機である【試作1号機】が既に退役してユグドラシル王国首都の博物館で静態展示となった後も、機体の老朽化を補修で対処し続けることで現役で活躍を続けていた。

 そしてついに、【乗員の命を守る】という最後の役割を果たし、唯一の操縦者であった主への別れを告げて崖下へと消えた。


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